債務者が契約する生命保険金の解約返戻金を差し押さえた債権者は、生命保険の解約権を行使できる?
生命保険の解約返戻金は、差押禁止財産として法定されていないので差し押さえることができます。
最高裁判所(平成11年9月9日判決)によると、債務者(借り主)の契約する生命保険金の解約返戻金を差し押さえた債権者(貸主)は取立権の内容として、債務者の一身専属的権利に属するものを除く一切の権利を行使することができます。
生命保険契約の解約は身分法上の権利と性質を異にし、その行使を保険の契約者だけの意思に委ねるべき事情はないことから、一身専属的権利とはいえず、債権者も取立権の内容として自己の名で生命保険の解約権を行使できるものとしました。
仮に、差押命令を受けた債権者が解約権の行使ができないとすると、解約返戻金請求権の差し押さえを認めたという実質的意味が失われる結果となるからです。
また、生命保険の契約は債務者の生活保障手段としての機能もあり、その解約によって債務者が高度障害保険金請求権、または入院給付金請求権等を失うなどの不利益を被ることがあります。この点については、民事執行法153条が規定している差押命令の取り消しや権利濫用の法理で処理するものとしました。
このように、生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえした債権者については、これを取り立てるため、債務者の有する生命保険契約解約権を行使することができる、と最高裁判所は判断しました。なお、差し押さえの前提として、債務者が生命保険に入っているのかどうかを調査する必要があります。この点については、生命保険協会に対して弁護士照会を行うことが可能です。
具体的な手続きについては、弁護士に相談してください。