老後の資金を貯めるために若いうちから個人年金保険に加入する人は多いのですが、ただ単に貯金より利率がいいからという理由だけで決めてしまうと、あとで後悔するかもしれません。どんな商品にもメリットとデメリットがあるので、金融商品はそれらを理解した上で慎重に選ぶ必要があります。今回は個人年金保険の特徴と、老後に備えるその他の金融商品についてご紹介します。

個人年金保険はどういう保険?

(写真=PIXTA)

個人年金保険は、保険料の払込期間(一般的には60歳まで)に保険料を納め、契約時に決めた一定の年齢に達すると年金を受け取ることができる保険です。年金を受け取る予定の人が、保険料の払込期間中に亡くなってしまった場合、それまで払ったお金は残された家族に死亡給付金として支払われます。

個人年金保険の種類と特徴

(写真=PIXTA)

終身年金

年金を受け取る人が生存している間、一生涯年金が受け取れるタイプの個人年金保険です。保険料は高くなりますが、長生きすればするほど支払った保険料より受け取る年金額が多くなります。

ただし、年金を受け取る方が亡くなると年金の支払いは終了し、残された家族に年金や死亡保険金は支払われないので、早く亡くなってしまうと支払った保険料分受け取れない可能性もあります。

保証期間付終身年金

保証期間中は生死に関係なく、保証期間後は生存している場合に年金が受け取れるタイプです。終身保険のように生存している間は一生涯年金が受け取れますが、それにプラスして年金の受け取り開始時から、契約時に決めた一定の年齢まで保証期間が付いています。

終身年金では年金を受け取る方が早く亡くなってしまうとそれ以降は年金の支払いは終了しましたが、このタイプの年金では保証期間内に亡くなってしまった場合、年金は残された家族に支払われます。終身年金の早く亡くなってしまった時のリスクを軽減した商品と言えるでしょう。保証期間が終わった後は終身年金と同じく、年金を受け取る人が亡くなると年金の支払いは終了します。

有期年金

生存している間の一定期間、年金を受け取れるタイプの保険です。例えば、保険料払込期間が60歳までで、その後10年や15年といった一定期間年金を受け取ることができます。年金受け取り開始からの一定期間内に年金を受け取る人が亡くなってしまった場合、年金は打ち切られ残された家族にも支給されません。つまり早く亡くなると元本割れする可能性があります。

保証期間付有期年金

保証期間中は生死に関係なく、保証期間後は生存している間の一定期間、年金を受け取れるタイプの保険です。有期年金では、年金を受け取る人が早く亡くなってしまうと、払い込んだ保険料よりだいぶ少ない年金しか受け取れなくなってしまいますので、年金の受け取り開始からしばらくは、残された家族が年金を受け取れる保証期間付きのものが一般的になります。

確定年金

年金を受け取る人の生死に関係なく、一定期間年金を受け取れるタイプの保険です。例えば、保険料払込期間が60歳までで、その後10年の確定年金の場合、その期間受け取る人が生きていれば通常通り受給でき、もしその期間に亡くなってしまっても残された家族が10年後まで受け取ることができます。全期間が保証期間の保証期間付有期年金とも言えます。

夫婦年金

夫婦いずれかが生存している限り、年金を受け取れるタイプの保険です。夫婦いずれか一方が亡くなってしまった場合でも、残された配偶者の老後の資金を確保できる点が一番のメリットです。

変額個人年金保険

保険会社が株式や債券などを運用し、その運用成果に応じて年金や解約返戻金の額が変動する個人年金保険です。個人年金保険は年金の受取開始前に亡くなってしまった場合、残された家族に死亡給付金が支払われますが、変額個人年金保険でもこの死亡給付金には一般的に最低保証があります。ただし、途中で解約した場合に受け取る解約返戻金には最低保証がありませんので、注意が必要です。

個人年金保険に加入する前に注意点を確認しよう

(写真=PIXTA)

返戻率とは何?

