高齢者の人口構成比が高くなり、2019年10月のデータでは75歳以上の構成比は14.7%になっています。そこへ出てきた老後に2,000万円必要との情報は、多くの人たちにショックを与えたようです。この問題の経緯を調べて、老後に本当に2,000万円必要なのか、なぜ必要なのか、どうしたらよいのかを考えてみましょう。

老後に2000万円足りなくなる!?の始まりは

(画像提供:hamazou/stock.adobe.com)

2019年に「老後に2000万円の資金が必要である」との資料が、金融庁のワーキンググループからメディに流れ、財務大臣が受け取りを拒否するという政治マターがありました。

元データは厚生労働省によるもので、夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦の収支は、収入月20万9,000円に対して、支出26万4,000円なので、毎月約5万5,000円の赤字となります。夫が95歳になる30年間で約2,000万円の不足になるとのことでした。

年金モデルの崩壊が断定されることを恐れた政府は、2,000万円不足を公式に認めることなく収拾をしましたが、老後の資金について考える場合は、至極当然のことと受け止める向きが多かったのも事実だと思われます。

しかし、数値はあくまでも平均値であり、1ヵ月26万円の支出は居住地域や所得層によって大きく変わるとも言えます。ここでは、老後資金として絶対に2,000万円が必要ではありませんが、生活スタイルによっては、その程度あったほうが良いとの前提で書き進めていくことにしましょう。

モデル年金のモデル夫婦とは

今回の65歳以上と60歳以上の夫婦は、厚労省の年金の受給額を算出する際の、モデル年金が想定されています。モデル年金は、夫は平均的な給与収入で40年間厚生年金に加入し、妻は40年間専業主婦となっています。また、2019年に厚労省が年金財政の検証をした際のモデル世帯も同様となっています。

働く女性が増えたことで専業主婦世帯が減少し、1990年代半ば以降は共働き世帯が多くなっています。2018年の働き方改革から配偶者控除の103万円見直しがあり、現在では150万円が(特別)扶養控除の減額される境(壁)となっています。

夫婦で厚生年金を受給することになれば、今後は65歳以上で年金収入が増える人が多くなるでしょう。それによって、老後資金不足は解消されるかというとそうではありません。年金財政を維持するためのマクロ経済スライド制の適用によって、将来的に年金給付水準は現役時所得の61%から50%程度まで引き下げることになっているからです。

したがって、モデル世帯像が変わっても、老後資金が不足することは変わらないと想定されるのではないでしょうか。

人生100年時代になってしまった

(画像提供:vegefox-com/stock.adobe.com)

イギリスの組織論学者であるリンダ・グラットンがアンドリュー・スコットと共著で『ライフシフト』を出版し、人生100年時代を唱えたのは2016年でした。それ以降、人生100年時代はすっかり定着しています。

現在70歳代の高齢者は、40~50歳の頃は自分の寿命は80歳程度と思ってライフプランを立ててきた人が多いと思われます。

例えると、自動車で500キロメートルを走るためガソリンを満タンにしてゴールに着いたら、後50キロメートル走りなさいという感じではないでしょうか。400キロメートルまではフルスピードで走らせたが、最後は省エネでガソリンを節約してギリギリでゴールインということもありそうです。

実際の人生でそんなことが起きないように備えなければなりません。

自分の年金額はいくらなのか

(画像提供:takasu/stock.adobe.com)

会社員などとして働いてきた人の老後資金の出発点は、受給できる年金の額から始まります。

  • 夫(妻):厚生年金、妻(夫):専業主婦(主夫)
  • 夫婦:ダブル厚生年金
  • 一人年金(独身)

以上の3つのパターンが考えられます。

厚生労働省の資料によると老齢厚生年金(厚生年金と基礎年金の合計)を受給している人の平均月額は2019年度で14.6万円となっています。

したがって、ダブル年金の場合はこの2倍が夫婦での年金受給額、どちらかが基礎年金だけの場合は14.6万円プラス老齢基礎年金6.5万円の合計になります。単身者の場合はこの金額そのままになります。

自分の年金受給予定額を知りたい場合は、毎年誕生月に「ねんきん定期便」のハガキが届き、節目の年(35歳、45歳、59歳)には個人毎の年金情報が知らされています。また50歳以上には年金見込み額が通知されますので、確認することができます。