◆遠慮したら寂聴先生に申し訳ない

「最後の最後はいい人になって、講話や人生相談で人々を元気づけていた。それまでエゴを突き詰めて恋愛をやり切ったんでしょうね」

『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』KADOKAWA
『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』KADOKAWA
 そんな風に、女性として作家として生き切った寂聴先生に対峙するため、延江さんも本気で挑むつもりで書き切ったそうです。

「遠慮したら寂聴先生に申し訳ない。逆説的ですが、事実に基づいて書き切ることで清潔になるんです」

『J』が出たことで母袋晃平は奥さんに怒られたそうですが、本が出たことを喜んでいるそうです。

 世の中に忘れ去られたくないという思いを抱いていた寂聴先生も、もしかしたらあの世で、「やっぱり私を超える存在なんてどこにもいないのよ」と微笑んでいるかもしれません。