「人生100年時代」を迎え、定年退職年齢の60歳を過ぎても働けるような環境整備が、社会全体で推し進められています。高年齢者の雇用がどのように変化していくのか、現状の取り組みを押さえ、定年退職後の“年金を増やす方法”や、老後に備えた“資産を形成する方法”についてまとめてみました。

将来的に、定年は75歳になる?

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高齢化にともない、政府はこれまでの定年制を見直す制度を整備しています。高年齢者の雇用は「高年齢者雇用安定法」によって取り決めが行われており、同法はこれまでに一部改正しながら企業側がとるべき措置を明示してきました。

2013年の改正では、希望する人が65歳まで働けるよう、経過措置として次のいずれかを会社側がとることを義務づけています。

  1. 65歳までの定年引上げ
  2. 65歳までの継続雇用制度(再雇用など)の導入
  3. 定年の廃止

そして、経過措置が終わる2025年4月からは、65歳定年制はすべての企業で義務化されます。

さらに、2021年4月からは70歳まで就業の機会を確保する「高年齢者就業確保措置」も施行され、企業には70歳までの定年延長や、70歳までの継続雇用制度の導入などが努力義務として課されることになっています。こうして、これまでよりも長く働くことを想定した人生設計も可能となりつつあります。

高齢者の就業率は年々アップ!

総務省が毎年実施している「労働力調査」によれば、65歳以上で仕事をしている人の割合(就業率)は、2009年時点で19.6%でしたが2019年には24.9%に上昇しています。男性だけをみると、65歳以上の人の就業率は34.1%(2019年)で、(調査対象の)3人に1人以上が、65歳を過ぎても仕事をしていることが分かります。

このように、高齢になっても働き続けることを選択する人は、10年前と比べて増加傾向であると言えるでしょう。

定年制を設けている企業は95.5%!

厚生労働省が行った「平成29年就労条件総合調査」の結果から、定年制を設けている企業は95.5%に上り、そのうち一律に定年を定める企業が97.8%を占めることが分かります。65歳未満を定年年齢としている企業の場合、継続雇用制度を導入する義務があるため、「再雇用制度」や「勤務延長制度」などによって65歳まで働き続けられる措置がとられています。

年金の受給が始まる65歳までの間、生活を充実させるためには、このような定年延長や定年退職後の就業(再雇用など)で収入を得ることは、重要な手段と言えるでしょう。同時に、受け取る年金の額を増やすための工夫も考えていきたいところです。

年金の受給額を増やすには? 

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老後の重要な収入源となる年金は、例えば“繰り下げ受給“で年金額を増やすことができるでしょう。

年金は、受給時期を66歳以降に設定することで年間受給額の増額が可能です。昭和16年4月2日以後に生まれた人は、老齢基礎年金の受給を66歳0ヵ月まで繰り下げると1ヵ月当たり8.4%、70歳0ヵ月まで繰り下げた場合は1ヵ月当たり42%、増額されます(2020年12月時点)。

また、老齢厚生年金も66歳0ヵ月~70歳0ヵ月に受給開始時期を繰り下げることで、同様の増額が可能です。老齢厚生年金の場合は、昭和17年4月2日以後生まれの人が対象です。

他にも、加入している年金の区分によっては「国民年金基金」もしくは「付加年金」に加入するほか、国民年金の加入期間に納付額の不足があれば追納する、60歳以降も働いて厚生年金に加入するなどの方法があります。