節約はしない

無駄遣いをしてはいけません。しかし節約をする必要もありません。

お金持ちの人で節約することに躍起になっている人はいませんし、徹底して節約をしている人にお金持ちはいません。

節約することを否定するわけではありませんが、ストレスを感じるような節約はやめた方が良いです。

家の部屋に電球が3つあるところを1つしか使わないとか、暑いのを我慢してクーラーは使わないとか、一時も休まる暇がありません。しかも努力の割に、月数百円程度料金が浮くだけで効果は著しく低いです。

ストレス解消だと言って、ちょっと高めの洋服を買ってしまうだけで、数本余分にお酒を飲むだけで、ちょっと贅沢に外食をするだけで、結果チャラどころか、マイナスになってしまいます。

付き合いの場である飲み会を、節約だと言って断るのも好ましくありません。数千円のお金とプライスレスな人とのつながりを天秤にかけてみてください。

お金を使うことに関して、守りの姿勢になってしまってはいけません。お金は貯めるものではなく、使うものだからです。金遣いを控えることに慣れてしまうと、本当にお金を使うべきポイントでも臆してしまうようになります。

本当に節約すべきものはお金ではなく、時間と労力です。では時間と労力はどう節約すればいいのか。その方法はお金を使うことです。 面倒を省くためにある、というのがお金の存在の第一義です。スーパーで野菜を買 うのは野菜を育てる手間を省くため、電車を使うのは歩く手間を省くためです。

余談ですが、もしお金で解決できない手間があったら、そこにはビジネスチャンスが転がっているはずだと思いませんか。そう考えれば、お金を使うことでしか本当の面倒は見えてこないはずです。お金を使うからこそわかること、お金を使わないと見えないものがあることをお金持ちの人は知っているのかもしれません。

資産価値で判断できる

絵画、時計、金など、お金持ちの贅沢品というイメージがつきまとうものが多々ありますが、お金持ちの人たちはお金があり余っているからそれらにお金をつぎ込む、そんな短絡的な考え方をしているのではありません。資産価値があるかどうかで判断しています。

絵も時計も金も、時間とともに価値が変動する可能性はありますが、基本的にお金と交換可能です。資産価値があるものとはこういうものを指します。

一方、資産価値がないものとは、一度お金を出して買ってしまったら消費するしかないもののことです。食べ物、文房具、服......などです。

あるお医者様は、不動産や株に何千万円もの投資をしています。それだけの資産を持っているのに、お金持ちのステータスであると思われがちな車を、10年以上買い替えずに乗り続けています。車は使えば使うほど劣化していくだけで、資産価値はないからです。

資産を増やすためには長い時間がかかります。ですから、失敗したとわかったときには時既に遅し、という可能性もあるわけです。失敗しないようにするためには、今どうお金を使うべきか、その判断を誤らないようにしなければなりません。

高度経済成長期からバブルが弾ける前あたりまでは、働きながら給与天引きで自社株を買う、というのがお金持ちへの王道でした。SONYでもPanasonicでも大きい会社の株価はどんどん膨れ上がっていきました。

しかし、今はどこの会社がいつ潰れるかわからない時代です。成長著しいネットベンチャー企業の株を買って一攫千金を狙うにしても、あまりにもリスクが大きすぎます。リスクをとらなければお金持ちにはなれないとは言っても、実際損失を被ってしまったときに首が回らなくなるほどの、身の丈に合わないリスクはとるべきではありません。

ですから、お金持ちになるためには、物事の価値を見極める目と、10年20年と時間をかけて資産を増やす心構えが必要です。

心で会計しない

「心の会計」という、行動経済学の専門用語があります。例を出せば、聞いたことがあると思う方も多くいることでしょう。

あなたはある万年筆を買おうと決めました。とある文房具店Aに行くと、それが5000円で売っています。しかし情報によれば、その文房具店Aから100メートル行ったところにある別の文房具店Bで、同じものが2000円で売っているそうです。文房具店Aで高く買うのと、少し足を伸ばして文房具店Bで安く買うのとどちらを選びますか。アンケートをとるとBで買うことを選ぶ人が圧倒的に多くなります。

