電車やバスには「二重運賃」があると知りました。「交通系ICカード」と「切符」ではいくらくらいの差額がありますか?
2014年に消費税率が引き上げられた際、交通系ICカードの「1円単位運賃」が導入されました。これは消費税率の引き上げ分を正確に転嫁するための手法で、「交通系ICカード」と「切符」では運賃が異なる、いわゆる「二重運賃」が導入されるきっかけとなります。   当時は話題となりましたが、導入から10年がたち、「覚えていない」「あまり意識していない」という方もいるのではないでしょうか。そこで、当記事では改めて「二重運賃」についておさらいし、「交通系ICカード」と「切符」の差額についてみていきたいと思います。

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2014年の消費増税をきっかけに電車・バスの「二重運賃」が開始

2014年に消費税率が5パーセントから8パーセントに引き上げられた際、首都圏の鉄道事業者やバス事業者を中心とした公共交通機関の事業者から「1円単位運賃」を導入したいとの申し出がありました。
 
公共交通事業を管轄する国土交通省は2013年10月29日、「今後、このような運賃改定申請が出てくる場合には、消費税率の引上げ分をより正確に転嫁する観点から認める方針です。」との見解を示し、いわゆる「二重運賃」が導入されることになります。
 
自動券売機での少額硬貨の取り扱いや利用者の利便性などを踏まえ、現金運賃は「10円単位」であることに対し、「交通系ICカード」については「1円単位運賃」が認められたことで、「切符」と「交通系ICカード」で運賃が異なる状況が生まれたのです。
 

JRの電車特定区間・山手線内は常に「交通系ICカード」の方が「切符」より安い

それでは、実際に「交通系ICカード」と「切符」で運賃はいくらくらい違うのでしょうか。まず前提として、交通系ICカードの「1円単位運賃」導入に際し、国土交通省は「ICカード運賃は現金運賃と同額ないしそれより安価となることを基本」とする方針を示しています。
 
一方、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は「『IC運賃』が安い場合と『きっぷの運賃』が安い場合がありますが、なぜですか。」との問いに対し、以下のように回答しています。
 
「IC運賃は、基本的には税抜運賃に1.1を掛け、小数点以下を切り捨てて1円単位にしています。これに対し『きっぷの運賃』は、税抜運賃に1.1を掛け、原則に基づいて一の位を四捨五入し10円単位にしています。
 
ただし、ICカードのご利用が多い首都圏においては、電車特定区間・山手線内に限り、常にIC運賃の方が『きっぷの運賃』以下になるようにするため、『きっぷの運賃』の計算で10円単位にする際に一の位を切り上げています。」
 
そのため、電車特定区間・山手線内については、常に「交通系ICカード」の方が「切符」より安い運賃となっています。例えば、2024年11月21日現在、山手線内の普通運賃は表1の通りです。
 
表1

営業キロ 交通系ICカードの運賃(円) 切符の運賃(円)
1~3 146 150
4~6 167 170
7~10 178 180
11~15 208 210
16~20 274 280