新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、歴史的な株価暴落が生じています。その対策のために日米欧の中央銀行は「ゼロ金利政策」と「量的緩和」を相次いで導入しました。なぜこの金融施策が実施されたのか、その背景と目的、今後の経済への影響を解説します。

FRBが4年ぶり実質ゼロ金利政策を導入

米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は2020年3月15日、金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)を当初予定していた17日からの日程を前倒して開催し、政策金利を1.00%引き下げて、年率0.00%~0.25%とすることを決定しました。

FRBが「実質ゼロ金利政策」を導入するのはリーマン・ショック後の2008年12月~2015年12月以来となる、約4年ぶりの電撃的な発表でした。その背景にあるのは、もちろん新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪化を和らげ、景気を下支えするためです。

「ゼロ金利政策」で投資の活発化、ローン負担軽減を期待

実質ゼロ金利政策とは、超短期の銀行間の資金の貸し借りの金利を“実質ゼロ”に近づける政策のことです。短期金融市場に大量のお金を供給し、景気を刺激するという目的で導入されます。

つまり、銀行など金融機関は低金利で資金を調達できるため、企業や個人に対しても低金利で貸し出せるというわけです。これによって、企業は資金調達面で安心感を持ち、運転資金のほか設備投資資金の調達に前向きになることができます。

また、企業だけでなく個人も、住宅ローンの金利が下がることなどによる負担軽減が期待できます。

「量的金融緩和」でお金の流れを活性化させる

今回のFRBの金融政策では「ゼロ金利政策」と同時に、今後数ヵ月間に米国債と住宅ローン担保証券の買い入れを実施する「量的金融緩和」策も表明しました。

「量的金融緩和」とは、金融市場(民間銀行など)に大量のお金を供給する政策です。

民間の金融機関は多くのお金をそのまま保有し続けていても利益にはつながりません。そのため、利益を得るために企業や個人に対して積極的に貸付を行うようになります。その結果、世の中にお金が出回り、経済活動が活発化して景気が上向く効果が期待されます。

欧州でも欧州中央銀行(ECB)が、3月に政策金利を据え置いたものの緊急債券買い入れプログラムを開始する量的緩和政策を発表しています。