個人年金保険でどれだけ得をするのかという物差しに「返戻率(へんれいりつ)」という言葉がよく使われます。これは、個人年金保険の払込保険料の総額に対して、年金総額をどのくらい受け取れるのかを表したもので、返戻率が高いほど払った保険料に対してたくさんの年金を受け取ることができます。返戻率は下記の式で計算できます。

返戻率=受取年金総額÷払込保険料総額×100

では、具体的に返戻率を計算してみましょう。ここでは40歳の女性が次のような一般的な個人生命保険に加入した場合を考えてみます。

<個人年金加入者の例>
加入する人    :40歳の女性
払込期間    :60歳払込満了
年金受取開始年齢:65歳
保険の種類    :10年確定年金
月払保険料    :1万5,000円
基本年金年額    :37万8,000円

受取年金総額=37万8,000円×10年=378万円
払込保険料総額=1万5,000円×12ヵ月×20年=360万円
返戻率=378万円÷360万円×100=105%

つまり、この個人年金保険の返戻率は105%と計算できます。

途中で解約すると元本割れする

先ほどの例では返戻率は105%ですが、これはあくまで払込を終え年金をすべて受け取った場合の返戻率です。個人年金保険には、途中で解約すると解約返戻金が支払った保険料より少なくなる、つまり元本割れするという注意点があります。

一例として、次のようなアフラックの個人年金保険の解約返戻金を見てみましょう。

<アフラックの個人年金保険の加入例>
加入する人    :40歳の女性
払込期間    :60歳払込満了
年金受取開始年齢:60歳
保険の種類    :10年確定年金
月払保険料    :2万円

この場合の累計払込保険料と解約返戻金、そして戻り率は次の通りです。

表1. 解約返戻金の推移

年齢 累計払込保険料 解約返戻金 戻り率
45歳 120万円 107万5,501円 89.62%
50歳 240万円 228万3,829円 95.15%
55歳 360万円 352万6,953円 97.97%
60歳 480万円 484万4,045円 100.91%

上記の例は40歳から個人年金保険に加入した場合の解約返戻金と戻り率ですが、15年払い込んだ55歳時点でも解約すると元本割れすることがわかります。

若い時に個人年金保険に加入し、その後結婚や出産、または転職や起業などのイベントのためお金が必要になり、結局解約してしまうのはよくあるパターンです。個人年金保険は基本的に途中で解約すると損をするものだと考え、加入するときは慎重に保険料を決める必要があります。

金利はずっと変わらない

返戻率は単にもらえるお金を払ったお金で割ったもので、銀行預金のように1年で何%利子がつくのかを表しているわけではありません。ある個人年金保険の利子がどれぐらいなのかを調べるには、内部収益率の計算など少し難しい計算が必要になるのでここでは省略しますが、例えば先ほどの60歳払込満了、65歳から10年間の確定年金で返戻率が105%の個人年金保険であれば、預貯金などの利子に換算すると利率は約0.24%になります。

現在の銀行預金の金利は、普通預金で0.001%、定期預金でも0.01%程度なので、それに比べるとだいぶ高いと思うかもしれませんが、個人年金保険でもう一つ注意していただきたいのは、はじめに契約したときの予定利率がずっと変わらないという点です。

個人年金保険の場合、契約した時点でもらえる年金額と利率が決まってしまいますが、銀行預金では景気が良くなれば利率は上がり、悪くなれば下がる可能性があります。今は非常に金利が低いですが、このまま何十年と金利が低いままとは限りません。一昔前のように3%や5%になる可能性は少ないかもしれませんが、0.5%や1%に戻ることは充分に考えられます。世の中の金利が上がってきた時でも、個人年金の金利は今のままなのです。

景気がよくなって上がるのは銀行の金利だけではなく、物価も同様に上がります。例えば、今は外食1回が1,000円だとしても、20年後には外食1回に1,500円かかるようになっているかもしれません。その時に返戻率105%の個人年金保険で払い込んだ保険料が5%増えても、実際に買えるものはかなり少なくなることがわかるでしょう。このように、持っているお金は変わらないのに物価が上がって買えるものが相対的に少なくなってしまう可能性のことを、インフレリスクと言います。

