夫婦での「老後生活」を計画中。年金受給額が「1.9%引き上げ」なら、今後の生活も少しは楽になりますか? 物価上昇も踏まえ解説
2025年度の年金について「受給額が1.9%引き上げられる」というニュースを見聞きした人も多いのではないでしょうか。中には「このまま受給額が上がってくれたら、老後の生活も楽になる」と思った人もいるかもしれません。   そこで本記事では、ここ数年の年金額の改定状況と、実際の生活費の変化を見比べて、生活がどう変わるかシミュレーションします。物価が上昇している際の、年金以外の老後資金対策についても紹介しますので参考にしてください。

▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?

年金額の改定はどのように行われるのか

来年度は受給額の水準が上がる年金ですが、どのようなルールで変動するのでしょうか。実は年金は単純に毎年上がるわけではなく、前年の物価や賃金の変動率に応じて改定されます。つまり、時間差はありますが、物価や賃金が上がらないと年金も増えません。
 
さらに、「マクロ経済スライド」と呼ばれる、公的年金加入者総数や平均寿命の伸びなどを勘案して設定される「スライド調整率」が、物価や賃金の伸びから控除されます。そのため、計算上は、実際の物価上昇よりも低い水準でしか年金は増えないのです。
 
実際に、先日発表された2025年度の年金額の改定率は2024年度比1.9%の上昇ですが、前年の物価変動率は2.7%で、物価のほうが0.8%も高い上昇率になっています。ちなみに、2024年度は前年の物価変動率3.2%に対し年金は2.7%、2023年度は前年の物価変動率2.5%に対し2.2%(新規裁定者)しか伸びていません。このことからも、年金の増加は物価上昇に追いついていないことが分かります。
 

老後の生活費はどのように推移しているのか

では、ここ数年の物価上昇で老後の生活費はどうなっているのでしょうか。図表1に、総務省統計局の家計調査から「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」の月平均消費支出と、生活費の不足額の推移をまとめてみました。
 
図表1

2021年 2022年 2023年
消費支出月額 22万4436円 23万6696円 25万959円
非消費支出月額 3万664円 3万1812円 3万1538円
月額支出合計 25万5100円 26万8508円 28万2497円
対前年比 5.2%増 5.2%増
収入に対する不足額 1万8525円 2万2270円 3万7916円