勤めている会社もしくは転職しようと考えている会社に、退職金の制度はありますか?厚生労働省の「就労条件総合調査」(2018年)によれば、20%近い企業で退職金制度がないことが分かりました。このほか非正規雇用で勤めている人など、退職金がない場合は老後に備えて勤め先を考え直すべきなのでしょうか。定年退職後も安心して暮らすための方法について考えてみましょう。

退職金を重視しない時代?

前出の「就労条件総合調査」結果から、従業員が1,000人以上の大企業のうち92.3%で退職給付制度があり、企業規模が小さくなるごとにその割合は小さくなることが分かります。従業員が30~99人の企業では77.6%となっており、大企業に比べると15ポイント近くの差があります。

退職金制度については法律で定められていないため、あくまで福利厚生の一環ということになり、企業や雇用形態によって制度の有無は大きく異なるようです。

ひと昔前まで終身雇用が当たり前だった日本では、定年退職時に退職金を受け取れるというのが一般的でした。それに対し、現在ではキャリアアップのために転職することも珍しくなく、新卒で入社して“定年退職まで勤める”という考えが薄れる傾向にあることからも、退職金を重視しない人が多いかもしれません。

一方で、多くのビジネスパーソンにとって定年退職後には老後の生活が待っています。退職金があることで老後の生活に安心感が生まれる一方で、退職金が少ない場合や退職金を見込めない場合でも、早いうちから資産形成に取り組むことで老後に備えることはできるはずです。ここからは、老後資金の準備について考えていきましょう。

老後資金の備え方

老後の備えとして、まず思いつくのが公的年金ではないでしょうか。

日本には、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)などの年金制度があり、これは加入期間と掛け金に応じて原則65歳(厚生年金は60歳、将来的に65歳)から年金を受給できるものです。

一方で公的年金だけでは不安という声も多く挙がっており、「老後2,000万円問題」も話題となりました。

老後に必要なお金は個人や家庭によって異なりますが、退職金がなく、貯蓄だけでは老後の備えに不安があるという人は、資産形成の一つとして投資を始めてもいいでしょう。ただし、投資はお金を“増やす”ことが期待できる一方で“減る”リスクもあります。商品の特徴やメリット・デメリットをしっかりと理解してはじめることが大切です。

ここからは、初心者にぴったりの金融商品と制度を紹介します。

iDeCO(イデコ)

老後に備える方法の一つとして、近年注目されているのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。

前述の公的年金は、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、国民の年金積立金をまとめて管理・運用しているのに対し、iDeCoでは加入した本人が運用商品を選び、掛金を毎月積み立てることで運用する“私的年金制度”です。

積み立てた年金資産は、老齢給付金として原則60才 から、「一時金(一括)」「年金」のいずれかの方法で受け取ることができます(金融機関によっては「一時金と年金の組み合わせ」も可能です)。老後へ備えられることとあわせて、iDeCoでは次の3つの税制メリットが特徴です。

  1. 掛金の全額が所得控除の対象となる
  2. 運用益は非課税で再投資
  3. 受け取り時も各種控除の対象となる

これらは、ビジネスパーソンをはじめとした働く人にとって大きな魅力と言えるでしょう。

なお、iDeCoは国民年金、厚生年金の被保険者が対象で、加入区分や所得によって掛金の上限が異なるなど一定の条件があるので、あらかじめチェックしておきましょう。また、会社の企業型確定拠出年金に加入する(している)場合は、勤め先に確認が必要です。

つみたてNISA

資産形成のために、これから投資をはじめようと考える場合は、2014年からスタートした「NISA(ニーサ)」を活用するといいでしょう。

一般的に、株式投資や投資信託によって得られる運用益に対しては、約20%の税金を支払う必要があります。これがNISAの税制優遇制度では、金融商品の購入に対して一定の非課税枠が設けられているのです。

この制度には大きく「一般NISA」と「つみたてNISA」があり、時間をかけてコツコツと老後に備える資産形成の場合には「つみたてNISA」を選ぶといいでしょう。つみたてNISAは、特に少額・長期・積立・分散投資を支援する制度として2018年にスタートしました。

具体的に、つみたてNISAは一定の条件において年間40万円までの投資による運用益や配当金が、最長で20年間非課税になる制度で、近年、利用者(口座数)が急増しています。また、この制度を利用して購入できる投資信託は、法令上の条件が設けられており、初心者でも安心して購入することができるでしょう。