ダイエット中、食べる量をできるだけ減らそうと、朝ごはんをつい抜いてしまっていませんか? 痩せやすい体づくりのためには、朝ごはんできちんと栄養をとることが大切です。管理栄養士の常木綾子さんに、ダイエット中におすすめの食材と、手軽に作れる朝ごはんのレシピを3つ教えていただきました。
ダイエット中、早く痩せたいからと無理なカロリー制限をして、「食べないダイエット」をしていませんか? 忙しい朝は特に、ダイエット中だから、とついつい朝ごはんを抜いてしまいがち。
でも実際は、しっかり食べた方がダイエットに効果的です。朝ごはんを食べることによって、体のリズムが整ったり、お通じがよくなったりとさまざまなよい効果が期待されます。
リバウンドを繰り返したり、体調を崩してしまう「食べないダイエット」よりも、「食べて痩せる健康的なダイエット」をまずは朝ごはんから始めてみませんか? 今回は、バランスのよい朝ごはんのポイントや、忙しい朝でも簡単に作れる朝ごはんレシピをご紹介していきます。
■「朝ごはん抜き」はダイエットには逆効果
ダイエットのための「朝ごはん抜き」。食事量を減らすことになるので、総摂取エネルギーが抑えられ、一見ダイエットに効果があるように思えるかもしれません。しかし、実は逆効果なのです。
朝ごはんは1日の大切なエネルギー
朝ごはんをとると胃腸が刺激され、体温が上昇します。体温が高くなると、私たちが生きていくために最低限必要なエネルギーである「基礎代謝」も上がっていきます。
基礎代謝が上がると、消費エネルギーの多い状態が1日中続くため、「痩せやすい体」に近づいていきます。
しかし、朝ごはんを抜いてしまうと、体がエネルギー不足を感じて一時的な飢餓状態になります。すると体は余分に栄養をため込もうとしてしまい、空腹感も強くなって、次の食事で必要以上の食事をとってしまいがちに……。ダイエットのためには、むしろ朝ごはんはしっかりと食べてほしいところです。
体内時計をリセットし、お通じをスムーズにする働きも
人間の体には「体内時計」が存在します。これは、睡眠や体温、血圧やホルモン分泌などの変化をつかさどっている大切な機能です。
朝日による目からの刺激でまず脳のスイッチが入り、さらに朝ごはんを食べることによって全身にある時計遺伝子のスイッチが入り、体内時計がしっかりとリセットされます。しかし朝ごはんを抜いてしまうと、体内時計がリセットされにくくなり、体のエネルギー消費が減ったり、食欲を抑制するホルモンの活性が低下したりして、どんどん太りやすい体になってしまうのです。
また、消化器や腸にも1日のリズムがあります。体内時計が整ってくると、朝食後や家を出る前に、徐々に排便がスムーズにおこなわれるようになっていきます。ダイエットのためにはもちろん、便秘気味でお通じが気になる方にも、朝ごはんをしっかりとって腸のリズムを整えることはとても大切です。
■ダイエット中の朝ごはんにとりたい栄養素とおすすめ食品
ダイエット中の朝ごはんは、食べる量を極力減らして必要最低限の栄養をとりたい! と思ってしまいがちかもしれません。しかし、ダイエット中でも栄養バランスを意識して食べるのがおすすめです。三大栄養素である「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」の特徴と、それぞれの栄養素を効率よくとれる食材をご紹介します。
炭水化物
ごはんやパン、麺などに多く含まれ、体のエネルギー源に使われる栄養素です。最近よく耳にするようになった「糖質」は炭水化物から食物繊維を引いたもので、同じエネルギー量でも、たんぱく質や脂質よりも素早く使えるという特徴があります。糖質をとると太るというイメージが強いかもしれませんが、糖質は代謝をよくし、活動の源にもなる大切なエネルギー源です。
過剰にとりすぎなければ問題ないので、毎食、お茶碗に1杯程度を意識して、朝ごはんでも積極的にとるようにしてください。
おすすめ炭水化物の食品
- 大麦
・玄米
・全粒粉、ふすま入りパン
慢性的な糖質不足は避けたいですが、ダイエット中は糖質をとることをできるだけ控えたい……という方もいるかもしれません。そんな方におすすめな食べ方は、炭水化物における食物繊維の割合を上げること。ごはんなら通常の白米に大麦や玄米を足してみたり、パンなら全粒粉やふすま入りのパンを選んでみるといいでしょう。
これらは食物繊維の他にもビタミンB群、ミネラルなどが豊富で、満腹感も得られやすく、ダイエットにぴったりな食品です。
たんぱく質
肉、魚、卵や大豆などに多く含まれ、体を作る重要な構成要素。おもに筋肉や血液、内臓や髪の毛などを作る栄養素です。たんぱく質が不足すると、筋肉が衰えてしまいます。その結果、消費エネルギーも減り、太りやすい体になってしまう可能性も。
たんぱく質はとりすぎにも注意が必要で、腸内環境が悪化したり、肝臓に負担になったりする場合があります。過剰なプロテイン摂取などにも気をつけましょう。
適切な量の目安は、1食あたり手のひら1枚分。できるだけさまざまな食品からとることがよいとされています。
おすすめのたんぱく質食品
- サバ缶
・ノンオイルツナ缶
たんぱく質を手軽にとり入れるには、長期保存もできるサバ缶や、ノンオイルのツナ缶がおすすめ! これらの食品からは良質なたんぱく質がとれるだけではなく、EPAやDHAといった成分が豊富なので、血流をよくしたり、張りとうるおいのある美しい肌や艶のある髪を維持する効果も期待されます。
脂質
カロリーが高く避けられがちですが、体温調節やエネルギー源の確保をしてくれるほか、細胞膜やホルモンの材料としても使われる栄養素です。
とりすぎには注意している方が多いと思いますが、不足すると肌が乾燥したり、脂溶性ビタミンが吸収されにくくなる、といったデメリットがあることも覚えておいてくださいね!
