夢のような別荘ライフに憧れを抱く人は多いでしょう。しかし、別荘を購入すると、思わぬ出費に苦しむケースがあります。今回は、別荘の維持費について、事例をまじえながらわかりやすく解説します。別荘を購入したい人は、ぜひ参考にしてください。
サラリーマンも別荘を所有する時代
空き家の増加によって、格安の別荘をインターネット上で見かけることも増えてきました。避暑地として有名な軽井沢の近辺でも、100万円台の別荘が販売されています。
参考として、いくつかの物件情報を記載しておきます。
・ロフト付きアーチハウス180万円(那須エリア)
1LDKのコンパクトで洒落た別荘です。赤色をしたアーチ形の屋根がかわいく、別荘気分をたっぷりと味わうことができそうです。リフォーム済みなのもうれしい点です。土地は100坪あるため、バーベキューを楽しんだり、物置を作ったり、自由に活用できます。
・緑に囲まれた庭付き平屋の別荘250万円(伊豆エリア)
階段を昇った先、緑の合間にのぞくひっそりとした佇まいが魅力の平屋です。3LDKで広々しており、アットホームな内装なので、自宅にいるようにくつろげます。自然を感じながら、ゆったりとした週末を過ごせそうです。
・階段状の個性的な外観の別荘300万円(軽井沢エリア)
階段状の遊び心あふれる外観は、いかにも別荘といった印象です。16.5帖のLDKは広々としたベランダにつながっており、豊かな自然を眺めながらくつろげます。分譲地内にテニスコートやドッグランがあるのもうれしい点です。
・メイン通り沿いにある富士山麓の別荘500万円(富士山麓エリア)
メイン通り沿いにあるため、アクセス良好です。2LDKで、使い勝手のいい間取りです。ところどころに木を使った外観が、別荘らしさをかもし出しています。
ちなみに、依然として高額な別荘ももちろんたくさん存在します。参考として、こちらもいくつか物件情報をピックアップしました。
・海と森の絶景を楽しめる温泉露天風呂つきの豪邸9億円(熱海エリア)
ハンモックのある広々としたテラス、日本庭園とつながった和室、こだわり抜いた豪華な家具など、これぞ別荘という造りです。土地面積は7,660.2平米という圧巻の広さを誇ります。駐車場も6台ついているため、友人を招いてパーティもできそうです。
・暖炉付きの重厚感あふれる別荘5億2,000万円(軽井沢エリア)
建築雑誌に出てくるような外観と、和のテイストを取り入れた落ち着いたインテリアが魅力です。吹き抜けありの8LDKでゆったり過ごせます。別荘から、近くのゴルフクラブを見渡せます。
・渓流を見渡せるリゾートヴィラ4億5,600万円(軽井沢エリア)
大胆なガラス張りで、森林と一体になったかのような生活が実現できます。暖炉つきで、素敵なアウトドアリビングもあります。20畳以上のLDK、ルーフバルコニーなど、別荘要素が満載です。
・180度海を見渡せる沖縄離島の別荘3億円(石垣島)
LDKやテラスなど、どこからでも澄んだ海を眺められます。ビーチまで徒歩3分ですが、移住者のみの別荘地エリアなので、静かに過ごせます。自宅のようにくつろげる落ち着いた雰囲気のインテリアも魅力です。
数百万円の別荘なら、手が届きそうな価格帯ではないでしょうか。サラリーマンや公務員でも、貯蓄や資産運用を行っていくことで、将来的に別荘を所有することも可能です。「別荘を持つのは一部の資産家だけ」という時代ではなくなってきているのです。
しかし別荘を所有することで必要なお金は、購入費だけではありません。別荘を所有すると、使用する・しないにかかわらず、毎年維持費が発生します。維持費のことを想定しておかないと、せっかくお金を貯めて別荘を買ったのに手放さざるを得なくなってしまうケースもあるかもしれません。
別荘を所有することを本気で考えているなら、維持費についてもしっかりと学び、あらかじめ見積もっておきましょう。
続いては、別荘を購入すると発生する維持費を、一つひとつ具体的に解説していきます。
別荘の維持費①管理費
毎週のように別荘を訪れるなら、その都度自分たちで清掃するのも一案です。しかし、年に数回程度の利用を考えているなら、定期巡回や清掃、草刈りといった別荘の維持管理を、業者に委託することが一般的です。
また別荘の管理費は、土地やサービス内容によってそれぞれ違います。
