ラシク・インタビューvol.141

ソーシャルアクティビスト 平本沙織さん
株式会社マモル 代表 隈有子(くまゆうこ)さん
株式会社ノヴィータ 代表 三好怜子さん

突然ですが”姓”について(特にビジネスネームについて)、みなさんはどの様に考えていますか?

旧姓のまま続けている方、転職を機に新姓に変えた方、新姓に変えたけどやっぱり旧姓に戻された方…… タイミングやきっかけは色々ありますが、その変化や経緯について聞いてみると、考え方も選び方も千差万別。 選択的夫婦別姓の声も高まる中、赤裸々に語ってもらいました。前後編でお伝えします。

<座談会メンバー紹介>

右から

  • 結婚しても旧姓 → LAXIC運営会社ノヴィータ代表 三好怜子(新姓は野間)
    ・旧姓~新姓 → ソーシャルアクティビスト 平本沙織さん(旧姓は神田)
    ・新姓~旧姓 → ITベンチャー マモル代表 隈有子(くまゆうこ)さん(新姓は齋藤)
    ・結婚してから新姓 → フリーライター 飯田りえ(進行役・旧姓は田中)

ずっと旧姓、新姓、途中で変更…それぞれの理由、それぞれの視点

編集部:まずは現在のビジネスネームを選択した経緯を教えてください。ちなみに私は結婚を機に心機一転、新姓でフリーランスとして活動をスタートさせたので、姓についてそこまで考えてないタイプです。あと、今回の座談会は姓ではなく愛称で進めさせていただきますね。

三好怜子(以下、怜子さん):ずっと旧姓のままです。子どもを産んでもどんな状態でも、とにかく仕事は続けたいと思っていたので、新姓を名乗る意識は最初からありませんでした。ちなみにノヴィータにいる3人の役員は2人女性で1人男性で、偶然にも全員旧姓で仕事していて新姓で登記しているという、珍しい会社ですね(笑)

編集部:珍しいですね! 会社の雰囲気も関係しているのでしょうね。

平本沙織さん(以下、さおたん):男女共に姓の変更を経験した人がいて、その上でみんなが旧姓を使い続けている、その状況がフラットでいいですね。

怜子さん:一般的には結婚するとビジネスネームも新姓に変える方も多いかもしれないのですが、私に言わせれば「そりゃ、旧姓でしょ」と。名前を変えてしまうと、これまでの経歴や仕事が繋がらなくなる場合もあるので。

編集部:さおたんはビジネスだけでなく、ソーシャルアクティビストとしての個人の活動もありますが、旧姓から新姓に変えたそうですね。

さおたん:婚姻届を出した6年前に遡りますね。二人で新しい家庭を作る時(私が26歳の時、夫は24歳)、ライフプランを確認する中で、苗字についても一応、確認した記憶があります。でも、その時はお互い”女性は夫側の姓になる”と言う一般常識に疑問を持ちませんでした。結婚前の挨拶の時も、私も親も、よっぽどの事情がなかったので、姓について確認はしませんでした。結婚の話がこじれても嫌だし。その後、私は自分の名前を塗り替えていく作業があり、その中で「神田沙織がいなくなっちゃう」という寂しさを常に感じていました。

編集部:以前、取材を受けていただいた時は神田沙織さんでご紹介していましたね。ビジネスネームで旧姓を残した?

さおたん:個人のプロジェクトは旧姓で活動していました。アパレルの仕事をしていた時はパブリックとして新姓、個人プロジェクトの「ものづくり系女子」(製造業から世の中へ3Dプリンタなどのテクノロジーを発信する)は旧姓…… と使い分けていたのです。その後、アパレルを辞めて夫と起業した時はビジネスでも旧姓に戻しました。取材してもらった時は、ちょうどその頃でしたね。

編集部:最近の記事では平本沙織さんでお見かけしますが、それはどうして?

さおたん:今年に入って、ソーシャルアクティビストとして活動する中、メディアに取り上げてもらう機会が増えました。その中で(特に新聞社は)「戸籍名を教えてください」と聞かれます。それも記事の内容が、家族の話だったりすると夫と子どもは”平本”、私は”神田”となる。「事実婚ですか?」とか毎回聞かれても説明するのも面倒だな…… となり、結果的に平本沙織で活動することを受け入れることに。それでもやっぱり旧姓も残したいので、名刺にはアルファベットでSaori Kanda Hiramotoと入れています。

一同:そういうことで新姓だったんですね。なるほど。

さおたん:過渡期の今だからこその話ですよね。

編集部:有子さんはここ1ヶ月前に新姓の”斎藤“から旧姓”隈“に戻されましたね。これまた、どうしてですか?

隈有子(くまゆうこ)さん(以下、有子さん):実は、自分の旧姓である”隈”が好きじゃなかったんです。今では隈研吾さんのおかげで認知されましたが、それまでは「すみさん」と読まれたり「熊さん」と書かれたり。「クマです」と答えると「え? 本名は?」「それってハンドルネームですか?」とか、毎回聞かれるのです(苦笑)

一同:それは困るかも!(笑)

有子さん:そんな私にとって、夫の姓である”齋藤”はごくごく一般的で、とても惹かれる名前だったのです。だから転職を機にビジネスネームを「齋藤有子」に変えました。でも転職がなかったら変えていなかった、と思います。

編集部:この度、また旧姓の”隈”に戻したのはどうして?

有子さん:単に”さいとうゆうこ”がありきたりすぎて(苦笑)

一同:えー! そこ?(笑)

有子さん:FBは見つからない…… は日常茶飯事。マモルというベンチャーを立ち上げたのに「なんだ? そのインパクトのない名前は」と夫をはじめ、ビジネスの助言をしてくれる周囲の人たちがみんな言うのです。「隈有子の方が、絶対いい」って。

一同:確かに、使えるものは使った方がいい(笑)

有子さん:なので気軽な気持ちで変えました。マモルの仕事は”隈”、以前からの仕事の時は”齋藤“と、二つの名前を併用しています。久々に連絡する人には「(齋藤か隈か)どっちだっけ?」って混乱しますが……

ビジネスネームを変えて実感、名前を変える=結婚or離婚に直結

編集部:変えたことで周囲の反応はどうでした?

有子さん:なんだか、すごく気を使ってくれます(笑) 気軽な感じで変えたのに、離婚と思った方も多かったみたい。みなさん多くは聞かず、変更を伝えたその日からメールでもなんでも、きっちり「隈さん」って書き換えてくれます。

怜子さん:ビジネスネームとして名前を”選択した”という認知度が低すぎるのと、新たに事実婚などの認識も増えてきていますからね。何よりも、離婚=マイナスイメージが根強い……

さおたん:そうそう、日本って苗字を変える=結婚or離婚に直結してしまう。同じ名前の変化なのに、1回目の変更(結婚)はポジティブだけど、2回目の変更は勝手にネガティブに思われてしまう。

有子さん:あと仕事がいじめの課題解決なので「親子関係がわからないように配慮でしょ」と思った方もいらっしゃいました。正直、そこへの配慮ではなかったのですが(苦笑) 今から5年ぐらいすると、きっと旧姓の併用も当たり前になっている時代が来るのではないでしょうかね。