見るからにずっしりとしていて、上部にこんがりと焼き色のついたバスクチーズケーキ。スペインとフランスの国境にあるバスク地方独特のチーズケーキは、近頃日本でも人気です。

昨年7月に白金にオープンした『ガスタ』もそんなバスクチーズケーキの専門店。しかも、美食の街として知られるサンセバスチャン(スペイン・バスク地方の都市)のあの名物チーズケーキと同じレシピで作られているというのですから気になりますよね!

そういうわけで、お店にお邪魔して大人気のチーズケーキについて詳しくお話をうかがってきましたのでご紹介したいと思います。

 

『ガスタ』はバスク語で「チーズ」

白金高輪駅から徒歩3分、赤錆のアーチがデザインされたファサードに大きなバスク文字で『GAZTA』と壁に描かれた一際目を引くお店が『ガスタ』。一見、洋菓子店らしからぬモダンな佇まいはバスクのアーティストによるデザインだそう。ちなみに『ガスタ』とはバスク語で「チーズ」という意味です。

『ガスタ』はバスクチーズケーキのみを販売するテイクアウト専門のお店で、商品は直径8センチの1人用と、6~8人用の直径15センチの2種類のみ。なんとも潔いラインアップです。

入店すると正面には2種類のチーズケーキがずらりと並んでいて圧巻。そして、左手の棚にもたくさんのチーズケーキが並べられゆっくりと冷まされています。

『ガスタ』のバスクチーズケーキは、こんがりと焼き上げられた見た目とは裏腹に中はしっとりしていて濃厚。甘さは控えめですが、良質なチーズのミルキーな風味が楽しめます。そして何より、ベイクドでもレアでもスフレでもない、バスクチーズケーキ独特の口の中でとろけるような食感が特徴です。その食感を生み出すためには、じっくりと時間をかけて冷ますことが大切とのこと。

そこで、『ガスタ』では、ケーキを冷ますための特別な棚をオリジナルで作ったそうです。棚板にはケーキの直径に合わせてくり抜かれた穴が空いており、これがとても重要なのだそう。水分の多いチーズケーキをこの穴の上にのせて冷ますことで、唯一無二の味と食感を作ることができるのです。

 

本場の秘蔵レシピを日本で再現

サンセバスチャンのバル『ラ・ヴィーニャ』。観光客や地元の人で連日賑わっています。

『ガスタ』のチーズケーキのルーツは、スペインのサンセバスチャンの旧市街にあります。この街には『LA VINA(ラ・ヴィーニャ)』という有名なバルがあり、そこの名物がずばりチーズケーキ。世界中からこのチーズケーキを目当てに多くの人がやってくると言います。

バル巡りをした後の〆のデザートにはもちろん、まだまだお酒が飲み足りないという人も、甘いものが苦手という人も、そして、もうお腹がいっぱいという人もなぜかペロリと食べてしまう『ラ・ヴィーニャ』のチーズケーキ。おいしいものは別腹というのは世界共通ですね。

 

実は、『ガスタ』のバスクチーズケーキはそんな『ラ・ヴィーニャ』のチーズケーキと同じレシピで作られています。『ラ・ヴィーニャ』は創業1958年から代々家族で営まれており、家族、・親類のみしか厨房に入れないという決まりがありました。よって、チーズケーキのレシピは門外不出でした。

 

しかし、現地でこのチーズケーキを食べて感動した日本人のパティシエが、日本でもこの感動を多くの人に味わってもらいたいという強い想いから、何度もお店に働きかけ、なんとか厨房に入らせてもらってレシピを学ぶことができたのだそう。そして、満を持して『ガスタ』がオープンしたというわけです。

『ラ・ヴィーニャ』でも底に穴の空いた棚にチーズケーキが並んでいます。

 

絶妙な焼き加減でおどろきの食感に

「チーズケーキを作る上で最も気を使うところは焼き加減ですね」とシェフパティシエの戸谷さん。大きなオーブン内部は場所によって焼き加減が異なるので、こまめにチーズケーキの場所を入れ替えなければなりません。取材の途中も戸谷シェフは何度もオーブンを開けては焼き加減をチェックしていました。

焼き上がったチーズケーキをオーブンから取り出すシェフパティシエの戸谷尚弘さん

また、オーブンの設定温度と焼き時間は、その日の気温や湿度によって毎日秒単位で違うとのこと。高さのあるチーズケーキに焼き色をつけるのは特に難しいそう。戸谷シェフのチーズケーキを見る真剣な眼差しにプロの技を感じました。

芳醇でカラメルのようなこうばしい香りとともに焼きあがったチーズケーキは、天板をゆするとぷるぷると揺れます。素人が見ると、まだ火が通っていないのでは?と思ってしまうところですが、この状態からゆっくりと時間をかけて冷まします。そうすることで、しっとりと口の中でとろけるような食感になるそう。大きいサイズは5時間以上も冷ますそうですよ。

 

何と合わせても、どうやって食べてもおいしい!

本場サンセバスチャンでは、バスクチーズケーキはワインと合わせて食べている人がほとんど。バスク地方のワイン「チャコリ」やちょっと渋めの赤ワインともよく合うのです。もちろん、ティータイムに紅茶やコーヒーと合わせていただいてもおいしいですよ。

食べる10分ほど前には冷蔵庫から出して常温に戻すと、よりチーズの風味が楽しめます。ミニカップに入ったオーガニックのメープルシロップは、チーズケーキにかけるとカラメルのような風味が引き立っておいしい!

また、意外に思われるかもしれませんが、チーズケーキに岩塩や胡椒をふりかけるとぐっと大人のデザートになります。ドライシェリーやウイスキーなど、アルコール度数の高いお酒との相性も抜群です。

チーズケーキの賞味期限は製造日より3日間。初日はちょっとやわらかめでしっとり、2日目以降は生地がきゅっとしまって濃厚さが際立ちます。私は2日目、3日目のチーズケーキもとてもおいしいと思いました。

現在、多い時で1日1000個近くも焼いているという大人気のバスクチーズケーキ。2月上旬からは通信販売も開始するそうです。ますます人気が高まりそうですが、白金まで買いに行けなかった遠方の方も購入できるようになるのはうれしいですね。この機会にぜひ本場の味をお試し下さい。

 

■お店情報
バスクチーズケーキ専門店『ガスタ』
住所:東京都港区白金1−14−10 1F(地図)
電話:03-3440-7495
営業時間:9:00~19:00
定休日:月曜日(※月曜が祝日の場合は、翌日火曜日に振替)

 

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