例えば、星野リゾートが提供する軽井沢の別荘管理サービスには、月額4万5,000円(税別)からのアドバンストサービスと、月額10万円(税別)からのハイクラスサービスの2種類があります。
沖縄では、留守宅巡回管理サービスで月1回の点検・清掃・通風を依頼すると、月額9,000円(税別)ほどです。
また別荘としてリゾートマンションを購入する場合は、通常のマンション同様、管理費を支払う必要があります。例えば、伊豆箱根リゾートマンションの管理費は、月1回の清掃、月2回の通風・家電可動点検等で、月額4万9,000円(税別)からです。
たくさん利用しようと思って別荘を購入しても、子どもが大きくなったり、仕事が忙しくなったりして、頻繁に利用できなくなるケースも多々あります。別荘を購入するなら、別荘地周辺の業者に管理を委託した場合の管理費についてもしっかりチェックしておきましょう。
特に沖縄の別荘や北海道の別荘など、季節利用が想定される場合、管理費はしっかり見積もっておく必要があります。沖縄は亜熱帯気候で草が伸びやすいため草刈りをオプションで依頼したり、北海道は積雪が予想されるため除雪を依頼したりと、気候条件を踏まえて管理費を想定することも大切です。
また薪ストーブの場合は煙突清掃費用が発生するなど、設備によって特殊な管理費が発生することもあります。
別荘の維持費②税金・保険
別荘を購入すると、固定資産税・都市計画税・住民税・火災保険料を毎年必ず支払わなければなりません。
固定資産税は、土地・建物の評価額に1.4%の税率をかけて計算されます。都市計画税は、土地・建物の評価額に0.3%の税率をかけて計算されます。なお、土地・建物の評価額は3年に1度見直され、建物の場合は、経年劣化によって少しずつ評価額が下がっていきます。
固定資産税・都市計画税ともに、毎年5月頃に市町村から納付書が届きます。税金の計算は市町村が行ってくれるため、納付書に記載された通りに納めれば問題ありません。
なお固定資産税・都市計画税ともに、別荘がセカンドハウスと認められた場合、税金が最大6分の1に減額されます。ただし、セカンドハウスとして認められるためには、少なくとも月1回以上利用したり、生活拠点として利用したり、いくつかの要件を満たす必要があります。
また、別荘を購入すると、住民税が発生します。「住民票を移さない限り、住民税はかからないのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、家屋敷がある場合、その自治体の何らかのサービスを受けているとみなされ、住民税が課税されます。
住民税には、全員一律の均等割と、所得に応じて計算される所得割の二つがあります。別荘を購入した場合、均等割のみが課税されることになります。均等割は市町村によって異なりますが、年間5,000円から6,000円程度です。たとえば、軽井沢の均等割は5,500円、那覇市の均等割は5,000円です。
また、静岡県熱海市では、別荘等所有税が設けられています。これは、リゾートマンションの建設によって、ごみ処理や上下水道の整備といった行政需要が増加するためとされています。別荘等所有税は、1平方メートルにつき650円と定められています。
火災保険の多くは、居住用物件を対象としているため、別荘だと加入できないケースがあります。別荘は無人期間が長く、火災リスクが高いとみなされるからです。別荘で火災保険に入る場合、別荘向け火災保険を探す必要があります。保険料は、建物の構造や面積によって変わります。
別荘の維持費③水道光熱費
水道光熱費も、いざ別荘を購入してから「こんなはずじゃなかった……」となることの多い維持費の一つです。
まず、電気やガスは、使用しなかったとしても基本料金がかかります。電気代は、月額数百円から数千円かかる可能性があります。ガス代については、別荘はプロパンガスのところが多く、基本料金だけで1,500円から2,000円程度になります。
上下水道料金も、数千円程度かかることが一般的です。また、水道料金については、定額料金としている別荘地もあり、その場合は1年に1回も使用しなくても定額が徴収されます。簡易水洗トイレの場合は汲み取り費用がかかるケースもあります。他にも、温泉がある場合は、温泉使用料や温泉更新料がかかる可能性があります。
トータルで1万円から1万5,000円程度です。毎月必ず発生するとなると、ジワジワと家計が圧迫される可能性があるため、注意しておきましょう。
