どのタイミングで外貨に投資すべきか
これから外貨投資を行う人にとっては、投資タイミングは重要になります。
なぜなら、どんな商品でも安いときに買うのがベストだからです。外貨が最も安い円高に大きく振れたときに投資するのがベストということは当然ですね。
例えばオーストラリアドルのこの15年くらいのチャートを見ると、大雑把に55円から105円くらいで動いています。ですから50円台で買えればベストです。
しかし、次にいつ50円台となるのかは正確にわかりませんし、50円台に来なければ買わないとなると、50円台に来るまでに得られたであろう利息収入を失うことになります。
これから5年待つことになり、豪ドル金利が平均6%で運用できるとして、投資予定金額の33.8%ものリターンを失うことになってしまいます。
長期での資産運用では為替リスクは存在しないのですから投資してしまえばいいのですが、高いときに買うと当然、買うことができる外貨金額が小さくなりますから、得ることができるリターンも小さくなります。
安定性、収益性を求めるなら、オーストラリアドル、米ドルの代替通貨としてのカナダドル
豪ドルは一応先進国として扱われていますが、私は先進国と新興国の間の中進国くらいだと思っています。
数年以上前くらいまではオーストラリアは新興国のようにインフレ率が高く、通貨価値の下落のリスクがありました。しかし、近年ではRBA(リザーブ・バンク・オブ・オーストラリア、オーストラリアの中央銀行)の金利操作、為替操作の巧みさもあり、インフレは適度に落ち着いています。
為替の変動性が大きいという難点がありますが、資源の裏付けもあり、財政収支、経常収支とも若干のマイナスではありますが安定性があります。
同じように南半球にあり豪ドルと似たような動きをする通貨としてニュージーランド・ドルがありますが、この国は資源の裏付けもなく、経済規模も小さ過ぎますし、豪ドルに投資していたらニュージーをポートフォリオに組み込む必要はないでしょう。
資源国通貨ということではカナダ・ドルも候補に上がります。オーストラリアの南半球に対して北半球のカナダと分散するのもいいかもしれません。
やっぱりユーロを保有すべき
豪ドルを持つとしても、オーストラリアの経済規模を考えたときにそれだけでは心許ないです。そこで米ドル以外に、主軸となる通貨はないかと考えると、どうしてもユーロを選択肢として入れざるを得ません。
既に世界各国の外貨準備高の第二位、2009年時点で27.4%となっており、米ドルの62.1%と比べるとまだまだ小さいかもしれませんが、一定の存在感を示しています。
国際債の発行残高に占めるユーロ建ての比率は2008年末時点で47.8%と米ドル建を上回っています。浮沈はあるでしょうが、主要通貨の中心の地位を保持していくと思います。
ギリシャ問題に端を発してユーロが急落しましたが、これはむしろ購入のチャンスと捉えるべきでしょう。
人によっては、ユーロは消滅すると言っている人もいますが、この何十年かのEU圏の国々の努力がそう簡単に水泡に帰すとは思えません。
EU首脳たちは、通貨統合によって得られる利益と負担する費用とを比べた場合、費用の方が大きいとは考えていないでしょう。
金利面では、現在ほとんど金利が付きませんが、経済が正常な状態になれば4%程度の金利水準になると思っております。
まだ数年の時間がかかるかもしれませんが、実際、金利水準が上がってしまったときにはユーロは高くなってしまっているでしょうから、今から徐々に仕込んでおくべきでしょう。
米ドルはどうする?
米ドルについては凋落していく通貨であり、長期で保有すべき通貨ではないと思っています。
しかし、米ドルは依然、世界の基軸通貨であり、外貨準備高の半分以上を占めています。米ドルを除いてポートフォリオ運営はできないということも、ある意味事実です。
また、外貨を持つということは、その通貨を現地で使うという用途もあるわけですから、米ドルは米国本土のみならず、ドル圏であれば使えるので重宝します。
米ドルをずっと保有し続けた場合、必ず減価し損をし続けてきました。生命保険会社を始めとした機関投資家は米債を買い続けています。それは、為替利益を得るためではなく、金利差を得るためでした。
そう、外貨投資は、この金利差を享受することが目的であるべきなのです。長期の資産運用では為替リスクが存在しないのですから、金利差のある通貨に投資すべきなのです。
従って、米ドルに投資できるタイミングというのは、この金利差が拡がり始めるときなのです。金利差が拡大する期間では、通常ドル円は高くなります。
30年スパンでドル円のチャートを見ると趨勢的に下落し続けていますが、10年スパンで見るとドル円が上昇している局面が数年単位であります。
こうしたタイミングを見計らって、米ドルを保有するということは可能でしょう。しかし、こうした米ドル投資も考慮する投資家は、数千万円以上、億の大台の金融資産をお持ちの方であって、1000万円程度の投資家の方であれば、何も米ドルに分散投資する必要はなく、もっと金利差のある通貨へ重点的に投資した方が資産を大きくできると思います。
まずは、お金の引越しから
さて、ここまでは資産運用という観点から外貨投資について書いてきましたが、グローバル化が進む中で、ヒト、モノ、カネが世界中を自由に行き来しています。
あなたが将来外国に住むかどうかは価値観や趣向によるでしょうが、リスク分散という観点から、投資の分散投資だけでなく、お金のある場所、所在地も分散するということも考える必要があるのではないかと思います。
これまでは日本経済が強い時代が続いてきましたから、円が最も強い通貨であり、その円を保有するには、日本という国内にお金を置いておけばよかったのです。
しかし、この年の日本経済の低迷により、世界第二位の経済大国の地位も中国に奪われ、世界の中心会議がG7からGに移行しつつある中、世界における日本の発言権も影響力も小さくなっています。
日本のソブリン格付が最上級のAAA(トリプル・エー)からダウングレードされて久しいですが、元の格付を取り戻せる見込みは全くないどころか、財政規律を取り戻す政策を実施しなければ、更なるダウングレードをすると国際格付機関は発表している有様です。
