「貯蓄から投資へ」というスローガンが叫ばれるようになって久しく、最近では「資産形成へ」という指摘もある。日本人の貯蓄はいまだ投資へと動き始めていない。日本人はもっと投資を行うべきなのだろうか?投資を行う場合は、初心者でも失敗しないコツはあるのだろうか?
投資をめぐる状況
日本銀行の資金循環統計によれば、2017年9月末時点で、家計の金融資産の51%、実に943兆円ものお金が現預金として眠っている。投資にまわす割合は20%を切っており、諸外国に比べて低いままだ。
多くの日本人にとって、投資はまだ一般的ではない。バブル崩壊の記憶や、最近では仮想通貨のスキャンダルもあって、投資とは怪しいもの、手を出さない方がよいもの、というイメージを持つ人もいるのではないか。
ところがこのところ、変化の兆しも見えてきた。昨年からiDeCo(個人型確定拠出年金)の適用範囲が広がり、今年はつみたてNISA(積立型の少額投資非課税制度)がスタートした。どちらも優遇税制などの仕組みを整えることで、投資の初心者が着実な資産形成を行えるようにするための制度だ。今年に入り、官民をあげた投資普及に向けた動きも活発化してきている。
人生には、結婚費用、子供の教育費、住宅の購入など、まとまったお金が必要になるタイミングがある。さらに、日々の暮らしを送りながら老後の生活や介護などにも備えなければならない。将来の資産形成のためには、今まで投資に縁の無かった人も、投資を始めるべきなのだろうか?
投資で資産は増えるのか?
バブル崩壊後の日本経済は超低金利が続いており、1990年代中頃から現在にかけて、金利は1%未満を推移している。前述のとおり、日本人は金融資産の半分を預貯金として保有しているため、銀行にいくら現金を預けてもほとんど増えなかったことになる。
一方で、個人金融資産の半分近くを投資にあてる米国では、金融危機による一時的な減速はありつつも、着実に資産を増やしてきた。
金融庁は、米国、英国、日本を対象に、1995年から2015年末までの金融資産の推移を公開している。
【参考】「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」(第1回)
これによると、1995年に比べて、2015年末時点での家計金融資産は、日本がわずか1.47倍なのに対して、米国は3.11倍、英国は2.27倍となっている。その背景には運用リターンによる資産推移の違いがあることが見てとれる。
投資の時期や対象によってリターンが人それぞれ異なるのは当然だが、過去のデータをふまえると、全体的な傾向としては、積極的な投資は資産を増やす効果があることがわかる。
日本の財政不安
また人口減少・超高齢化社会の進展による財政逼迫が、日本社会の大きな懸念材料だ。財政が危機的になれば、公的年金や医療などの社会保障が削減される恐れもある。将来、年金が貰えるのかどうか、不安を抱えている人も多いのではないだろうか。
地方自治体の例ではあるが、2007年に北海道の夕張市が実質的に破綻した。行政サービスが削減され、住民の負担は増え、大勢の人が他所の地域に移っていった。もし国家が破綻すれば、同様のことがはるかに大きなスケールで展開することになる。
以上のような背景を考えると、資産のうち一定割合を投資にあて、将来に備えた資産形成を行うことは、多くの日本人にとって良い選択肢だと考えられる。