世界的人気SNSの仲間入りを果たした「TikTok(ティックトック)」。リップシンク(口パク)や、リズミカルダンスなど、くるくると変化する表情をスマートフォンのインカメラで撮影して投稿する“中高生向けのSNS”と認識している人は、ちょっと古いかもしれません。今、TikTokは社会的にインパクトを与えるSNSになりつつあります。

TikTokを活用した作品が、国際的広告賞初受賞

「TikTok」が社会的に大きな存在感を示したプロジェクトといえば、日本赤十字社、TBWA\HAKUHODO、TikTokの3社が協力して立ち上げた「#BPM100 DANCE PROJECT」でしょう。

日本では“心停止からの生存率(10%前後)”が欧米(60〜70%)に比べて非常に低い問題を受け、心肺蘇生(CPR)の方法をダンスと音楽を通じて普及するべく発足したプロジェクトです。

心肺蘇生のリズムとシンクロさせたオリジナルのダンスは、スタートから約2ヵ月で動画再生回数3,020万回、いいね数151万を獲得するほどの反響を招きました。

心肺蘇生普及のキャンペーンとして異例の反響を生んだ同プロジェクトは、アジア地域最大級の広告コミュニケーションフェスティバル「Spikes Asia 2019」において、エンターテインメント部門で銀賞、ミュージック部門で銅賞を受賞。TikTokを活用した作品として、国際的広告賞で初の受賞を果たしました。

休校期間を前向きにとらえた「#休校チャレンジ」

その後も、TikTokは存在感を増しています。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、全国の学校が臨時休校となった2020年3月――人気“TikToker”(=TikTokにおける投稿者のこと)のしんのすけ氏が発案した「#休校チャレンジ」も話題となりました。

しんのすけ氏は、「この休校期間を利用して、有名TikTokerの仲間入りをするのも悪くないんじゃないか」と若者に向けて呼びかけました。そして、「学生であること」「撮影場所は家の中限定」などの条件のもと“自分”をテーマに、#休校チャレンジを付けた動画を募集したところ、いくつもの作品が寄せられました。

コント的な“あるある”ネタを披露したり、自慢の料理のレシピを紹介したり、人気女優の似顔絵を描いたり、歌を歌ったり……。バラエティ豊かな作品が投稿され、しんのすけ氏の発表によると、当該ハッシュタグはなんと7,400万回再生されたそう。休校期間を前向きにとらえなおした「#休校チャレンジ」は、テレビなど多数のメディアでも取り上げられました。

企業はもちろん、自治体も活用するTikTok

新型コロナウィルス感染拡大の中で「#休校チャレンジ」の他にも、時流に合わせたハッシュタグが次々と生まれました。

日用品などを展開するレキットベンキーザー社による、正しい手洗いの方法をポップに発信する「#Handwashchallenge」は世界中で大流行。日本においても「薬用石けんミューズ」ブランドを通して、「#手洗いチャレンジ」が実施されました。

他にも、家の中でも充実したスポーツライフを過ごすための「#TikTokスポーツライフ」タグにも注目が集まりました。自宅でできるトレーニング方法を紹介した動画などが投稿されるハッシュタグなのですが、これには有名スポーツ選手も参戦。

プロサッカー選手の槙野智章氏は、「リフティングしながらテーブルクロス引きチャレンジ」といったユニークな挑戦をしています(結局テーブルクロス引きには失敗しているのですが……)。

さらに、スポーツ庁もTikTokアカウントを開設し、上記の「#TikTokスポーツライフ」などを利用して、自宅でも楽しく体を動かすための情報を発信中です。

また、東京都、大阪府も新型コロナウィルス感染拡大を受けてアカウントを開設、神奈川県庁はいち早く2019年11月から動画を投稿しています。行政機関や自治体からも、若者に向けた情報発信にはTikTokが有効だと考えられているようです。