◆無償依頼という“搾取”はどこでも起こりうる

 無償依頼の被害は著名人に限らない。実際ねづっちの投稿には、医師がプライベートの場で病気の相談をされた話、トリマーが近所の犬のカットを「タダでやって」と言われた話をはじめ、Webデザイナーや美容師、音楽家、農家など様々な職種の人から“搾取”についてのコメントが散見された。無償依頼は業種や知名度は関係なく、どこででも発生しているようだ。

 こうした無償依頼が起きる背景には、依頼する側の想像力の欠如が大きい。そのスキルや経験を獲得するためには膨大な時間やお金を費やす必要があり、場合によってはメンタルを擦り減らしながら身につけているのだ。そういった事情への想像力が全く働いていないため、簡単に無償依頼できてしまうのだろう。

 筆者自身も、ライターとして無償依頼をされることは珍しくない。「同窓会のスピーチ原稿を書いてくれない?」といった執筆依頼から、「取引先への謝罪メールを書いたんだけど変な文章になってないかチェックして」といった添削依頼まで幅広い。無料では引き受けないことを伝えるとなぜか“ケチ”扱いされる。

 究極的に言えば文章は、質さえ問わなければ誰でも書ける。だからこそ、躊躇なく依頼できてしまうのだろう。とはいえ、当人は文章作成に難しさを覚えているから依頼してくるはずだ。書くことを生業にしている人はその苦労を多く経験したからこそ、今仕事をもらえているわけだ。しかし無償依頼してくる人にこうした説明をしても、納得してもらえないから歯がゆい気持ちになる。

◆「タダで受ける」ことが仕事の価値を下げてしまう

 今回のねづっちの投稿によって浮き彫りになった“無償依頼”ではあるが、発言小町やYahoo!知恵袋でもたびたび話題になっており、以前から問題視されている。友人や同僚から依頼されるケースも珍しくなく、人間関係がギスギスすることを恐れ、依頼を渋々受ける人は少なくない。