節税メリットの大きい住宅ローン控除。年に1度のことなので、確定申告や年末調整でどのような手続きが必要か忘れてしまいがちですよね。この記事では、住宅ローン控除の年末調整手続きをわかりやすく解説します。うっかり間に合わなかった場合の対応も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも年末調整とは?

年末調整とは、“毎月の給与や賞与から天引きされる所得税”と“本来納めるべき所得税”を比較して、過不足金額を調整することです。

なぜ過不足金額が生じるのでしょうか?

毎月、給与などから天引きされる所得税は、おおよその金額で計算されています。また、生命保険をはじめとした各種保険料の控除、住宅ローン控除などを適用すると、本来納めるべき所得税は少なくなります。扶養家族の有無など家族構成の変更によって、差額が生じることもあります。

このような理由で過不足金額が生じるのを、毎月調整していると大変ですよね。そのため、年に1度年末の調整で精算する、というわけです。通常は天引き額が多く、還付されることがほとんどですが、場合によっては追加徴収が発生することもあります。

住宅ローン控除とは?

住宅ローンを利用した場合、住宅ローン残高に応じて住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を適用できます。続いては、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の制度について詳しく解説します。

住宅ローン控除の仕組みとメリット

住宅ローンを利用して住宅の購入や増改築等をした場合、税金の控除を受けられます。これを住宅ローン控除といいます。1年間の控除額は、基本的に年末時点での住宅ローン残高の1%です。

控除できる金額の上限は、住宅の種類や建築時期によって異なります。年末の住宅ローン残高の1%が上限を超える場合、上限金額が適用されます。

住宅ローンの年末残高は毎年減少するので、上限金額を下回った場合、控除額は毎年減少していきます。

住宅ローン控除を利用する場合、初年度は自分で確定申告を行い、2年目以降は勤務先の年末調整で書類を提出します。

年末調整で住宅ローン控除を適用する方法

2年目以降の年末調整に必要な書類は2種類です。

1つ目は、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」です。税務署より書面で送付、もしくは電子交付された申告書を使用します。

2つ目は、「住宅ローンの年末残高証明書」です。年末残高証明書は、金融機関から送付されます。

年末残高を申告書に転記し、計算した上で勤務先に提出しましょう。

住宅ローン控除を受けることができる人

大前提として、住宅ローン控除を適用する不動産を住宅として活用していなければなりません。新築または購入した日から6ヵ月以内に住み始め、住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住している人が、住宅ローン控除を受けることができます。

また、年収3,000万円を超えると、住宅ローン控除を受けることはできません。3,000万円とは、手取り額ではなく、税金や保険料を差し引かれる前の年収です。

住宅ローン控除と借り換え

また住宅ローンの借り換えをしても、一定条件を満たせば住宅ローン控除を適用することが可能なので、控除を適用するタイミングで、必要に応じて借り換えを検討してもいいでしょう。

金利が高いと感じる場合は、一度借り換えの相談をすることで、返済額を減らしたり、金利が下がったりすることがあります。金利が低ければ、毎月の支払額を増やさずに、返済期間を短縮できます。

ただし、借り換え後の返済期間を10年以上にするなど一定の条件を満たさないと、住宅ローン控除を適用できなくなることがあるため、信頼できる金融機関に相談しながら進めることが大事です。

2020年からの住宅ローン控除の変更点は?

2019年10月より、消費税が10%に増税されました。消費税が上がると、住宅の建物価格が上がります。そこで政府は、住宅ローン控除の内容を見直しました。

控除期間が10年から13年に延長

増税後の2019年10月1日から2020年12月31日までに住み始めた場合は、住宅ローンの控除期間が通常の10年から13年に延長されました。

11年目から13年目の控除額は、「年末の住宅ローン残高の1%」か「建物購入価格の2%÷3」の少ないほうの金額です。

また、2020年12月10日に2021年度の税制改正大綱が公表されました。税制改正大綱によると、コロナ禍を考慮し控除期間を13年に延長する特例は、2022年末まで延長される見込みです。

さらに、2022年度税制改正によって、住宅ローン控除の控除額が見直される可能性も示唆されています。今後も、改正に関する情報をしっかりチェックしていく必要があります。

トータルでどのくらいおトクになるの?

住宅ローン控除が10年から13年に延長されたことで、どのくらいおトクになるのでしょうか。

建物購入価格が3,000万円としましょう。「建物購入価格の2%÷3」が適用されたとすると、11年目から13年目の間、1年間で20万円、合計で60万円の税額控除が受けられます。

2%というのは、8%から10%に引き上げられた消費税の増税分です。その増税分が、住宅ローン控除でまかなえる仕組みです。つまり、増税前と同じ負担感で住宅が購入できるということです。