また、別荘を利用する際の水道光熱費が意外と高くついてしまうケースも多々あります。別荘には、吹き抜けになっていたり、大きな窓がついていたりする物件が多くあります。吹き抜けも大きな窓も開放的ですが、その分クーラー代が高くつきます。
他にも、薪ストーブつきの別荘の場合、薪の費用がかかります。薪を自分で作る人もいますが、原木の購入費用がかかるうえ、チェーンソーなどの道具も必要です。
別荘の維持費④修繕費用
別荘の維持費として必ず用意しておきたいのが、修繕費用です。キッチン・バス・トイレなどの水回り設備などは、快適に使おうと思えば、定期的な入れ替えが必要です。また、雨漏りなど予期せぬ事態で修繕が必要になるケースもあります。
急な出費に慌てることがないよう、日頃から計画的に修繕費用を積み立てていくことが大切です。一戸建ての修繕費用の積立額の目安は、毎月1万円程度です。そうすれば、5年後には60万円、10年後には120万円、20年後には240万円貯まります。
修繕サイクルについて、概要を下記の通りまとめました。物件や築年数によって修繕サイクルは変わりますが、目安として参考にしてください。
・5年から10年
冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、エアコンなど、家電の買い替え時期です。
・10年から15年
給湯器は、10年から15年で入れ替えが必要といわれています。また、このぐらいの時期になると、クロスが傷んだりタイルが剥がれたり劣化が目立つようになるので、クロスやタイルの張り替えを検討しましょう。あわせて家電の買い替えも必要です。
外壁は常に日光や風雨にさらされているため、定期的な塗り替えが必要です。目安は10年に1度なので、最初の塗り替えの時期といえるでしょう。塗り替えを怠ると、かえって劣化が進み、大規模な工事が必要になることがあります。
・15年から20年
キッチン・トイレ・バス・洗面台など水廻り設備の入れ替えを検討する時期です。20年経てば、再び外壁を塗り替えるタイミングです。また、屋根の補修などが必要になるケースもあります。また、家電も買い替えましょう。
・20年から30年
クロスの全面張り替えや、畳の新調が必要になる時期です。給湯器交換、家電の買い替えなども発生します。雨漏りによって、本格的に屋根の補修が必要になる可能性があります。
別荘の維持費⑤交通費
別荘を購入するなら、維持費として交通費に留意しなければなりません。
別荘地として圧倒的に人気があるのは、高原気候で夏でも過ごしやすい軽井沢です。他にも、スノーリゾートで有名な北海道ニセコや、日本三大明泉の1つである草津温泉、富士山を見渡せる富士見高原、保養地として古くから続く伊豆、海が綺麗な沖縄などが人気のスポットです。
いずれにせよ、別荘地は都心部から離れた場所に位置することが多いので、どうしても交通費がかかります。参考として、東京から代表的な別荘地までの交通費を記載しました。航空券は最安値としていますが、時期によって料金は大きく変わるため、注意してください。
・東京から軽井沢
新幹線で行くと、自由席でも1人5,490円かかります。家族4人が往復した場合、1回で4万3,920円です。
・東京からニセコ
新幹線の場合、2万5,540円かかります。往復割引がきくため、往復だと4万8,340円です。家族4人が往復した場合、1回で19万3,360円かかります。
飛行機の場合、新千歳空港で降りて、電車かレンタカーでニセコに向かいます。成田空港から新千歳空港は、最安で5,450円です。新千歳空港からニセコまでは、片道2,650円です。片道1人8,100円なので、家族4人が往復した場合、1回で6万4,800円です。
・東京から草津温泉
特急電車とバスで行く場合、1人片道7,240円です。家族4人が往復した場合、1回で5万7,920円かかります。
・東京から富士見高原
東京から富士見駅までは、片道4,990円です。家族4人が往復した場合、1回で3万9,920円かかります。
・東京から伊豆
東京から伊豆高原駅までは、片道2,980円です。家族4人が往復した場合、1回で2万3,840円かかります。
・東京から沖縄
成田空港から那覇空港まで、1人片道6,670円です。家族4人が往復した場合、1回で5万3,360円かかります。