◆双子ベビーカー使用者の権利を勝ち取る闘争へ
──なぜそこまで偏屈なんでしょうね。
秋澤:いや、本当に……(苦笑)。あまりにも相手が無理解なものだから、私も途中でめちゃくちゃ泣いたことがあるんです。そうしたら、こんな例え話をされたんですよね。「もしかしたらヨロヨロした80歳のおばあさんが席に座れないケースもあるかもしれない。そのおばあさんは手に持っていた荷物を双子ベビーカーに落とすかもしれない。奥さん、あなたの大事なお子さんをそんな危険な目に遭わせてもいいんですか?」って。仮定の話だったとしても、前提からしてデタラメすぎると思いました。
こうして秋澤さんの「双子ベビーカー使用者の権利を勝ち取る闘争」は幕を開けることになる。
◆都営バスは2021年6月7日からルールを変更
近日公開予定の記事中編では東京都庁へ出向いて小池百合子都知事に陳述した過程を語るとともに、多胎育児が置かれている過酷な状況についても鋭く指摘していただいた。なお、彼女たちの闘いを経て現在では都営バスの全路線で、二人乗りベビーカーを折りたたまず乗車できるようになっている(混雑時などをのぞく)。
【秋澤春梨さん】
2019年秋より「多胎育児のサポートを考える会」に参加。双子用のベビーカー問題をはじめとする双子・多胎育児をめぐる制限について、数々のメディアに取材協力。2020年には小池百合子東京都知事との面会に多胎児家庭の当事者として参加。2020年5月、中央区・江東区双子サークル「リバーサイドツインズ」を立ち上げる。
<取材・文/小野田衛>
【小野田衛】
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。双子(娘+娘/二卵性)の父でもある。