退職金制度がある場合、退職者が出ると財政状態に関係なく資金を準備しなくてはなりません。複数の退職者が出た場合、資金繰りが悪化する可能性もあります。確定給付企業年金制度を利用していても運用結果によっては、不足分を支払う必要が生じます。
 
会社が退職金制度を設けないのは、管理の手間がかからずコスト削減になるためだと考えられます。
 

退職金制度がない場合の従業員側のメリット・デメリット

退職金制度がない場合、従業員側にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。考えられるメリットは以下の3点です。

●給与や賞与など報酬面の基準が高めの会社が多い
●退職金をあてにせず老後の資金を計画する意識がもてる
●退職金に関する手続きが不要

退職金制度がなければ、会社側はその分の資金を準備する必要がないため、その分同規模の会社よりも給与や賞与の水準が高い可能性があります。また、退職金を受け取るための諸手続きが不要となる点もメリットです。
 
一方で、退職金制度がない場合のデメリットは以下の通りです。

●老後の資産形成の計画・実施が必要
●家族への万が一の備えを用意しなければならない

退職金制度があれば退職直後やしばらくの生活費は確保できますが、なければ生活費のねん出をしつつ、貯蓄や資産運用する必要があります。また、退職金制度には自分が死亡した場合の死亡退職金の役割もありますが、退職金制度がなければ備えの必要性を早いうちから意識し準備が進められるでしょう。
 

退職金制度を設定していない会社は全体の約24.8%

厚生労働省実施の「令和5年就労条件総合調査概況」によると、退職金制度を設けていない会社は全体の約24.8%でした。退職金制度の有無と企業規模は比例しており、規模が大きくなるほど制度を設けている会社の割合は多くなっています。
 
退職金制度がない場合、老後の備えはすべて自分で行う必要があるため、早い段階で家族と相談したり専門家に相談したりするといいでしょう。
 

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