厚生労働省が発表する「簡易生命表」によると、2019年現在、男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳、男女平均で約85歳となり、毎年少しずつですが延びている傾向にあります。医療技術の進歩などによって高齢者の寿命は延びて来ましたが、老後における生活費をいくら用意しておかなければならないのかについては非常に興味のあるところではないでしょうか。

平均的な収入

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ではまず、リタイアするまでの平均的な収入および支出について以下のモデルケースで見てみましょう。

《モデルケース》
家族構成:夫婦と子ども1人(夫:会社員、妻:専業主婦)

労働政策研究・研修機構が発表している「―労働統計加工指標集―」内の生涯賃金など生涯に関する指標によると、大学もしくは大学院卒の男性の場合で60歳までフルタイムの正社員で働いた場合の生涯賃金(退職金を含まない)は、2017年度では約2億6,900万円と推計されています。

一方、最近では女性の社会進出も当たり前となっており、定年まで勤める女性も増えてきています。参考までに同じ条件(大学もしくは大学院卒で60歳までフルタイム・正社員で働いた場合)の女性の生涯賃金を見ると、2017年度では約2億1,600万円と推計されており、男性よりは少ないものの2億円を超えていることが分かります。

生涯賃金と手取り収入額は異なりますので、これから税金や社会保険料などを控除した額が最終的な手取り収入額となります。そして、控除額を3割程度と仮定した場合の最終的な手取り収入額(夫婦ともに大学・大学院卒の場合)は以下のとおりとなります。

生涯賃金 手取り収入額 手取り収入額 (月額)
男性1人
(妻が専業主婦のケースも含む)
約2億6,900万円 約1億8,830万円 約41万円
女性1人 約2億1,600万円 約1億5,120万円 約33万円
共働き夫婦世帯
(夫婦共に正社員)
約4億8,500万円 約3億3,950万円 約74万円

ここまでは生涯賃金を基にした現役世代の収入額で、生涯収入にはリタイア後の年金収入も加味しなければなりません。

総務省が発表している「家計調査報告(家計収支編) 2019年(令和元年)平均結果の概要」内の高齢夫婦無職世帯(夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支によると毎月の手取り年金収入は21万6,910円となっており、これを年金の受け取り開始である65歳から、85歳まで20年間受け取ったとすると、約5,200万円となります。

したがって、上のモデルケースにおける平均的な生涯収入は、実質の手取り収入である約1億8,830万円に年金収入を加算した約2億4,030万円になると想定できます。

平均的な支出

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同様に「家計調査報告(家計収支編) 2019年(令和元年)平均結果の概要」によると、モデルケースに近似している2人以上の世帯のうち勤労者世帯(平均世帯人員3.31人、世帯主の平均年齢49.6歳)の消費支出は,1世帯当たり1ヵ月平均32万3,853円となっており、前年に比べ増加傾向にあります。

年間にすると約384万円、そして22歳の大学卒業後から60歳まで38年間の支出額は1億4,500万円にも上ることが分かります。ただし、住宅を購入した場合の負債(住宅ローンの返済)はこの額に含まれていません。

国土交通省が発表している「令和元年度住宅市場動向調査」によると、2019年現在、住宅の種類別平均購入金額は以下のとおりとなっており、たとえば上のモデルケースにおいて分譲マンションを購入した際は支出額に約4,500万円を加算する必要があります。

注文住宅(新築) 4,615万円
注文住宅(建て替え) 3,555万円
分譲戸建住宅 3,851万円
分譲マンション 4,457万円
中古戸建住宅 2,585万円
中古マンション 2,746万円

さらに、子どもにかかる費用についても考慮する必要があります。文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校3年生までの15年間における学習費総額は、幼稚園だけ私立でその後は公立に通った場合でも約634万円かかると言われています(塾や習い事などの学校外活動費を含む)。

そして、同じく文部科学省の「私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、2019年度の私立大学の初年度納付額については約134万円となっており、4年間在学した場合の施設設備費および授業料を総合すると約461万円となります。なお、私立大学は大学や学部、学年によって授業料が異なる場合がありますので、ここでは平均を単純に4倍にして計算しています。

つまり、ざっくりとした計算にはなりますが、子どもの幼稚園から大学卒業まで(幼稚園と大学のみ私立)を考えると、約1,100万円の教育費がかかることになります。

この点を総合し、モデルケースにおいて分譲マンションを取得し、子どもの教育費を大学卒業までと考えると、平均支出額の1億4,500万円に住宅取得費用や子どもの教育費用を加えた額は約2億円にも上ることが分かります。

さらに、リタイア後の生活費については総務省の「家計調査報告(家計収支編) 2019年(令和元年)平均結果の概要」によると平均で月に約24万円となっています。こちらも85歳までの20年間と考えると約5,760万円必要となり、先に算出した支出額に加算すると約2億6,000万円となることにも注意する必要があります。

退職するまでに蓄えられる預金は

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総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)の詳細結果」によると、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の平均貯蓄額は1,430万円となっています。しかしこれはあくまで平均値であって、子どもの数や雇用形態、住宅ローンなどの負債の有無などで貯蓄額に差が出てきます。

たとえば上のモデルケースのような場合、現役時代の収入が約1億8,830万円であるのに対し、支出額が約2億円となることを考えると、退職するまでに蓄えられる預金は少ないばかりか、一時的にマイナスになってしまう可能性も十分に考えられます。