◆寂聴先生が生きていたら広末さんを応援したんじゃないかな
この小説では延江さんが主体となって母袋晃平の話を聞いたり、寂聴先生の展示に行ったり、図書館で調べたり、といった構成で、寂聴先生の経歴や作品についても知ることができ、情報量も充実しています。延江さんは寂聴先生が乗り移ったかのような感覚で書いたそうで、文章の表現力も格調高いです。
「母袋晃平は、うっとりした様子で寂聴先生との恋物語を話していて、千年前の恋を聞いているような感じでした。『源氏物語』の恋愛と、今も変わらないのでは?と思い、文体も昔っぽいスタイルにしました」と、延江さんはおっしゃいます。
「彼女の著作はほとんど読みまして、その文体を学習したというか。読んでみると、全部不倫なんですね。もう逃れられない宿命みたいなもの。生きていたら広末さんを応援したんじゃないかな。
学問じゃなくて恋が人を成長させるっていう考えだったんでしょう。男と付き合うことでエッセンスを得てきた。常に恋愛は自由である、という信念の持ち主でした。
優等生の文章はつまんないですよね。毒もなくて。日本では道徳観念が強くて、文学がシュリンクしている。この本でそういう風潮に一石を投じたかったんです」
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