では、事例に沿って具体的な金額を見ていきましょう。まず、年収600万円の会社員である場合の年金受給額について考えます。
年収600万円の会社員の標準報酬月額を50万円(賞与なし)と仮定し、20歳から60歳まで同じ報酬で勤務していた場合、将来の年金額は国民年金と厚生年金を合わせて年間207万円(65歳から受け取った場合)となります。
次に、この年金額が婚姻期間中において、妻が専業主婦だった場合、離婚時の年金分割制度でどの程度減るのかシミュレーションしていきます。
年収600万円の会社員が専業主婦の妻と離婚すると将来の年金はどうなる?
妻と離婚をした場合、妻側からの請求により、3号分割によって婚姻期間中の第3号被保険者期間における標準報酬月額を2分の1ずつ分割することになります。
婚姻期間中の夫の平均標準報酬月額は50万円、専業主婦の妻は0円のため、年金分割により婚姻期間中の標準報酬月額は夫25万円、妻25万円に変わります。
仮に35歳で結婚し、15年後、50歳で離婚した場合、年金額は207万円から189万円に、年間で18万円減額されます。仮に65歳から85歳まで年金を受け取る場合、総額で360万円が減額される計算です。
なお、30歳で結婚し、30年後の60歳で離婚した場合、合意分割により2分の1ずつに年金分割したとすると、年金額は160万円まで減額されます。年間47万円の減額となり、65歳から85歳まで年金を受け取る場合、総額で940万円の減額となります。
まとめ
このように、婚姻期間中の標準報酬が離婚時年金分割制度により変更されると、将来の年金額も変更されます。専業主婦の妻との離婚による年金分割の場合、将来の年金額は減額となり、婚姻期間が長い場合は減額される金額も多くなります。
金銭面だけを考えると、離婚しない選択ができたほうがよいですが、夫婦間の事情もあります。今後のためにも年金分割の制度を理解しておくとよいでしょう。