事例3 「会社のために」と言われて自社販売商品の購入を求められた

社員が任意で自社販売商品を購入するのは個人の自由であるが、義務付けることは問題となる。

労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない。」と規定している(賠償予定の禁止)。ノルマ未達成の場合に社員に自社販売商品の購入を義務付けることは、実質的に違約金を定めたり損害賠償を予定したりするのと同じ効果を生じることから、この規定に違反することになる。

また労働基準法24条1項本文は原則として、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定している(賃金現金払いの原則)。このため、社員に自社販売商品の購入を義務付けることは、企業が賃金の一部を現金ではなく自社販売商品という現物で支給することと同じ効果を生じることから、「通貨で」という点と「全額を」という点に違反する。

法律と実態が乖離しているのはやむを得ないことか

上述のようなことを書くと、「法律の建前と現実の職場の実態とは違う。法律は机上の空論にすぎない。現実の職場では、そのような法律の建前など主張することなどできるわけがない。」という反論を受けるであろう。

しかし、そのような諦めとも言える考え方が長時間労働を跋扈させ、「働き方改革」を阻害する要因になってしまっているのではなかろうか。多様な人材層を受け容れかつ活躍できる職場とする「働き方改革」を実現するためには、法律で規制されていることは文字通りきちんと守られる職場環境を実現することが大事なのではなかろうか。

労働者の立場からは、ビジネスマナーの名の下に法律に違反する行為を強制されないようにしたいし、経営者・管理者の立場からも、ビジネスマナーの名の下に法律に違反する行為を強制することのないよう気を付けたい。

文・星川鳥之介(弁護士資格、CFP(R)資格を保有)/ZUU online

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