「鬼滅の刃」とコラボした商品が好調です。出版や映画といった直接的な業界だけでなく、コラボを通じてさまざまな業界へ「鬼滅効果」が波及しています。

今回は、一見「鬼滅の刃」と直接関係がなさそうな企業をピックアップし、特に新型コロナウイルスで低迷していた売上を回復させた3社「ダイドー」「くら寿司」「ヴィレッジヴァンガード」の事例を紹介します。

ダイドー “鬼滅缶”の販売好調

「ダイドードリンコ株式会社(以下ダイドー)」は清涼飲料メーカーです。看板商品は「ダイドーブレンド」などで、いわゆる缶コーヒーが主力です。

缶コーヒーは、コーヒー飲料の中で特に外出中に選ばれる傾向があります。新型コロナウイルスで活動自粛が求められる中、2020年のダイドーの売上は芳しくない状況が続いていました。

ダイドーは2020年秋冬の新商品として、鬼滅の刃とコラボした「鬼滅缶」の販売を実施しました。主力商品「ダイドーブレンド」ブランドに、「竈門炭治郎」など鬼滅の刃キャラクターがデザインされた28種の限定パッケージを施した商品です。

販売は2020年10月5日からで、自動販売機のほか、コンビニや量販店で展開しました。

10月度は売上が1.5倍に

「鬼滅缶」販売直後の10月期の月次売上は前年比149.5%となりました。2020年は9月期まで前年を上回った月がないことを考えると、快挙といえるでしょう。

(画像=著者作成)

缶コーヒー需要低迷&コロナ自粛でも好調

そもそも、缶コーヒーは長期的に見て需要が低迷していました。

全日本コーヒー協会の「日本国内の嗜好飲料の消費の推移」によると、2019年のコーヒー飲料の消費は1990年と比較して46%増えましたが、そのうち缶コーヒーは27%減少しました。コーヒー全体は好調ですが、缶コーヒーは選択されてこなかった経緯があります。

2020年はさらに新型コロナウイルスの影響もありました。環境が決して良いとはいえない中、「鬼滅缶」によるインパクトはダイドーにとっても想定以上だったかもしれません。

くら寿司 鬼滅の刃コラボで好調

「くら寿司」は6月と9~10月に鬼滅の刃のコラボキャンペーンを実施しました。6月には平日1日あたりの売上記録を更新し、9月には既存店売上高が7ヵ月ぶりに100%を上回りました。

飲食業全体がコロナ禍で売上低迷に陥る中、くら寿司の2020年10月期の売上は0.2%減と、わずかな減収にとどまりました。

2020年9月は前年比+13.9% プラスは全体の14.5%

調査会社「帝国データバンク」は、くら寿司が鬼滅の刃コラボの第2弾を実施した9月における「上場企業(外食産業)の月次売上高動向調査」を公表しました。

調査対象62社のうち、前年同月比の売上が上回ったのはわずか9社で、約85%にあたる53社は前年同月比でマイナスになりました。

くら寿司の2020年9月の売上は前年同月で139%を記録し、調査全体では3番目の上昇率となりました。鬼滅の刃コラボは、コロナ禍の飲食業でも効果があったようです。