実際、世界的な視点で見ると海外の同種の番組の優勝賞金は日本のそれを大きく上回る。

 例えば、アメリカのバラエティ番組『サバイバー』では優勝者に対して100万ドル(約1億5000万円)とスポンサーが提供した自動車が贈られ、また2位以下にも順位に応じ賞金が与えられる。

とにかく明るい安村が出場して話題となったイギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』も優勝賞金は25万ポンド(約4800万円)と、日本のそれをはるかに超える額だ。

 また、音楽オーディション番組『アメリカン・アイドル』の優勝者は賞金100万ドルに加え、レコード会社と契約を結ぶ権利を得て、一躍トップアーティストの仲間入りを果たすことができる。

 これらと比較すると、M-1の優勝賞金が1000万円というのは相対的に見劣りしてしまうのは否めない。

「『M-1』の優勝賞金はどれくらいが妥当なのかは意見が分かれるところでしょうが、一部のお笑いファンや業界関係者からは、『影響力を考えれば3000万円から5000万円でも良いのでは』との声をよく耳にします。ただ、今年は松本人志の不在に加え、『サンドウィッチマン』の富澤たけしや山田邦子が審査員から外れたことで小粒感がささやかれていますから、昨年までと同様の盛り上がりとなるのかは微妙なところですが」(前出の放送作家)

 もっとも、M-1に挑戦する芸人たちにとってもはや賞金自体がそこまで重要視される要素ではないとの見方もある。

 芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。

「M-1で優勝すればそのまま引退などをしない限り、仕事量やギャラ、知名度は飛躍的にアップしますし、賞金以上の付加価値がありますからね。それに近年ではM-1を芸人としてのキャリアアップのための一つの道筋や芸人としての道に見切りをつけるキッカケとして捉えるのではなく、M-1優勝を大きな目標や中には芸人としてのゴールとして目指す挑戦者もいるくらい。そういう人たちにとっては優勝賞金が500万円に下がろうが、2000万円に上がろうが大した問題ではないでしょう。そもそも、妥当な額の根拠となる数字もないわけですし、主催者サイドも優勝賞金を2000万円にしようが、5000万円にしようが賛否の声が出るくらいなら、すでにM-1を想起させるフレーズとしても定着している“優勝賞金1000万円”の線をキープする方がいいという判断なのかもしれませんね」