今後の日本経済が抱える不安要素

経済は循環しているため、いつかは景気後退局面が訪れよう。その要因としては、米国経済の減速や景気後退、東京五輪特需の剥落、消費税増税などがある。

中でも消費税増税については、注意が必要だろう。実際、近年の日本の個人消費が大きく下振れした時期はリーマンショック、東日本大震災、2014年の消費増税の3度あった。下振れの時期は、リーマンショックは2年、東日本大震災は1年にとどまったのに対し、2014年4月の消費増税の時は3年かかった。

更に、個人消費のトレンドという面でみれば、前2つは上方トレンドが維持されたが、消費増税時は上方トレンドが下方屈折してしまった。このことからも、消費増税時には経済の勢いが大幅に削がれることが経験的にわかっている。

なお、消費税増税の負担額については、2014年に3%引き上げられたときには家計の負担は8兆円以上だった。来年10月の増税では上げ幅自体は2%だが、子育て世代への1.4兆円の還付や軽減税率などを考えると、トータルの負担は2.2兆円となり、負担額だけで見れば前回の4分の1程度だろう。更に、景気対策も実施するため、消費増税のみで日本経済が腰折れすることはないとみられる。

しかし問題は時期である。過去の経験に基づけば、2020年の東京五輪の特需のピークは来年夏が予想される。建設需要の勢いがピークアウトすることが予想されるためである。つまり、東京五輪特需の勢いがピークアウトするタイミングで消費税増税に突入する。つまり、ピークが過ぎた後の増税はタイミングとしては最悪であると考えている。
 

カギは生産性の向上

こうした状況を勘案すれば、2020年には経済環境は悪くなっている可能性が高い。こうした中、中小企業では事業承継、新規事業展開、人手不足が課題になっていることからすれば、採用にこだわらずに業務委託することや、IoT(モノのインターネット)の導入といった新たな選択肢を取り入れる等の生き残り策も必要となろう。

特に現在、生産性向上の取り組みを政府は積極的に紹介し、法的なサポートも行っている。例えば、中小企業の経営力向上のための人材育成・財務管理・設備投資等の取組みに対して固定資産税の減免や金融支援が受けられる中小企業等経営強化法の施行はその例である。

この制度を活用して生産性を挙げた例としては、ITやロボットを積極的に導入して職員負担を減らした企業、付加価値を増加させるため新規自社製品のブランディングをアウトソーシングして売上を伸ばした企業などがある。他にも、人手不足に対応するため作業の見える化と人事評価の明確化を実施し、1人3役制度で職場環境を改善した企業など成功例は数多く存在している。

このように今後、景気後退局面となり、企業経営が厳しくなると予測される中で、企業が生き残るポイントはやはり生産性の向上にあるといえよう。

文・永濱利廣(第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト)/ZUU online

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