ストーリーや演出はもちろん劇中で流れる音楽も映画の大切な楽しみの一つですよね!フレーズを聴くだけで映画の名シーンやタイトルクレジットが思い浮かぶような偉大なテーマ曲から、劇中でキャストの見事なパフォーマンスが見られる歌まで。音楽は映画全体のイメージを大きく変える力を持っています。今回は、音楽が魅力的な映画をチェックしていきましょう。
ビートルズが存在しない世界で巻き起こる物語『イエスタデイ』
2019年公開の『イエスタデイ』は、鬼才ダニー・ボイルがメガホンをとったビートルズファン必見の音楽映画です。劇中には、題名と同じタイトルの「Yesterday」をはじめ「In My Life」「Help!」「Here Comes the Sun」などビートルズの楽曲がちりばめられています。映画はメンバーの出身地と同じイングランドが舞台です。
東部の町サフォーク出身の主人公ジャックは、シンガー・ソングライターになるために夢を追い続けるもあえなく挫折。そんな中、世界全体で原因不明の停電が発生しジャックは交通事故に遭います。
昏睡状態に陥るも意識を取り戻したジャックが目にしたのは、ビートルズの楽曲もメンバーも存在しない世界。唯一ビートルズの記憶を持ち続けていたのはジャックだけでした。
そんな彼がとあるライブでビートルズの楽曲を披露するのですが、この行動が彼の運命を大きく変える……といったパラレルワールドストーリーです。
選曲担当は、かねてよりビートルズのファンだった脚本家のリチャード・カーティス氏。劇中で流れる楽曲は、ジャックたち登場人物の心情やストーリー展開に沿うタイトルが選ばれています。
かつて世界を席巻した名曲たちは、時代を変えても同じように人々の心を動かし名曲として世に広まる……この映画には、そんなメッセージも含まれているのではないでしょうか。
ミュージカル化された映画を再度映画化『ヘアスプレー』
『ヘアスプレー』は1988年に映画が公開され2002年にはミュージカルに形を変えてブロードウェイで上演。トニー賞を8部門も受賞するなど高い評価を受けた後、2007年に再び映画化されて話題となりました。舞台は1962年、アメリカ・ボルチモアに住む女子高生トレーシーは、歌にダンス、おしゃれに夢中でした。
朝起きですぐに踊り始めるなど明るく無邪気な性格であるものの、彼女は太めの体形にコンプレックスを抱いています。そんなトレーシーの夢は人気TV番組への出演。母親(ジョン・トラボルタが特殊メークでぽっちゃり体形の女装に挑戦!)に反対されるも持ち前のポジティブな性格でオーディションへの参加を決意します。
一見すると1人の女子高生が夢に向かって奮闘する姿を描いた青春映画のように感じるかもしれません。しかし劇中では人種差別問題も取り扱っています。
事実、アメリカでは映画と同じ1960年代半ばまでは黒人差別が当たり前のように起こっており特にキング牧師の行動による差別撤廃の流れが進むまでは、どの地でもひどいありさまだったのです。
『ヘアスプレー』ではそんな差別の残酷さも織り交ぜつつ、自分を含めて人間を認めることの重要性をミュージカルらしくダンスと音楽で伝えています。