流動性にも注意

銀行預金と個人年金保険のもう1つの性質の違いが、資産の「流動性」です。流動性のある資産とは、元本割れすることなくいつでも現金に変えることができる資産のことを言います。言うまでもなく銀行預金はATMに行けばいつでも元本割れすることなく現金を下ろすことができますので、流動性のある資産です。

逆に、例えば投資信託などの商品はいつでも現金に変えることができますが、元本割れしている可能性があるので流動性のある商品とは言えません。ちなみにいつでも現金に変えることができる商品は「市場性のある商品」と言いますので、投資信託の場合は、市場性はあるけど流動性がない商品となります。

個人年金保険もいつでも解約できますが、前述のように途中解約をすると元本割れするので、流動性のある商品ではありません。そこが預金と大きく異なる点です。

流動性のある商品のメリットの1つは、急に資金が必要になった時に、いつでもお金が使えると言うことです。例えば、突然の病気や怪我などで治療費がかかってしまった時や、仕事をやめて留学や専門学校に通いたくなった時、また結婚や出産、引越しなどの目的にも今まで貯めてきたお金を損することなく使うことができます。

もう1つのメリットが、いつでも他の商品に乗り換えることができると言う点です。もし何年後かに世の中の金利が上がっていれば、上がった時に定期預金や保険に加入してもいいですし、投資の勉強をしたなら投資信託で運用することもできます。

流動性のある商品はそのままではとても利率は低いのですが、これまでご説明した通りいつでも自由に使用方法や運用方法を決められるというメリットがあります。

年齢が若いほど個人年金保険のデメリットは大きくなる

これまで個人年金保険の注意点をご紹介してきましたが、これらの特徴は加入時の年齢が若ければ若いほどデメリットに働きます。それは、単純に老後までの期間が長くなればなるほど、将来の予測が難しくなるからです。

若い方であればこれから起こるイベントはそれだけ多くなりますし、お金が必要な機会も多いでしょう。また、今50代の人が老後を迎える頃にインフレになっている可能性は高くないかもしれませんが、今20代の方が老後を迎える頃にはどうなっているかはわかりません。

まだ老後までの期間が長い人は、個人年金保険だけでなく他の商品とも比較しつつ検討しましょう。

生命保険料控除に期待しすぎない

(写真=maroke/Shutterstock.com)

生命保険料控除とは

税金のことを勉強したことがある人であれば、「生命保険料控除」という言葉を知っているかもしれません。この生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合、一定の金額の所得控除を受けることができ、税金が安くなる制度のことです。

2012年1月以降の生命保険料控除の控除額は、以下の通りです。

表2.生命保険料控除の控除額

年間の支払い保険料等 控除額
2万円以下 支払保険料の全額
2万円超 4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超 8万円以下 支払保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

上記で紹介した返戻率105%の個人年金保険では、保険料が1ヵ月1万5,000円、1年で18万円なので、控除額は最大の4万円になります。

控除額が4万円ということは、課税される所得が4万円少なくなることを意味します。結果、例えば所得税が10%の方であれば、4万円の10%の4,000円税金が安くなります(つまり4,000円手取りが増える)。1年で18万円払って手取りが4,000円増えるなら、この1年間の利率は4,000円÷18万円で2.22%になり、とてもお得と思うかもしれませんが、この利率にも注意が必要です。

預金の複利との違い

1年で2.22%という利率は銀行の利子とは意味合いが異なります。銀行の利子について、毎年20万円を利子2%の預金に預ける場合を例に見てみましょう。

1年目は20万円に2%の利子がつくので、4,000円、元本と利子を合わせると20万4,000円です。2年目はその20万4,000円と追加の預金20万円の合計40万4,000円に2%の利子がつくので、利子は4,080円、元本と利子を合わせると20万8,080円です。10年続けると以下のようになります。

表3.銀行預金の利子の付き方

年数 元本 利子 元利合計
1年目 20万円 4,000円 20万4,000円
2年目 40万4,000円 8,080円 41万2,080円
3年目 61万2,080円 1万2,242円 62万4,322円
4年目 82万4,322円 1万6,486円 84万808円
5年目 104万808円 2万816円 106万1,624円
6年目 126万1,624円 2万5,232円 128万6,867円
7年目 148万6,857円 2万9,737円 151万6,594円
8年目 171万6,594円 3万4,332円 175万926円
9年目 195万926円 3万9,019円 198万9,945円
10年目 218万9,945円 4万3,799円 223万3,744円

