遺失物法の落とし物の謝礼の決まりには罰則規定がなく、仮に落とし主が謝礼の義務を果たさなくても警察に罰金を科されたり、逮捕されたりすることはありません。警察は落とし物の受理や返還の業務を行いますが、謝礼の有無や金額には介入しません。
拾い主がどうしても謝礼がないことに納得できなければ、裁判所に提訴するという方法もあります。
実際、過去には43万円が入った財布を警察に届け出たのにお礼も連絡もないとして、大阪市西区に住む男性が報労金の支払いを求めて大阪簡易裁判所に提訴し、落とし主が7万円を支払うことで和解が成立した例もあります。
ただ、裁判をするには訴訟費用の支払いや手続きにかかる労力などの問題があり、数万円の和解金を得る手段として妥当とは言い切れません。
「お礼がないなら」と拾得物を届け出ないとさまざまなペナルティがある
財布を拾った際、「どうせお礼がないなら警察に持っていかなくても良いのでは? 」と思ってしまうかもしれませんが、財布を拾ったのに警察に届け出ないと、拾い主側にさまざまなデメリットがあります。
刑法では「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する」とあります。つまり、拾った財布を警察に届け出ないと、最悪の場合は遺失物横領とみなされ、懲役刑になるかもしれません。
また、落とし物を拾った場合、拾った日から7日以内に警察署に届け出ないと拾得者としての権利を得ることができません。
例えば「お礼をもらえないこともあると聞くし、後でいいか」と、拾った財布を警察に届けないまま自宅に置いておくなどすると、お礼を受け取る権利を得られなくなるだけにとどまらず、罰則が科される可能性まであります。
まとめ
落とし物の落とし主は拾い主に拾得物の5~20%程度を「報労金」として支払うことが義務付けられていますが、罰則規定がないので、落とし主が報労金を受け取れない場合もあります。
親切心で届けたにも関わらずお礼がないとなるとモヤモヤする気持ちは理解できますが、お礼に過剰に期待せず、落とし物を拾った際には警察に届けるなど適切な対応をとりましょう。
拾ったものをしばらく家で保管しておくなどの行為は遺失物等横領に該当する可能性があるため、間違っても行わないようにしてください。また落とし主は拾い主の親切心に感謝し、できる限りの対応を取ることが望ましいと言えるでしょう。