実際、日本の財政赤字規模はGDP比200%に達しようとしており、数年後には260%にも達するという試算も出ています。あのギリシャですらこの比率は110%を上回った程度であり、空前絶後の数字と言わざるを得ないでしょう。
日本国債が暴落せず低金利を保っていられるのも、日本国債は世界的に全く魅力がなく(販売する努力もあまりしていませんが)、海外投資家はほとんど買っておらず、日本の機関投資家や個人投資家の資金で買い支えられているようなものだからです。
つまり、日本の命運の担保として、私たち個人の金融資産1400兆円余りが人質になっているのも同然なのです。言い換えると、既に私たち個人は、日本にお金を置いたままにしているならば、無一文と同じ状態なのです。
その拘束から逃れるためには、海外へ自分の資金を移すしか方法がないのです。
海外、特に先進国の銀行にお金を預けるということは、その国の保護下に入ることと同義なのです。その証拠に、非居住者の預金に対しても、金融機関破綻の際には、預金保護が行われる国がほとんどです。
今は何も問題なくても、「信用リスク」というものはいきなり顕在化してしまうものなのです。そうなってからでは遅いのです。
国内の銀行(外国銀行も含む)に外貨預金をしているから、そういったリスクは回避されると思ったら大間違いです。
そういった信用危機になった場合は、国内に住所を持つ銀行は、日本の金融庁の命令下に入ることになりますから、預金封鎖とまではいわなくても、銀行取引に制限がかかることもあり、自分のお金を自由に扱えなくなる可能性だってありうるわけです。
例えば、海外送金に制限がかかったり、外貨預金の円転の停止などの超・法規的な措置が取られることだってありうるわけです。
そうした制限がなくても、こうした信用リスクが顕在化したときには、国民が皆一斉にお金を海外に移そうとするでしょうから、円安が極度に進んでしまうでしょう。
ですから、転ばぬ先の杖ではないですが、先んじて、あなたの金融資産の一部でも“引越し”しておくのもリスク管理として重要ですね。
非居住者でも銀行口座を開設することができる国は限定的ですが、オーストラリア、香港、シンガポール、カナダの一部の銀行などでは、本人が行けば口座を開設できます。
機会があれば各国に行って口座を開設して、お金の引越しの準備をしておくと良いでしょう。
こうしたお金の引越しの観点からは、収益面ばかり見ないで、リスク分散の観点で様々な通貨で保有しても良いでしょう。銀行によっては、所在する国の通貨だけではなく、様々な通貨の預金ができるマルチ・カレンシー口座なども開設できますので、是非研究してみてください。
こうした海外への預金に対して、金融庁が締め付けを厳しくしています。100万円相当額以上の海外送金については、金融機関から金融庁に調書が送られ、すべてを把握されています。
でも、こんなことにびびる必要はありません。彼らは表向き、税金を補足することしかできません。日本に居住する以上海外での所得についても税金を支払わなければなりませんが、お金そのものの移動は自由なのです!
ミセス・ワタナベは再来するか
ミセス・ワタナベとは、主婦がFXで数億という利益を上げたにもかかわらず申告せず巨額脱税で逮捕された事件がありましたが、海外では、日本人の主婦までもが大きなFXのポジションを持って取引しているということが話題になりました。
そうした主婦を総称して、ミセス・ワタナベと呼ばれるようになりました。
このミセス・ワタナベがFXで荒稼ぎしたと思われる2004年後半から2007年後半までの為替相場は、ほぼ一本調子の円安相場が続いておりました。従って、FXでレバレッジを大きく効かせて、円売りポジションを大きく持っていれば、極端な話、誰でも大儲けができた時期でした。
その後、2008年頃からは上昇・急落を繰り返し、相場の起伏が激しくなり、リーマンショック後は大暴落(円は急騰)するなど、レバレッジを極大化しているような投機家は大きな損失を出すことになり、ポジション・マネジメントがしっかりできていないとなかなか利益を上げることが難しくなりました。
ですから、現在ではスキャルピングは極端ですが、デイトレード的にこまめにトレードする手法が主流となっているようです。
しかし、デイトレードのような取引はタイム・コンシューミング(時間浪費)なものであり、それが仕事や趣味でもない限り、なかなか時間を取るのが難しいでしょう。
特に、本書を読まれているあなたであるならば、あくまでもマネーは手段であり、夢を実現するために、自分らしくあるために生きていたいものです。
ですから、一度ポジションを持ったらそのまま長期でキープできるような投資が望ましいことでしょう。
そのための方法論を本書で詳しく論じていますが、FX取引で、ミセス・ワタナベのように、レバレッジを効かせてある程度大きくポジションを持って利益を増やせたら、それはそれで夢に必要な資金に一歩近づくことができるでしょう。
諸星きぼう(もろぼし・きぼう)
投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンで、デリバティブ・トレーディングを実践、金融最先端に身を置き、世界をつぶさに見てきた。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため、投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメントサロンを運営。ビジネスマン、経営者から資産数10億円以上のビジネスオーナーまで、数多くのクライアントに投資アドバイスを行っている。DANと呼ばれ、1年の半分近くは海外で過ごし、「楽しく」「自由」に生きて、「豊か」になることを自ら実践し、そうした生き方を皆ができるように、「お金に働いてもらう」方法を説いている。
提供・ZUU online
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