「ビットコインキャッシュ」は、時価総額が5本の指に入る代表格とも言える仮想通貨だ。ビットコインキャッシュはどのようにして生まれたのだろうか。またビットコインと比べて送金時間、流動性などはどう違うのだろうか。
ビットコインキャッシュの歴史
ビットコインキャッシュはその名称からも分かるように、ビットコインと切っても切れない深い関係がある。
ビットコインキャッシュは、ビットコインのハードフォークによって誕生した仮想通貨だ。ハードフォークとは「通貨分裂」や「通貨分既」などと呼ばれるもので、簡単に言えば、もともと存在した仮想通貨(この場合はビットコイン)がルールを変えた新仕様の仮想通貨(この場合はビットコインキャッシュ)に分かれることを指す。
ビットコインがスタートしたのは2009年1月で、ビットコインキャッシュがハードフォークによって誕生したのは2017年8月のことだ。ビットコインの8年半後に誕生した新しい仮想通貨ということになる。
ビットコインキャッシュのハードフォークが起こったのは、仮想通貨の取引が世界的に増加したことがきっかけだ。送金・取引完了にかかる時間が長くなってきたことで、ハードフォークすることになった。
処理速度を改善する方法をめぐり、ビットコイン関係者の間で議論は分かれた。具体的には、既存ソフトウェアを改良することで解決を目指す派閥と、ビットコインの基幹技術「ブロックチェーン技術」における「ブロック」の容量を大きくすることを目指す派閥との間で対立が起こったのだ。前者はビットコインの開発者グループ、後者は仮想通貨取引の承認などによって報酬を得ているマイナー(採掘者)が中心だった。
この両者の対立が顕在化したことから、一時は日本国内でもビットコインの信頼性に関する懸念が広がり、仮想通貨取引所がビットコインの入出金と決済を一時中止するなどの影響が出た。
そして2017年8月1日にハードフォークが行われ、ビットコインキャッシュが誕生した。ビットコインと同じ数量分のビットコインキャッシュが生成され、ビットコインの保有者に無償で配布された。
他の仮想通貨でもハードフォークは起こっていたが、ビットコインのハードフォークは初めてだった。ビットコインのハードフォークはその後にもあり、2017年10月には「ビットコインゴールド」、11月には「ビットコインダイヤモンド」が誕生している。今後もビットコインのハードフォークで、「ビットコイン」の名称が付いた新たな仮想通貨が誕生する可能性はある。
ビットコインキャッシュの時価総額について
次に、ビットコインキャッシュの時価総額について説明しよう。
仮想通貨の時価総額は、「仮想通貨1単位当たりの時価」に「仮想通貨の供給量」を乗じて計算される。仮想通貨はレートも供給量も常に変化しているため、時価総額も常に変動している。仮想通貨情報サイト「コイン・マーケット・キャップ」が公表している数字を参考に、実際にビットコインキャッシュの時価総額を計算してみよう。
2018年10月20日時点で、ビットコインキャッシュ(BCH)は1BCH=440ドルほどで取引されており、供給量は1,700万BCHほどだ。取引価格と供給量を乗じると74億8,000万ドルとなり、この数字がビットコインキャッシュの時価総額となる。この日のレートで日本円に換算すると、約8,400億円となる。
この価格をビットコインと比べてみよう。ビットコイン(BTC)は10月、1BTC当たり6,500ドルほどで取引されていた。供給量は1,700万BTCほどなので、時価総額は1,100億ドル(約12兆円)だ。ビットコインキャッシュと比べると、実に15倍以上もあることが分かる。
ちなみにビットコインの時価総額は10月20日時点で、全仮想通貨の中で最も高く、ビットコインキャッシュは、仮想通貨技術を活用した資金調達「ICO」でも活用されるイーサリアム(ETH)、リップル(XRP)に続く4番目となっている。ビットコインキャッシュは、ハードフォークから1年以上が経っても、仮想通貨市場で存在感を維持し続けている主要な仮想通貨の一つであることが分かる。