定年退職が近づいてくると、退職後の生活資金について悩む人も多いようです。不安なく老後の生活を送るためには、早い段階から資金を備えておくと安心でしょう。ここでは、定年退職後の収支について家計の実態を知り、老後の生活をシミュレーションした上で、老後資金の備えとして活用できる外貨預金についてチェックしてみましょう。

定年退職後、メインの収入が年金だけでは赤字に

定年退職後の生活は赤字?足りなくなる分はどうすればいい?
(画像=rummy-rummy/stock.adobe.com、UpUより引用)

実際の老後の生活ではどのような収支になるのでしょうか。総務省統計局が毎年調査している「家計調査(家計収支編)」の2019年版を参考にシミュレーションしてみましょう。

この調査によると、定年退職後の高齢夫婦無職世帯(夫 65 歳以上,妻 60 歳以上の夫婦のみの世帯)の場合、平均的な実収入は、月に約23万8,000円と報告されています。その内、年金など社会保障給付は 約21万7,000円と、実収入の約91%を占めており、定年退職後のメインの収入が年金であることが分かります。

一方で毎月の平均的な支出額に関しては、全体で約27万1,000円と発表されており、不足分は月々約3万3,000円になることが指摘されています。年金だけの収入では、生活費が赤字になってしまうようです。

不足分は、年金以外の収入や貯蓄の取り崩しで賄うことになりますが、月平均で3万3,000円の赤字なので、年間では約39万6,000円もの不足を補わなくてはなりません。

想定外の出費も加味して老後資金を準備しよう

定年退職後の生活は赤字?足りなくなる分はどうすればいい?
(画像=sharaku1216/stock.adobe.com、UpUより引用)

定年退職後の生活をシミュレーションする上で、毎月の収支の実態を知るだけでなく、想定外の出費が発生する可能性があることも知っておきましょう。とくに病気で治療が必要になった場合、医療の内容によっては公的医療保険の対象から外れる「先進医療」を受けることもあります。

たとえば総医療費100万円の内、先進医療にかかる費用を20万円としましょう。保険給付分にあたる80万円の7割は各健康保険制度から給付されるため、患者の自己負担額は3割で済みます。しかし、先進医療にかかる部分は公的医療保険の対象から外れるので、20万円全額自己負担しなければならないのです(厚生労働省「先進医療の概要について」より)。

介護が必要になることも 

また、老後に介護が必要になる可能性も充分検討しておいたほうがよいでしょう。公益財団法人生命保険文化センターが行った2018年「生命保険に関する全国実態調査」によると、平均的な介護期間は、4年7ヵ月という結果が出ています。

介護費用として、この調査からは一時的な費用(住宅の改造や介護用ベッドの購入など)の合計は平均69万円、月額では平均7万8,000円という結果が報告されています。医療費や介護費などが必要になることも加味した上で、老後資金の準備を始めたいですね。では、具体的にどう準備したらいいのでしょうか?

預貯金や保険で備える

まずは家計を見直し、定期的に預貯金を増やしていくことから始めましょう。指定した一定金額を毎月自動振替で入金できる積立預金や財形貯蓄などを利用すれば、預貯金のし忘れも防げるのではないでしょうか。ボーナス月には多めに入金するなど、こまめに老後資金を貯めていきたいですね。

積立貯金は、目標金額と積立終了日を自分で設定した上で、毎月指定の金額を積み立てていく方法です。普通預金から定期預金に自動で振り替えられるので、自分でお金を動かす手間がかからず便利。金融機関によっては、1,000円から毎月の積み立て金を設定できる場合もあります。家計に負担が少ない少額から始めてみてはいかがでしょうか。

財形貯蓄は、勤務先を通じて勤労者が行う給与天引貯蓄のことを指します。一般財形、住宅財形、年金財形の3種類がありますが、いずれも毎月の給料やボーナスから一定額が自動的に貯蓄に回されるシステム。手元に現金があるとついつい使い過ぎてしまうものですが、給料から天引きされる形で貯蓄ができるので、無理なく預貯金を継続できるのではないでしょうか。

また、公的保険と併せて民間保険への加入を検討するのもひとつの方法です。

厚生労働省の「令和元(2019)年 医療施設(動態)調査・病院報告」によると、平均在院日数は27.3日。また、公益財団法人生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」では、入院中の1日あたりの自己負担費用に関する平均金額は2万3,300円という結果が出ています。

自己負担費用の内訳は、治療費や食事代、差額ベッド代だけでなく、衣類や日用品、交通費なども含む金額ですが、入院日数が増えればそれだけ金額は上がるでしょう。

民間の医療保険には、このような、公的な医療保険ではカバーしきれない入院費用や先進医療にかかる費用などを補ってくれるものがあります。

その他、介護にかかる費用を公的介護保険のみで賄えるか不安な人は、民間の介護保険に加入しておくことで、保険契約の定めている所定の要介護状態になった場合に、現金の給付を受けられるプランもあります。

保障内容を確認したうえで、自身のニーズに合った保険を選ぶと良いでしょう。

より豊かな老後を送るためには潤沢な資金が必要

定年退職後は、現役時代にはなかなか時間がとれず取り組めなかった趣味の世界を深めたり、夫婦で海外旅行へ出かけたりと、悠々自適な生活を送りたいと思っている人も多いでしょう。また、子供の結婚や孫の進学などのお祝いごとで、まとまったお金が必要になる場合もあります。

公的年金だけでは、生活費を賄うだけでも不足すると言われているので、老後の人生をより豊かなものにしていくためには、今ある収入の中から預貯金や保険で備えるだけでは、まだ足りないかもしれません。

備えるだけではなく「増やす」選択肢も

想定外の出費も考慮すると、老後の生活費用を預貯金などで備えるだけでなく、今のうちからお金を「増やす」選択肢も検討しておく必要があるのではないでしょうか。投資信託や株、外貨預金などの資産運用を通して、潤沢な老後資金を準備するためのアクションを取り入れると良いでしょう。