ペットというフィルターを通すからこそ分かること

(写真=Yuliya Yafimik/Shutterstock.com)

自分と合う相手の1次スクリーニングができる

婚活は「誰でもいいから数をこなせばいい」というものではありません。大事なことは「自分に合う人に出会う」ということ。ペット好きという要素が婚活に有利に働くのは、「ペット」というフィルターによって、自分と合わない人を最初の段階で除外できる点ではないかと思います。

婚活当事者とは若干視点が違いますが、筆者が上記のイベントを企画する際に使った1次フィルターは「猫」×「アクティビティ」です。そこが「猫好き」に該当する人には強いフックになると思ったからですが、結果として除外されたのは40代~50代男性でした。

参加しなかった人の理由を正確につかむことはできませんが、他のイベントの傾向と比較して、年齢層の高い男性はパーティ形式で飲食とトークが中心のイベントに集中しやすいと感じています。

猫と触れ合ったり、一緒にアクティビティをしたりするイベントは、少し面倒くさいイベントです。プロフィールや一問一答ではなく、活動の中から総合的に相手の人柄をつかみ、関係を作っていかなければなりません。お見合いの複数同時セットというより、グループデートに近いシチュエーションなので、ハードルが高いと感じる人もいたかもしれません。

しかし、お付き合いや結婚生活というものは、実際はこのような面倒くさいことの中に存在しているものなのではないでしょうか。

生き物やコントロールできない出来事への耐性が分かる

婚活当事者にとっての「ペット」や「動物」というフィルターが意味するものは、イベント企画者の観点とは少々違うでしょう。

企画時点で面白かったのは、役所の担当者である男性が「僕は動物よりむしろ無機物の方が好きです」と言ったことです。これは「自分が参加するなら」という観点だったと思います。そんな彼がイベント当日はカメラマンとなり、猫の写真で知られる岩合光昭さんばりの猫写真を量産していたのですが……。

彼の考えとは違うかもしれませんが、筆者の考える「動物」と「無機質」のもっとも大きな違いは「動物はコントロールできない部分が大きい」というところです。動物はじっとしているわけではありませんし、一緒に暮らせばハプニングの連続です。

猫を例に取れば、食べるし、排泄はするし、毛は抜けるし……。さらに、思いもよらない場所に入り込んだり登ったりもすれば、意表をつく場所で爪を研ぎ出したりもします。おまけに、突発的によく吐きます。こちらの意思で日常の秩序を保つことに限界がある存在なのです。

「結婚後に一緒に暮らせるかどうか」が見えてくる

ペットと暮らせるタイプか暮らせないタイプか。それはどっちが良いとか悪いとかいう問題ではありません。ただ、「静かで清潔な秩序ある暮らし方を好む」タイプの人と「ごたごたして散らかったり汚れたりすることも予期せぬアクシデントが起こることもさほど気にならない」タイプの人は、生活を共にするとお互いに疲れてしまうでしょう。

単に、「動物が好きかどうか」を越えて、例えば「家の清潔度と片付き具合をどの程度まで許容できるか」や「インテリアやライフスタイルのこだわりをどこまで貫きたいか」、「生活のペースやスケジュールをどの程度まで動かせるか」といった、生活の擦り合わせの度合いにかかわってきます。

擦り合わせは可能ですし、多かれ少なかれ必要になるのですが、結婚生活では「趣味が合う」以上に「一緒に生活してストレスがない」ことの方が後々効いてくるものです。

児童文学ですが、『イグアナくんのおじゃまな毎日』(佐藤多佳子、中央公論新社)は、思いがけず大イグアナを飼う羽目になった一家の翻弄されっぷりが生き生きと描かれていて、面白い作品です。コントロールできない他者と暮らすということは、こういうことなのだなと思います。ラストに、一家は最高にハッピーな結末に行き着くのですが。