この日までの消化器内科における結さん、ドクター森下、堀内さんの三角形がものすごく歪んでいるんです。

 おそらくは、栄養士だから栄養に関係が深い消化器内科の担当にしたい、というのが最初にあって、さらにNSTというのを取材で知ったからドラマに織り込みたいし、小児科の患者とも接点を持たせて泣けるシーンを作りたいという欲が生まれた。その整合性を取らないまま(あるいは意図的に無視して)、「結さんが堀内さんを救う」というシーンにたどり着こうとしているために、無理が生じている。

報連相だいじか?

 次の問題、堀内さんの家族関係について。

 怒鳴り散らされた息子が会社に戻ろうとすると、母親が「父さんの言うこと、気にせんでええからね」と声をかける。このとき父さんが言ったのは「大きな契約をするときは俺に相談せえ」という業務上の指示でした。言い方はよくないけど、社長である息子が納得しているということは会社にとってもそうしたほうがいいのでしょう。

「父さんの言うこと、気にせんでええ」という母親の言葉は、そのまま「大きな契約をするときも父親を無視していい」という意味になります。これが「バカ息子」「無能」「アホンダラ」というストレートな悪口だったら母親の言うこともわかるけど、もしくはこの母親が社長より上の会長職に就いているならわかるけど、シンプルに会社の業務に口を挟んでいることになる。このへんで、すでにこの親子の三角形も歪み始めている。

 さらにこの母親が結さんを薄暗い個室に誘い、「前より血便がひどい」「お腹も痛いみたい」と容態を報告している。「こんなこと栄養士さんに相談していいんか、わからないんですが」とエクスキューズしているから通るという問題じゃないですよ。ドクター森下が怖いから言えないのはわかるとしても、まず看護師だし、結さんもすぐさま「看護師さんに申し伝えますね」と返さなきゃいけない。消化器内科担当の栄養士が、患者の容態の悪化について知ったのです。すぐに医局に情報を共有しないのは職務怠慢、病院に勤める者としてあるまじき行為です。