一方、個人年金保険の生命保険料控除は、その年に払った保険料に対してのみ適応されます。要するに、上の例では毎年4,000円の控除が受けられるということです。1年間の保険料が18万円で生命保険料控除による税金の軽減が4,000円の実質の利率は、銀行の利子と比較してみると、次のようになります。

表4.個人年金保険の生命保険料控除による実質利率

年数 累計払込保険料 生命保険料控除による控除額 実質の利率
1年目 18万円 4,000円 2.22%
2年目 36万円 4,000円 1.11%
3年目 54万円 4,000円 0.74%
4年目 72万円 4,000円 0.56%
5年目 90万円 4,000円 0.44%
6年目 108万円 4,000円 0.37%
7年目 126万円 4,000円 0.32%
8年目 144万円 4,000円 0.28%
9年目 162万円 4,000円 0.25%
10年目 180万円 4,000円 0.22%

1年目は確かに大きな控除額ですが、10年目になるとこれまで払い込んできた額180万円に対して4,000円の控除、つまり預金に置き換えると0.22%となっています。もちろんこれは年数が経てば経つほど低くなっていきます。1年目の2.22%という数値はそれだけでも大きな控除ですが、単純に銀行の預金の利率と比較することはできないことは注意しておきましょう。

40代女性が個人年金保険に加入すると実質どれだけお得になる?

では、これまで例で出してきた返戻率105%の個人年金保険に40歳の方が加入すると、実質どれだけお得になるのかをシミュレーションしてみましょう。

<(再掲)個人年金加入の例>
加入する人    :40歳の女性
払込期間    :60歳払込満了
年金受取開始年齢:65歳
保険の種類    :10年確定年金
月払保険料    :1万5,000円
基本年金年額    :37万8,000円

受取年金総額=37万8,000円×10年=378万円
払込保険料総額=1万5,000円×12ヵ月×10年=360万円
返戻率=378万円÷360万円×100=105%

元本360万円に対して受取保険金が378万円なので、保険金だけで言うと18万円のプラスになります。さらに、保険料を払い込んでいる20年間の間に生命保険料控除を受け税金を安くすることができるので、税金の控除を年間4,000円とすると、4,000円×20年で8万円得します。

結局、20年間保険料を払い、加入時から保険金を受け取り終えるまでの35年間の運用で、元本360万円に対し26万円得する結果になりました。これを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、これまでご紹介したように、この金額はあくまで途中解約することなく払込を続けた場合に受け取れる金額であることに注意してください。

個人年金保険以外で老後に備えることができる商品

(写真=BlurryMe/Shutterstock.com)

10年変動型個人向け国債ならインフレリスクにも対応

個人年金保険の特徴と注意点をご紹介してきましたが、老後資金の準備ができるのは個人年金保険だけではありません。むしろ、他の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを知っておくことで、個人年金保険も含めて自分にぴったりの老後の準備ができるはずです。ここからは個人年金保険以外で老後の準備におすすめの金融商品をご紹介します。

まず、絶対元本を減らしたくない人に検討していただきたい商品が「個人向け国債」です。個人向け国債には「固定金利型3年満期」「固定金利型5年満期」「変動金利型10年満期」の3つがありますが、低金利時代の今におすすめなのは変動金利型10年満期です。この商品の特徴を順番に見ていきましょう。

<変動金利型10年満期の個人向け国債の特徴>

特徴1.元本保証
世の中には元本確保の商品はいろいろとありますが、実際は中途解約の手数料や運営会社が倒産したら資産が目減りするなど、返ってくる額が元本より少なくなることがあります。その点、国債の大きな特徴は元本が保証されていることです。実際、日本国内で取り扱われている商品のうち、「元本保証」がされているのは、1,000万円以下の預貯金と日本国が発行している債券(国債)だけです。

