「106万円の壁を撤廃し、厚生年金加入者を増やすことで、所得代替率を高める」とはいうものの、所得代替率が向上したとしても微々たるものと考えられ、年金だけでそれまでの暮らしを維持することは難しいかもしれません。
そのように考えると、足りない部分は家計面でどのように工夫すればよいでしょうか。
収入、支出、資産、負債の4つで考えてみましょう。
まず「収入」の面においては、単純に収入を増やす工夫をすればよいわけです。国の政策としては、「最低賃金を1500円に引き上げる」「企業に賃上げを促す(賃上げ税制や価格転嫁対策など)」「兼業や副業の奨励」「リスキリング(社会人が新たな知識やスキルを習得する学び直し)」などが用意されています。
このような政策が実現され、また、労働者が活用すれば、おのずと収入が増え、将来もらえる年金も増える可能性が高まります。
「支出」の面では、例えば、「所得控除の上手な活用」が挙げられるでしょう。寄附金控除を活用した「ふるさと納税」は人気のある控除項目ですが、ほかにも「生命保険料等控除の拡充」が、2025年度に向けた税制改正要望として、金融庁から出されています。また、最近は「103万円の壁を178万円に引き上げる」という国民民主党の案が話題ですが、政策の実現性は別として、仮にこれが実現されれば基礎控除が大幅に引き上げられるため、減税につながります。
これらの政策や制度は、可処分所得(手取り)を増やすことに寄与するため、家計簿で見れば収入から支出を差し引いた金額(純利益)の増加につながり、将来に向けた資産形成に寄与する可能性があるといえるでしょう。
このように「資産」が増えれば、貯蓄や投資にお金を回すことができます。国の政策としてはiDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額の引き上げや、NISA(少額投資非課税制度)の利便性向上などが今後の税制改正として期待されています。そのほかにも、「財形年金貯蓄制度」を活用したり、先述の生命保険料等控除の拡充を利用し、貯蓄性のある生命保険や個人年金保険に加入したりすることで、将来に向けた資産形成につなげる、という方法もあるかもしれません。
さらに、金融庁から2025年の税制改正要望として出されている「結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充」などは、親や祖父母から財産を移転しやすくするための政策で、子や孫世代にとっては将来に向けた資産形成に寄与すると考えられます。
最後に「負債」ですが、いわゆる住宅ローン減税が代表的です。少子化対策や子育て支援策として、子育て世帯などを対象に住宅ローン控除の拡充やリフォーム税制の拡充が示されています。
これらはローンなどの返済支出を減らすことにつながるため、資産とあわせて考えると、資産から負債を差し引いた純資産、つまり、将来における家計の体力を強化する政策といえます。
貯める&備える
2025/01/17
106万円の壁「撤廃」が注目されていますが、私たちの「老後」や「家計」にどのような影響を与えるのでしょうか? 年金制度の改正の狙いと、安心して暮らすためのヒントを紹介します。
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