住宅ローンを組んで住宅を購入すると、一定の条件を満たせば住宅ローン控除で税金を取り戻すことができます。また2019年10月に消費税が8%から10%に増税されたことを受け、その増税分の負担を緩和するための特例措置も盛り込まれています。住宅ローンの支払い負担を軽くするためのお得な住宅ローン控除。その恩恵を受けるための確定申告、準備はできていますか?

住宅ローン控除とは?

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住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」と言います。通称としては「住宅ローン減税」とも言われたりしますが、いずれも同じ意味合いです。

住宅ローン控除は住宅の購入に10年以上のローンを組んだ場合に、一定の条件を満たすことにより年末のローン残高の1%を所得税(一部、翌年の住民税)から、入居時期などに応じて最大13年間控除する制度です。

また、住宅の購入だけでなく、一定の増改築やリフォームなどで住宅ローンを組んだ場合にも住宅ローン控除を適用できる場合があります。

住宅ローン控除の対象となるローンとは?

住宅ローン控除の対象となるローン(借入れ)は、その返済期間が借入開始から「10年以上」あるものが対象となります。この住宅購入のための借入れは一般的な金融機関などの住宅ローンだけでなく、勤務先からの借入れも対象にできます。

ただし、勤務先からの借入れの場合は、無利子または0.2%(2016年12月31日以前に住み始めた場合は1%)に満たない利率の借入れは対象となりません。また親族や知人からの借入れは全て対象とはなりません。

ここで注意が必要なのは住宅ローンの「繰上げ返済」です。繰上げ返済には返済期間を短縮できる返済期間短縮型の繰上げ返済があります。この繰上げ返済をすることにより返済期間が短縮され、借入れ開始から最終返済日までの期間が10年に満たなくなった場合、その年以降の住宅ローン控除は適用できなくなります。

住宅ローン控除の対象となる人とは?

住宅ローン控除の対象者は以下の2つとも該当する人です。

  • 対象の住宅に6ヵ月以内に住み始め、住宅ローン控除の適用を受ける各年の12月31日まで住み続けている
  • 住宅ローン控除の適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下

なお、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を、住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間(その譲渡が2020年4月1日以後の場合は住み始めた年と前2年・後3年の6年間)に受けた場合は、住宅ローン控除は受けられません。

住宅ローン控除の対象となる住宅とは?

住宅ローン控除の対象となる住宅は新築・中古・増改築などいずれの場合も、以下の共通の2つの条件を満たす必要があります。

  • 購入した住宅の床面積が50平方メートル以上
  • 床面積の2分の1以上の部分を自ら住むために使用している

床面積は登記簿上の床面積で判断されます。マンションの場合は専有部分の床面積となります。また、二世帯住宅や店舗兼住宅などの場合、建物全体の床面積により判断され、自ら住むための部分がその床面積の2分の1以上あることが必要となります。

中古住宅購入の場合は以下の2つの条件も満たす必要があります。

  • 建築後に使用されたもの
  • 戸建ての場合築20年、マンションの場合築25年以内、あるいは耐震基準に適合した建物など※
    ※耐震基準に適合した建物とは、住宅取得の日前2年以内に耐震基準適合証明書による証明のための家屋の調査が終了したものなどの条件があります

増改築の場合は以下の1と2の条件も満たす必要があります。

1.次のいずれかの工事に該当すること

  • 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模の模様替えの工事
  • マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
  • 家屋の居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
  • 耐震基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
  • 一定のバリアフリー改修工事
  • 一定の省エネ改修工事

2.補助金などを除いた工事費用の額が100万円を超え、その2分の1以上の額が自ら住む部分の工事費用である

また、住宅を2つ以上所有している人の場合、住宅ローン控除を適用できるのは主に住んでいる方の1つに限られます。

贈与による取得、または同一生計親族などからの取得した住宅の場合は住宅ローン控除の適用外となります。

控除額と控除期間はどれくらいになるの?

住宅ローン控除は控除期間中、原則として毎年末の住宅ローン残高の1%が所得税から控除される仕組みです。ただし、控除額の計算においては上限が設定されています。住宅ローン控除の適用による年間控除額や控除期間は、「入居した時期」と購入等をした物件にかかる「消費税の適用税率」によって異なってきます。

下記の表は、一般住宅の場合の年間控除額の計算式を表しています。また、対象の住宅が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などの認定住宅の場合は各計算式の上限に、さらに1,000万円が加算されます。

入居した時期 消費税の適用税率 年間控除額の計算式 控除期間
2014年1月1日から
2019年9月30日
5%もしくは適用なし 借入金年末残高(上限2,000万円)×1% 10年
8% 借入金年末残高(上限4,000万円)×1% 10年
2019年10月1日から
2020年12月31日
5%もしくは適用なし 借入金年末残高(上限2,000万円)×1% 10年
8% 借入金年末残高(上限4,000万円)×1% 10年
10% 【1年目から10年目】
借入金年末残高(上限4,000万円)×1%
【11年目から13年目】
以下のいずれか小さい額
・借入金年末残高(上限4,000万円)×1%
・物件購入価格(上限4,000万円)×2%÷3
13年
2021年1月1日から
2021年12月31日
5%もしくは適用なし 借入金年末残高(上限2,000万円)×1% 10年
8%もしくは10% 借入金年末残高(上限4,000万円)×1% 10年

国税庁「住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法」をもとに筆者作成。
※控除期間の3年間延長は消費税が8%から10%へ引き上げられたことによる増税負担の緩和措置

なお、新型コロナウイルス感染症等の影響により、控除の対象となる住宅の取得等をした後、その住宅への入居が2020年12月31日までにできなかった場合でも、次の条件を満たすときには、この緩和措置の適用を受けることができます。

  • 新築については2020年9月末、中古住宅、増改築等については2020年11月末までの契約締結
  • 2021年12月31日までに入居していること

たとえば上記表から、対象の住宅が一般住宅の場合で、2021年1月1日に入居した物件に適用された消費税が10%の場合、控除期間中の最大控除額合計は400万円(毎年の最大控除額40万円×10年間)となります。

実際の控除額は年収や借入金額などの条件によって変わってきます。ここで、以下の条件で控除額をシミュレーションしてみます。

1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
23.7
万円
23.5
万円
22.8
万円
22.0
万円
21.3
万円
20.5
万円
19.8
万円
19.0
万円
18.2
万円
17.4
万円
16.6
万円
15.8
万円
15.0
万円

なお、住宅ローン控除は原則、所得税から控除しますが、所得税から控除してもなお控除しきれない額は住民税(消費税が8%もしくは10%の場合13万6,500円が限度、それ以外は9万7,500円が限度)から控除されます。