日本の通貨である円は国際通貨の中でも金利が低く、価値が変動しにくいことから、比較的信頼性の高い通貨として評価されています。一方で富裕層において安全な通貨として評価されているのは、日本円よりも米ドルであるとされています。米ドルの持つ特徴や強みを知ると、資産を守る上で預金や投資の対象として米ドルを選択する人が多い理由を理解できるでしょう。
米ドルはどんな通貨?
米ドルは世界最大の取引量を誇る国際通貨です。国際決済銀行が2019年に発表したデータによれば、国際通貨取引全体のおよそ88%が米ドルに関連しているとされています。金融不安が生じたときの安定的な資産として、国内外の投資家から高い信頼を得ているのも特徴です。
強大な貿易力を背景として中国の人民元が台頭しているとはいえ、人民元は通貨取引の4%ほどを占めるに過ぎません。引き続き米ドルは国際的な基軸通貨としての立場を維持しています。
過去10年間の値動き
2008年に生じたリーマンショック以降、米国の金融・証券に対する信頼性が低下したことを受けて、2010年以降も円高ドル安の値動きが継続しました。とはいえ、このトレンドは2013年以降大きく変化します。日本では日銀による量的緩和が実行され、米国でもFRB(連邦準備制度理事会)による利下げが行われた結果、徐々に円安が進みました。2020年12月現在では1ドル103円前後で推移しています。
米国の金利推移
米国では2016年にFRBによって金利が0.5%へ切り上げられて以降、好景気の波に乗って2018年には最大2.25%まで金利が引き上げられました。ただし、対中関係などによる国際的な景気の不透明感に押される形で、2019年以降は段階的に金利の引き下げが行われました。2020年12月の時点では、金利が0.25%に設定されています。
資産を守る上で、どうして米ドルなのか
富裕層にとっては、資産を巧みに運用して増やすことが大切です。同時に、損失のリスクに備え資産を減らさないこと、つまり防衛することも重要なファクターとなります。この2つの条件を満たす理想的な通貨として、米ドルが評価されているのです。米ドルの特徴を詳しく見ていきましょう。
流動性・流通量ともに◎
前述の通り、米ドルは国際通貨取引全体のおよそ88%を占めており、基軸通貨として圧倒的な流動性および流通量を誇ります。そのため、大きな値動きが起こりにくく、資産価値が失われにくいという信用度・信頼度があるわけです。
商品の選択肢が多い
為替取引では米ドルとほかの外貨によるペアが多く、選択肢が幅広いというメリットがあります。また、ドル建ての金融商品が日本国内でも数多く登場しています。加えて、円建ての金融商品より総じて利回りが高いというのも魅力でしょう。
世界中で両替・使用可能
米ドルを現地通貨に両替できないという国はほとんどありません。また、エルサルバドルやカンボジア、ジンバブエなど、米ドルが代替通貨として使用できる国や地域も数多くあります。こうした利便性も、米ドルの持つ通貨価値に貢献しています。運用によって増やした米ドルをそのまま使える国・地域が多いというメリットがあるわけです。
米国経済の見通し
国連が2019年に発表した人口予測によれば、米国では2050年まで継続的に人口が増加していくと考えられています。これに準じて、米国の経済は安定した労働人口に支えられ、引き続き一定の成長を遂げていくだろうと考えられています。