PDCAといえばすっかり現代ビジネスパーソンの基礎知識の一つです。しかし近年は「PDCAサイクルはもう古い」という声も上がっていることをご存じでしょうか。注目されている理論は“OODA(ウーダ)ループ”と呼ばれています。OODAは「即行動!」というシチュエーションに対応する理論です。そこで今回はOODAの成り立ちやPDCAとの使い分けについて確認していきましょう。

臨機応変に判断していくOODA

まずPDCAの理論について簡単におさらいしてみましょう。PDCAは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取った略称です。

まず計画を立ててから実行、その結果を分析して改善した新たな計画を立てる……というサイクルは、さまざまな企業で取り入れられています。しかしPDCAは万能なわけではありません。

「実行する前に計画を立てる」という手順を踏むことから、「実際の作業まで時間がかかってしまい臨機応変な対応がとりづらい」というデメリットも抱えています。

AIやIoT、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどITが日々進歩している現代では、より一層高速で回すことのできる手法が求められる場面もたくさんあるはずです。

そこで注目されているのがOODAループです。OODAは「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の頭文字を取っています。具体的にPDCAサイクルとはどう違うのでしょうか?OODAループは、“現場”を軸に置いた考え方をしているのが特徴です。

「ある山に登る」という目的があるチームの例をもとにPDCAとOODAの特徴を確認していきましょう。PDCAサイクルの場合は以下のような流れです。

・Plan:登山計画を綿密に立てる
・Do:山に登る
・Check:登頂後に改めて結果を評価
・Act:問題点を改善する

一方、OODAループが力を発揮するのは、山を登っている最中といえるでしょう。考え方は以下のようになります。

・Observe:足場や天候の状態を観察
・Orient:その都度状況判断
・Decide:どのようなコースを歩むか意思決定を下す
・Act:山頂へと向かっていく

そもそもPDCAサイクルとOODAループが力を発揮するシチュエーションはそれぞれに異なるということです。そのためPDCAとOODAのどちらが優れているというわけではなく「PDCAで対応しきれないスピーディーさが求められる場面ではOODAを取り入れよう」と考えておくことがよいでしょう。

PDCA/OODAは成り立ちから全然違う!

PDCAとOODAは場面ごとに使い分けることで高度な判断が可能になります。では、どのように使い分けていくのがいいのでしょうか?

PDCAサイクルは、“品質管理の父”と呼ばれるウィリアム・エドワーズ・デミング博士が提唱したフレームワークです。アメリカ生まれのデミング博士は、統計学、特にサンプリングの理論と実践の世界的権威であり統計学的なアプローチから品質管理の思想を発展させました。

一方のOODAループは、元アメリカ国空軍のジョン・ボイド大佐が提唱しアメリカ海兵隊が行動の基本原則に採り入れているものです。

つまり流動的な判断が求められる戦場で求められる考え方なのです!ところで戦略と戦術の違いはご存じでしょうか?

「戦略」とは、戦争に勝つための総合的な準備・計画・運用のことで「戦術」とは戦いに勝つための個々の具体的な方法のことです。

ざっくり説明すると戦場に出るまでが戦略、戦場に出てからは戦術ということになります。PDCAが力を発揮するのは戦略段階でOODAが力を発揮するのは戦術段階といえば理解しやすいかもしれません。

新しい案件に臨むときは「PDCAが力を発揮する段階か」「OODAが力を発揮する段階か」をしっかりと検討したうえで適しているフレームワークを選択することが賢明です。