ICO市場の拡大とイーサリアムの大幅な価格変動

2017年中旬に始まったICO市場の急成長の立役者がイーサリアムであったことに異論はないが、2018年9月現在ではイーサリアムの価格が続落し、その将来性について疑問符が付く状況だ。

2017年5月からの価格上昇……複合的要因によるイーサリアムに対する期待感

2017年に急増したICO案件では、イーサリアムで新しいトークンを購入するプロジェクトが多く見られた。その結果イーサリアムの価格は上昇し、2017年5月から2018年1月までイーサリアムの時価総額は急騰、一時期はその規模が2017年5月当初の15倍にも拡大した。

2017年のイーサリアムの急激な価値の上昇は、ICOでの採用率の高さに加えて、同年2月のイーサリアムアライアンスの結成や、予定されていた同年10月のハードフォークの実施など複合的な要因によるものと考えられている。イーサリアム自体が開発途上にあるため、価値を上げるバージョンアップや環境整備が顕著に価格に反映された格好だ。

2018年1月以降の価格続落……きっかけは各国の仮想通貨取締強化

2018年1月下旬以降は、一時的に回復するもののイーサリアムの時価総額は相対的に右肩下がりとなった。2018年8月以降の価格の暴落など、現時点では価値は下落傾向にある。

2018年1月下旬の価格下落は、2017年12月の米証券取引委員会(SEC)による仮想通貨とICOの規制と摘発の発表がきっかけだった。2018年1月中旬、韓国が仮想通貨を全面禁止、中国が取締強化を発表、それに続いてドイツ・フランスが世界に仮想通貨の規制を提案したことなど、各国での規制強化がイーサリアムを含む仮想通貨相場に影響を及ぼした。

仮想通貨取引所コインチェックが外部から不正アクセスを受けて、2018年1月26日に約580億円分の仮想通貨NEMの流出が発覚した。その後の仮想通貨相場急落に呼応してイーサリアム価格も下落した。

同年6月14日にはSECより「イーサリアムは有価証券ではない」との見解が示されたものの、9月に至るまで価格の下落に歯止めがかからず、2018年9月14日時点では1年以上前の水準である217ドル程度まで価格を下げている。

ビットコインの価格が下げ止まり一定の水準を維持しながら推移する一方で、アルトコインの価格は現在も下落傾向にある。中でもイーサリアムの下落率は著しく、価格下落が止まる気配は見られない。

その理由としては、次のハードフォーク「コンスタンティノープル」の際にマイニング報酬の低減が実施されることや、マイニング方式の変更に関わる「キャスパー」へのハードフォークアップデートの12ヵ月延期が発表されたこと、イーサリアムに対する信頼性が低下したことによって複数のICOプロジェクトでイーサリアムが大量に売られた可能性など、複合的な要因が考えられる。