契約者の差押債権者が解約返戻金を債務の弁済にあてるために、契約者が契約していた死亡保険や医療保険などを解約すると保険契約は消滅します。この場合、被保険者の健康状態や年齢等によっては再加入が困難になり、遺族の生活保障等の機能を損なうことになります。
そこで、差押債権者の解約に対抗して、保険金受取人の利益を守るということを目的にし、保険金受取人が解約返戻金の相当額を負担することによって契約を存続させることができます。これを「介入権」といいます。
保険業法では、保険契約の解除の効力発生時期を保険者が通知を受けたときから1ヶ月を経過した日までの間としています。この間に、介入権を行使し、契約者の同意を得て保険金受取人が解除権者に対し解約返戻金の相当額を支払うことなどによって、保険契約を存続させることができます。介入権を行使した場合、保険会社への通知が必要です。
介入権を行使できるのは、保険金受取人のうち、保険者が解除の通知を受けた時点で「保険契約者もしくは被保険者の親族」か「被保険者本人」のいずれかです。したがって、保険契約者は介入権を行使できません。介入権が行使されたときは、差押債権者等による解除は効力を生じないこととなります。
なお、介入権の行使期間中に支払事由(保険事故)が発生したら、保険会社は保険金のうち解約返戻金に相当する額を差押債権者等に支払います。その後、保険金受取人に対しては、本来の保険金額から差押債権者等に支払った金額を差し引いた残額が支払われます。
手続きについては、弁護士に相談するといいでしょう。
出典
裁判所 裁判例検索 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集 生命保険契約の解約返戻金請求権の差押債権者がこれを取り立てるために解約権を行使することの可否
公益財団法人生命保険文化センター 保険法の概要 保険業法各論 10.契約当事者以外の者による解除の効力等
一般社団法人日本損害保険協会 損害保険Q&A 問90 介入権制度とはどのような制度ですか。
デジタル庁 e-GOV 法令検索 保険業法60条、61条、62条、89条、90条、91条
デジタル庁 e-GOV 法令検索 民事執行法152条、153条、155条
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。