特徴2.最低金利0.05%が保証されている
2020年1月現在、普通預金の金利は大手銀行で0.001%程度ですが、国債の場合最低金利0.05%が保証されています。高いとは言えませんが、0.05%より下がることがないのは安心感があります。

特徴3.発行後1年以上経過で換金可能
個人向け国債は発行後1年以上経過すると、いつでも1万円から途中換金できます。ペナルティーとして直前2回分の利子相当額×0.79685が差し引かれますが、トータルで元本割れはしませんし、1年経てば流動性のある商品と言えます。

特徴4.インフレにある程度対応できる
この特徴は変動金利型10年満期の商品に限りますが、変動金利型の商品は景気がよくなり世の中の金利が上昇すれば、それに伴い商品自体の金利も上がるので、ある程度将来のインフレに対応することができます。

変動金利型10年満期の個人向け国債は、元本は減らしたくないけど銀行の預金より少しでもいい金利で増やしたい方、これからイベントが多くてもしもの時に換金したい方、将来のインフレが心配な方などにおすすめの商品です。

iDeCoの税制優遇は個人年金保険以上

老後の資金を貯めるという目的であれば、iDeCoという選択肢も検討しましょう。iDeCoは老後資金の準備に特化した制度で、さまざまな税制メリットがあります。ただし、その反面いくつかデメリットもありますので、特徴をしっかり把握しておきましょう。

<iDeCoの特徴>

メリット1.掛金が全額所得控除される
個人年金保険では保険料が一定額まで生命保険控除の対象になるというお話をしましたが、実はiDeCoに拠出した掛金は全額が所得控除の対象になります。例えば、月に2万円(年間24万円)の掛金をiDeCoで拠出すると、その全額が所得から控除され、所得税が10%の人であれば2万4,000円所得税が安くなり手取りが増えます。個人年金保険では控除されるのは最大4万円までで税金が安くなるのも4,000円でしたので、iDeCoの税制優遇はとても大きいことがわかります。

メリット2.運用で儲かった利益に税金がかからない
iDeCoでは定期預金、保険、投資信託のいずれかに60歳まで積み立てをしますが、その運用期間中に利息がついたり投資信託が値上がりしたりして、元金以上に利益が出ることがあります。通常の預金や投資信託では利益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoで運用する場合この税金がかかりません。

例えば、100万円を運用して110万円になった場合、普通なら利益の20.315%の2万315円の税金がかかり、実際に受け取れるのは7万9,685円ですが、iDeCoの場合は利益10万円をそのまま受け取ることができます。

デメリット1.60歳まで引き出せない
iDeCoで積み立てたお金は原則として60歳まで引き出すことはできません。預金のようにいつでも現金化することができないのはもちろん、個人年金保険では損をすれば途中で解約できましたが、iDeCoでは60歳までは自由に使うことができないのです。余計なものを買う誘惑に負けず老後まで確実に資産を貯めることができるという点はメリットですが、緊急事態に1円も使うことができない点は注意する必要があります。

デメリット2.手数料がかかる
iDeCoを始めるには、銀行や証券会社などの金融機関でiDeCoの専用口座を開設する必要がありますが、そのiDeCo口座の開設・維持には手数料がかかります。2020年1月現在、開設手数料は2,829円で一律ですが、維持手数料は金融機関によって171円から629円まで差があります。iDeCo口座は1人1口座しか開設できないので、できるだけ維持手数料の低い金融機関を選びましょう。

iDeCoは自分の責任で商品を運用する制度です。運用がうまくいくと将来大きく資産を増やすことができ、インフレ対策にもなりますが、運用に失敗すると老後の資産を減らすことにもなります。ただし、iDeCoには元本確保型の商品もありますので、どうしても損をしたくない方であればそういう安全資産で運用をするのもいいでしょう。

老後の資産以外の目的では利用できませんが、税制優遇の大きさや商品によってインフレにも対応できる点などから考えると、老後資産に特化した場合に最もメリットが大きい制度です。

