いちご、りんご、オレンジ、いちじく…季節によってさまざまなフルーツが実るフランス。そんな季節のフルーツをおいしく味わう保存法のひとつとしてコンフィチュールというものがあります。
今回、紹介するのは、「コンフィチュールの妖精」と称されるフランスのパティシエール、クリスティーヌ・フェルベールさんです。アルザスの小さな村で作られる彼女のコンフィチュールに世界中の人たちが魅了されています。その中には、ジョエル・ロブション、アラン・デュカス、ピエール・エルメ、ジャンポールエヴァンといった、巨匠たちも。
先日、来日中のフェルベールさんにお話を伺うことができたので、コンフィチュールへのこだわりや想いをお伝えしたいと思います。
『クリスティーヌ・フェルベール』のコンフィチュールのはじまり
小さい頃から食べることが大好きだったというフェルベールさん(写真左)とご家族
フェルベールさんのご実家は、祖父母の代から続くパン屋さんということもあり、8歳のときからお父さんと一緒にパンやお菓子を作ってきたのだそう。
お店を継ぎ、家族とともにパンやお菓子を作っていましたが、あるとき、もらったグリオット(さくらんぼ)でコンフィチュールを作り、ディスプレイ用としてショーウィンドウに並べたところ、お客さんから「売って欲しい」と言われるようになり、売り出したのが『クリスティーヌ・フェルベール』のコンフィチュールのはじまり。今では世界中からお客さんが訪れる人気のお店になっています。
手仕事で丁寧に作られるコンフィチュール
りんごとオレンジのコンフィチュールを実演していただきました。
フェルベールさんのコンフィチュールの特徴は、なんといってもゴロッと入ったたっぷりの果実。どのコンフィチュールもアルザスの工房で、手仕事で作られています。フルーツをカットするのももちろん手作業です。煮たときの食感を揃えるために、均等な大きさにカットするのがポイントなのだそう。
カットしたりんご、レモン果汁、オレンジの皮と果汁、砂糖を銅鍋に入れ、煮ていきます。銅鍋はフルーツのペクチンを引き出してくれるため、フェルベールさんのコンフィチュール作りには欠かせないもの。
アルザスの工房では8つの銅鍋を使い、毎日時間をかけ丁寧に作っています。
沸騰したら一度、火を止め、ボウルに移し、一晩寝かせます。翌朝、再び煮ることで、フルーツのかたちを残しながらも味がしっかりしみるのだそう。コンフィチュールとは、もともとフルーツを砂糖に漬けて芯まで砂糖を染み込ませる「コンフィール」というフランス語に由来するもの。芯まで砂糖がしみた透明感のあるフルーツが、コンフィチュールの証なのです。
出来上がったコンフィチュールを瓶詰めします。この瓶詰めの作業もフェルベールさんのお仕事。
「コンフィチュールを作るということは、魔法をかけるようなもの。フルーツを長生きさせる魔法なのです。
コンフィチュールを作るときは、『おいしいと思ってくれるかな?』ということを考えています。『おいしい』と言われると、もっと作りたくなるんです」とフェルベールさん。
今回はりんごとオレンジのコンフィチュールを作っていただきましたが、豊富な種類もまた『クリスティーヌ・フェルベール』のコンフィチュールの特徴でもあります。
フランボワーズとすみれ、オニオンとマンゴー、チェリーとローズなど、フルーツにさまざまなハーブ、花など他にはない珍しい組み合わせがたくさん。なんと、味の組み合わせは、これまでに作ったもので1400種類にも及ぶのだとか!
「フランボワーズとすみれの組み合わせは、熟したフランボワーズを濾しているときに、ふとすみれの香りがして思いついたんです。このように組み合わせは、考えて無理に出すのではなく、そのときに感じたものを合わせています。
食べ物には旬があるので、フルーツと組み合わせるときは同じ旬のものを合わせるとおいしいですね。同じ旬の花、ハーブ、ワイン、洋酒など…。そうするといろいろな道が広がります。ひとつのフルーツで無限の組み合わせが考えられるのです。
そして食べた人が味の変化を感じ、楽しんでもらいたいと思いながら作っています」。
ちなみにさまざまな組み合わせがあるフェルベールさんのコンフィチュールは楽しみも無限。パンやヨーグルトなどはもちろん、チーズと合わせたり、お魚料理やお肉料理のソースとして使ったりしてもおいしいのだとか!
謙虚な気持ちで作り続けるということ
どんなときも心にあるのは、「今日、私の最高のものを作ろう」という気持ち。
ものづくりへのひたむきな情熱と愛に溢れるフェルベールさん。彼女が作るコンフィチュールが特別おいしく感じられるのは、そんな想いが詰まっているのからなのかもしれないですね。
■協力
ソニー・クリエイティブプロダクツ
提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)
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