おすすめの脂質食品
- えごま油
・アマニ油
えごま油やアマニ油には、普段の食事で不足しがちな必須脂肪酸の「αリノレン酸」が多く含まれます。この栄養成分は、血流改善や中性脂肪の低下、血中コレステロール値の低下などに効果を発揮してくれます。
酸化しやすいのが特徴なので、生で食べるサラダなどにかけて摂取することがおすすめです。
■ダイエット中におすすめの朝ごはんレシピ3選
ここからは、前述した栄養素がバランスよくとれる、ダイエット中におすすめの朝ごはんレシピをご紹介します!
1.サバ缶のお手軽みそ汁
ごはんなどの炭水化物と一緒にサバなどのたんぱく質をとることで代謝が上がり、ダイエットへの効果が期待されます。
サバに含まれるDHAは脳の活性化に役立ち、頭の回転が速くなる効果も期待されるので、勉強や仕事の前の朝ごはんにぴったり! さらに、発酵食品の味噌は、腸内環境を整えてくれます。
お湯を注ぐだけで鍋や火も使わずにできる、忙しい朝でもすぐに作れるお手軽みそ汁です。
材料(2人分)
サバ缶(水煮)1缶
味噌 大さじ2
湯 400ml
カットわかめ 2つまみ
かつお節 2つまみ
作り方
1.お椀か大きめのカップを2つ用意し、それぞれにサバ缶以外の材料(1/2ずつ)を入れよく混ぜて味噌を溶かす。
2.サバ缶の身と汁(大さじ1くらいずつ)を2に入れてできあがり。
2.きのこのレンチンホットサラダ
レンジですぐできる食物繊維たっぷりサラダ! きのこはカロリーも低く食物繊維を多く含むので、ダイエットにぴったりな食品です。食物繊維は乳酸菌のえさとなり善玉菌の増殖を助けるので、腸内細菌のバランスを保ち、腸内環境を活性化してくれます。
ヨーグルトなどの乳酸菌の多い食品と一緒にとるのがおすすめ!
材料(2人分)
しめじ 1/2袋
まいたけ 1/2袋
A オリーブオイル 大さじ1
A コンソメ顆粒だし 小さじ1
こしょう 少々
作り方
1.耐熱容器にしめじとまいたけを、石づきをとって食べやすい大きさに手でほぐす。
2.Aを1に入れ、ふんわりラップをしてレンジで3分半加熱する。
3.2にこしょうをしてできあがり。
3.こうじ甘酒のグリーンスムージー
緑黄色野菜とフルーツ、糖質、たんぱく質がこれ1杯でとれるスムージーです。こうじ甘酒とバナナの優しい甘さで飲みやすく、忙しい朝にも手軽に作れるので、朝ごはんの習慣がない方はスムージーから始めてみてはいかがですか?
こうじ甘酒やヨーグルトに含まれるオリゴ糖や乳酸菌が腸内環境を整えてくれるので、お通じ改善や美肌効果も期待されます。さらに、小松菜に含まれる鉄分で貧血気味な方の予防にも!
材料(2人分)
小松菜 1株
バナナ 1本
A こうじ甘酒 100ml
A 無調整豆乳 200ml
A プレーンヨーグルト 大さじ2
作り方
1.小松菜は茎をよく洗い、手でちぎってミキサーに入れる。バナナも手でちぎって入れる。
2.1にAを入れ、なめらかになるまで撹拌し、器に注ぐ。
■朝ごはんには「ストレッチ」をプラス
朝ごはんには体を目覚めさせたり、体温を上げたりするはたらきがあります。ダイエット中は代謝を上げて痩せやすい体を作ることが重要なので、朝ごはんは抜いてしまおうと思わずに、しっかりととってくださいね。
また、朝ごはんの前かあとに、時間に余裕があれば、朝日を浴びながら肩甲骨を伸ばすストレッチをしてみましょう。最初にご紹介したように、朝の光は体内時計をリセットしてくれる大事な要素です!
肩甲骨周辺には脂肪燃焼を促す細胞が多く集まっています。肩甲骨を伸ばして刺激を与えると、脂肪の燃焼が期待されるのはもちろん、1日中代謝の高い状態が続き、消費エネルギーも増えます。朝のストレッチは痩せやすい体を作ってくれるので、習慣化を目指してみてくださいね。
食べて痩せる健康的なダイエットを、手軽に作れる朝ごはんからスタートしましょう!
参考文献
・『「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書』(厚生労働省)
・『時間栄養学: 時計遺伝子と食事のリズム』(香川靖雄、小田裕昭、加藤秀夫、榛葉繁紀、堀江修一、柴田重信 著/日本栄養・食糧学会 監修)
・『食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門』(古谷彰子 著/柴田重信 監修)
Text/Sunny and 常木綾子(管理栄養士)
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