投資に抵抗がないならコツコツ貯める「つみたてNISA」もおすすめ

iDeCoは老後の資金準備におすすめの制度ですが、老後資金を目的にしつつ他の用途にも使いたいという人はつみたてNISAもおすすめの制度です。

<つみたてNISAの特徴>

特徴1.運用で儲かった利益に税金がかからない
つみたてNISAはその名の通り、積み立て方式で投資を行っていく制度で、投資期間は最大20年となっています。その間の運用で利益が出た場合、本来なら利益にかかる20.315%の税金が非課税になります。この点はiDeCoと同じです。

特徴2.運用によって損益が出る
つみたてNISAの運用商品は基本的に投資信託になります。iDeCoと違い元本確保型商品がなく、多かれ少なかれリスクのある商品での運用になるので、うまく運用できれば資産を増やすことができますが、失敗すれば逆に資産が減ってしまいます。

特徴3.いつでも換金できる
iDeCoには無い特徴として、いつでも換金できることがあります。ただし換金したいタイミングで利益が出ているとは限らず、資産がマイナスになっていれば換金したタイミングで損失が確定してしまいます。

つみたてNISAはiDeCoと同じく、投資をする方のための優遇制度です。運用商品が投資信託のため、将来のインフレには対応できます。税制優遇という点では掛け金も非課税になるという点でiDeCoの方がメリットは多いのですが、いざという時に現金化できるという点が魅力です。老後資金を集中して貯めたい人はiDeCo、他の目的にも備えたい人はつみたてNISAを検討してみましょう。

個人年金保険は途中でやめるべき?

(写真=KoOlyphoto/Shutterstock.com)

加入年月が短ければ解約もあり

ここまでご紹介してきた中で、「個人年金保険に保険料をかけすぎているかも」や「60歳まで払い続けられるか不安」と感じた人もいると思います。そういう方は加入期間がまだ2,3年以内であれば解約を検討するのも1つの方法です。

もちろん早期に解約すれば解約返戻金は少なくなりますが、2,3年以内であればまだその損失は少なくてすみますし、無理をしながらだらだら続けてやっぱり払えなくなる、というようなことは避けられます。

個人年金保険の注意点でもご紹介したように、個人年金保険の利率はそれほど良いものではなく、個人年金保険に2万円回すより住宅ローンの返済額を毎月2万円増やす方がトータルでは得ということもよくあります。これからのご自身のライフイベントや投資プランなどを考えて検討しましょう。

10年程度継続しているなら払い済みも検討を

個人年金保険は解約すると損をするので、いますぐまとまったお金が必要ない方は「払い済み保険」にすることも検討しましょう。払い済み保険とは、今後の保険料の支払いをやめて、今まで支払った保険料で保障を残す保険のことです。

例えば、40歳から60歳まで保険料を払う契約だったものを、50歳になった時点で払い済み保険にするとします。この場合は50歳まで払った保険料を元に、将来年金額が決まります。将来もらえる年金額は半分かそれ以下にはなるでしょうが、以降は保険料を払う必要はなくなりますし、少なくとも解約するより損失を抑えることができます。

ただ、この払い済み保険にするには条件があります。生命保険料控除で所得控除を受けられることはご紹介しましたが、実はこの控除を受けるために個人年金保険を契約する時「税制適格特約」という特約を付けています。この特約の条件の一つに「保険料の払込期間が10年以上であること」があるので、保険料を払っている期間が10年未満であれば払い済み保険にすることはできません。

10年以上保険料を払っている人であれば問題ありませんが、7年目や8年目の方であればあと数年保険料を払ったのち払い済み保険にするという選択肢も検討してみましょう。

老後の資金はさまざまな制度を利用して準備しよう

(写真=weedezign/Shutterstock.com)

個人年金保険は貯金より利率がいいと紹介されることが多いのですが、金利がずっと固定されていること、途中で換金しにくいこと、インフレに弱いことなど、考慮しなければいけない点もあります。

今回は老後資金を貯めるのにおすすめの商品を他にも紹介しましたが、全ての商品に言えることは、どのリスクにも備える完璧な商品はなく、どの商品にも相応のメリット・デメリットがあるということです。それらを理解して、自分にあった組み合わせで老後に備えましょう。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)

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