テーマ型ファンドは「バラ色の未来」を語る?
テーマ型ファンドの最大の罪は「バラ色の未来」を投資家にイメージさせることだ。
自動運転の時代がやってくる。ビッグデータやAIが世の中を変える。IoTですべてのモノがインターネットにつながる。そんな「バラ色の未来」のイメージが、多くの投資家の冷静な判断力を奪ってしまう。たとえ悪材料が出たとしても、投資家はまだ「バラ色の未来」を信じ続けるのだ。それが妄想であるにもかかわらず。
ブラジルでサッカーワールドカップ、そしてオリンピックが開催される。一体どれほど多くの投資家がこのセールストークに踊らされたことだろう。多くの銀行員が「ブラジルのバラ色の未来」を語り、お客様に夢を与えた。ブラジルの首都の名前すら知らない銀行員が「ブラジルのバラ色の未来」を語る様はこっけい以外の何ものでもなかった。
ブラジルがこけると、今度はバイオやヘルスケアが格好のテーマとなった。高齢化社会を迎え、医療や福祉に多くの人が感心を持つようになる……多くのお客様がこのテーマに「バラ色の未来」をイメージした。世界の人口増加が医薬品業界にプラスになる。高齢化や新興国の購買力の高まりは一層医薬品の需要増につながる。相次ぐ医薬品業界のM&Aの流れに乗り、確かにこの分野の「テーマ型ファンド」は大きく値上がりした。
だが、幸運はいつまでも続かなかった。米国ではオバマケアが失敗し、高額な医薬品価格が批判の的となり、いまや関連銘柄の株価は指数に見劣りする有様である。多くの投資家がイメージした「バラ色の未来」には大きな落とし穴が待ち受けていたのだ。
私が過去の失敗から学んだ教訓
「テーマ型ファンド」は現在も良く売れる投資信託である。こんなことを書いている私自身も、バイオやヘルスケアの「テーマ型ファンド」をたくさん販売した。実際、その時には運用会社のパンフレットに書かれている「バラ色の未来」が本当に実現すると信じていた。
その後、医薬品セクターの株価に変調が現れたときにも、ことの重大さを客観的に見ることができなかった。それでも、株価はすぐに回復すると信じていた。なんの根拠もないにもかかわらず、パンフレットの「バラ色の未来」を信じていたのだ。
「テーマ型ファンド」はすでに高値圏にある株を買い付けるようなものだ。もし、個別銘柄の株価チャートを冷静に見たなら、あなたはきっとその株を買わないだろう。それでも、美しく仕上げられたパンフレットを見て、その投資信託に惚れ込んでしまうのだ。惚れ込んだら最後、もはや相場が発する下落の変調すら聞こえなくなってしまう。
それでも、あえて「テーマ型ファンド」を買うのであれば短期投資を心がけるべきだ。高値圏で買う「テーマ型ファンド」は売り時を逃すと、長期間塩漬けになる可能性が高いことを忘れてはならない。私はこんなモノは二度と買いたくもないし、お客様に薦めたいとも思わない。それが私自身が過去の失敗から学んだ教訓である。
文・或る銀行員/ZUU online
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