総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2021~2023年 より筆者作成
図表1を見ると、2021年は新型コロナウイルス感染症の影響も残り、消費は低調でしたが、2022年と2023年の消費支出はいずれも5%を超える伸びです。そのため、2022年以降は消費支出の増加率が、おおむね2%台の年金の改定率を上回っており、家計収支で見ても年々不足額が拡大しています。
また、未発表の2024年の消費支出も、コメなどに代表される物価高騰もあり、さらに増えるかもしれません。物価の上昇から年金の改定まで1年以上のタイムラグがあり、明確な対比はできませんが、年金の増額以上に生活費が増える可能性がある点には注意が必要です。
物価上昇に備える老後対策はあるのか
年金が増額改定されても、物価の上昇はそれ以上になるため、老後の収支はむしろ悪化することが懸念されます。さらに、物価が上昇するインフレ時には、老後に備えて準備した資産も価値が目減りしてしまうかもしれません。
では、このようなインフレ時の老後資金対策にはどのようなものがあるのでしょう。まず、考えられるのは、働き方を見直して少しでも長く働くことです。
長く働けばそれだけ年金以外の収入を得る期間が長くなり、老後の収支は改善します。また、働いて給与があれば、賃金上昇の恩恵を受けたり、将来もらえる年金受給額が増えたりする効果もあるでしょう。
また、NISAやiDeCoなどを活用し、物価上昇率以上の利回りで運用できれば、老後資金の確保に加え、資産の目減りを防げます。もちろん、投資には元本割れのリスクがありますが、まだ40代であれば20年程度の運用期間を確保することも可能です。長期・積立・分散といった投資を心がけて運用すれば、対策として有効かもしれません。
ほかにも、退職金や貯蓄を活用し、年金を繰下げ受給する手法もあります。繰下げ待機している間は年8.4%という物価上昇に負けない率で受給額を増やせます。日々の生活費の節約なども含め、これら複数の対策の中から自らに可能なものを選び、早めに取り組んでいくことが大切です。