ほどなく解禁され、現在ではコントも多く披露されているマンゲキだが、その一時期にはコント芸人も漫才を強制され、ネタが書けないというコンビにはベテラン作家がついて台本を提供するといった異常な状況が数カ月にわたって続いた。漫才用のスーツを仕立てる業者まで吉本側に指定されているといった話も漏れ伝わっていた。
そうした事態が、主に関東の若手お笑いファンの間で「カウスアレルギー」ともいうべき反感を生んできた。
もとより“黒いウワサ”が取りざたされてきたカウス。暴力団との親密な関係が報じられたことも一度や二度ではないが吉本内での権力は依然として絶大である。
今年の「上方漫才協会大賞」では弟子であるドーナツ・ピーナツに大賞を与え、自ら「見えない力が働いたのかな? 芸名を『えこひいき』に変えます』」とうそぶいてみせた。霜降り明星・粗品や令和ロマン・髙比良くるまが好々爺然としたカウスのエピソードを披露することもあるが、そのイメージの回復には至っていないのが現実である。
それでも新しい「マンゲキ」を見守りたい
現在の無限大には、いぬ、蛙亭、カゲヤマ、コットン、そいつどいつ、滝音、ダンビラムーチョ、ニッポンの社長、ネルソンズといった『KOC』ファイナリストが所属している。20年『KOC』王者の空気階段が賞金で改装したトイレもある。まさか「コント禁止」ということにはならないだろう。
難波のマンゲキも発足当時こそ混乱があったものの、ミルクボーイと霜降り明星が『M-1』を制し、ビスケットブラザーズもマンゲキ所属のまま『KOC』を獲った。見取り図やアインシュタインもタイトルこそないもののテレビスターとして羽ばたいている。
一足先に東京にオープンした神保町よしもと漫才劇場は令和ロマンという怪物を生み落とし、ヨネダ2000やエバース、金魚番長など未来の賞レース王者候補がひしめいている。
結局のところ、劇場は舞台に立つ芸人が育てるのである。渋谷よしもと漫才劇場にも、悪くない未来があることを信じたい。