告知をしなければならない微妙なケース
実際、「こういう場合は告知しなければいけないのか?」と迷うことがあるかもしれない。具体的な例を挙げてみよう。
例1……1年前に急性胃腸炎で通院を1日したが、薬は7日分処方された。
例2……健康診断で前立腺肥大の疑いで「要再検査」と指摘があったが、自覚症状がないため再検査は受けていない。
例3……健康診断で子宮筋腫を指摘されたが「要経過観察」と言われた。
例4……1年に1回定期的に「子宮頚部異形成」のため診察・検査を受けている。
例1の場合……(2)に該当するため告知する必要がある
例2の場合……(4)に該当で要告知。
例3の場合……「要経過観察」が告知の対象となるかどうかは保険会社によるため、しっかり告知書を読んで判断する。
例4の場合……(2)に該当するため告知する必要がある。
微妙で判断が難しいケースもあるが、迷うときには保険会社や募集人に一度聞いてみるといい。また風邪やインフルエンザなどで一度診てもらったが完治したという場合には、告知が要らない保険会社もあるのでその点も事前に確認しておこう。
告知義務違反をした場合どうなるのか
もしうその告知をして保険に加入したらどうなるのだろうか。
加入2年以内に保険会社が告知義務違反を知ると、契約が解除される可能性がある。
保険会社が告知義務違反を知るのは保険金・給付金を請求するタイミングである。請求の際に提出された診断書の初診日が告知した日よりも前であったとき、保険会社は告知義務違反の疑いを持つ。
そして病院や健康保険組合に調査をした上で告知義務違反が判明すると、保険会社は契約を解除することができる。保険契約が解除となると保険金や給付金が支払われないばかりでなく、それまで払った保険料も戻されない。解約返戻金があれば支払われる。
ただし、告知義務違反をした事由と請求をした事由との因果関係がない場合には給付金が支払われる。たとえば、Aさんは高血圧と診断されて薬を飲んでいたがその事実を告げずに保険に加入した。しばらくたって椎間板ヘルニアと診断され入院し手術を受けた。この場合、告知義務違反が発覚して保険契約は解除となる可能性が非常に高い。しかし、告知していなかった病気である高血圧と、今回診断を受けた椎間板ヘルニアの因果関係が認められないため、入院給付金と手術給付金は支払われる。
次のような例もある。医療保険(1)に加入していたBさんが5年後、同じ保険会社で医療保険(2)にも加入した。医療保険(2)加入の半年前に白内障の診断を受けていたが、それを告知せずに加入した。医療保険(2)に入って半年後、Bさんは白内障の手術を受け、もともと加入していた医療保険(1)のほうだけ手術給付金の請求をした。その結果、保険会社は医療保険(2)の告知義務違反を知ることとなり、それを理由にBさんは医療保険(2)を解除された。医療保険(1)からは白内障の手術給付金が支払われた。
加入から2年たてば契約は大丈夫なのか?
保険契約が2年間有効に継続すれば、保険会社は保険契約を解除することができない。ただし「2年以内に保険金等の支払事由が発生していた場合」には保険契約を解除できる。
たとえば、胃がんの疑いがあるにも関わらず保険に加入し、2年以内に実際に胃がんと診断され入院・手術を受けるとする。このとき、あえて保険会社に給付金等の請求をしないでいると保険は有効に継続となる。
そうして2年の経過を待ってから入院と手術の給付金の請求をしたとすると、一見、保険会社は契約を解除できず、給付金が支給されるように思える。しかし、「胃がんによる入院・手術」という「保険金等の支払事由」が2年以内に発生していることになるので、保険会社は保険契約を解除できるということになるのである。
また、保険金詐欺等の悪質な告知義務違反については、永年にわたって保険契約を解除することができるという旨が、どの保険会社の約款にも記載されている。つまり、故意に告知を偽った場合、保険会社はいつでも契約を解除できるのである。