またあるとき、スーツを買いに百貨店Aに行きました。狙いのスーツは9万8000円。しかし聞くところによれば、100メートル先の百貨店Bでは9万5000円で同じスーツが売っているそうです。今度は3000円高くてもAで買う人が多くなります。

万年筆もスーツも値段の差額は3000円なのに行動に違いが出てきます。同じ差額でも「心で会計」することで、まったく異なる数字に見えてしまうのです。

資産運用でも「心で会計」してしまったために損切りできていない人をよく見ます。例えば、1万円で買った株が9000円に値下がりすると焦るのに、その株が値下がりを続け、5000円から4000円になってしまった時にはまったく焦りを見せないような人が多いです。でも、よく考えてみれば、前者の値下がり率が10%なのに対し、後者の値下がりは20%と笑ってはいられない状況です。

ものを売る側もこの心理を利用してきます。ホテルで売られている飲み物が2、3割高く値段設定されているのに買ってしまうのも、カーディーラーが勧めてくる使いもしない付属品を買ってしまうのも、心で会計しているからです。売る側を責めるわけにはいきませんし、商売上手と言うしかありません。ですから、買う側がしっかりとそれを認識した上でお金を出すかどうか決めなければなりません。

お金持ちの人は心で会計することはありません。数字でお金は表されます。それを客観視できるようにならなければ、お金の使い道を誤ってしまうことになります。

お金を区別しない

「心の会計」を語る際にもう一つ有名な逸話があります。

とある夫婦がラスベガスに来ていました。毎晩カジノにお金をつぎ込むものの負けに負け、財布の中身はすっからかんです。そんな折、夫が部屋にルーレットに使う5ドルチップを見つけ、早々に寝てしまった妻を部屋に残して、5ドルチップを握ってカジノに向かうと、当たりに当たり、気がつけば100万ドルもの勝ちになっていました。調子に乗って次の賭けに、100万ドルすべてをつぎ込みましたが、そこが運の尽き。結果は外れ、100万ドルを失うことになってしまいました。肩を落として部屋に帰ると、目を覚ました妻に「どうしたの」と聞かれ、彼はこう答えました。

「5ドル損しただけさ」と。

5ドル損しただけだね、と聞き流してしまってはいませんか。収支を合わせれば確かに5ドルの損失で済んだことになりますが、一瞬だとはいえ、彼は確実に100万ドルを手元に持っていたのです。ですから、いくら損したのかと問われれば、100万ドル損した、と答えるのが正しいのです。

本来、収入は労力に比例するだけ得られ、支出も労力に比例するように使うものなのに、ギャンブルで得たお金はこの理論から完全に外れてしまいます。「心」が邪魔をしているからです。ギャンブルに限らずとも、苦労もなく得られたお金は湯水のように使ってしまいたくなるものです。

学生の頃、アルバイトで必死に稼いだ2万円は大事に使うのに、おばあちゃんからもらった2万円はすぐに使ってしまったりしませんでしたか。パチンコで儲かったお金はその日のうちに消えてしまいませんでしたか。宝くじで100万円当たったとしたら、まず欲しかった高価なものを買おうと想像したことはありませんか。

お金持ちの人は労働によって得られたお金も、労力なくして得られたお金も区別しません。どちらも大切に使うためのお金であると考えています。過程は無視して、お金そのものの重みを感じられるようになることが必要です。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

 

中桐啓貴(なかぎり・ひろき)

ガイア株式会社代表取締役。山一證券株式会社を経て、メリルリンチ日本証券大手町支店にて個人富裕層へのコンサルタントとなる。退社まで常に1500人中トップ10の成績を残し、最年少でシニア・ファイナンシャル・コンサルタントに昇進。留学のため退社し、アメリカ、ブランダイズ大学院にてMBA取得。帰国後、独立系FP会社、ガイア株式会社を設立。

提供・ZUU online

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