ここにきて、積み重ねてきた作劇のアラがモロに出てしまったと感じます。きっかけにウソがあるから、2人の涙もウソ泣きにしか見えない。栄養士だギャルだというコンセプトを放り出してまで前半のクライマックスに持ってきた「結と翔也の婚約」という重大なシーンが、まるで説得力を持てなかった。惨敗です。
「どうすればいいかわからない」ということ
結という人は頻繁に「どうすればいいかわからない」と言います。今回も、翔也が大ケガをして野球をやめることになって、どうすればいいかわからなかった。だから突き放した。それをアユ(仲里依紗)たちがフォローしてくれて、どうあれ翔也を立ち直らせてくれた。
『おむすび』というドラマの最大の問題点は、この主人公の「どうすればいいかわからない」という苦悩を許容し続けていることです。周囲に体よく解決させて、本人に打開させようとしないことです。
そこには制作陣の「結を困らせたい」「結果的に結に手柄を立てたい」という欲望だけがあって、結という役柄を傷つける覚悟がない。この冬、フジテレビで放送されていた『わたしの宝物』というドラマ、見ました? あの作品には、主人公たちの心をズタズタに切り裂いてやろうという野心が満ちていました。登場人物たちが「どうすればいいかわからない」という顔をするたびに「ボヤボヤしてたら状況は悪化するばかりだぜ」とでも言わんばかりに次々と試練を突き付けていった。そうして初めて、彼らは主体的に動き出すことができた。
役柄を傷つける覚悟とは、そのまま、役柄を導く覚悟と言い換えることができます。物語を導く覚悟です。視聴者を導く覚悟です。その覚悟がないから、こうして朝ドラファンの大量離脱を招き、視聴率がどんどん低下しているのです。
このままじゃ、あなた方が大好きな橋本環奈に「史上最低朝ドラ女優」のレッテルを貼ることになりますよ。事務所にも怒られちゃうんじゃないの? どうすればいいか、本当に考えたほうがいいと思います。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)