職場でのハラスメントが話題になることの多い最近ですが、部下を指導している“だけ”のつもりが、パワハラ認定されてしまってしまった……なんてこともありえなくはない話です。自分がパワハラの加害者となってしまわないよう、指導とパワハラの線引きをしっかりと認識しておきましょう。

Cinqの読者の皆様、ご機嫌いかがでしょうか?
プライベートに引っ張られて、「不機嫌」を引き摺ったまま出社する…なんてことのないように心掛けましょう。不機嫌をまき散らして職場を微妙な空気にしてしまう方がたまにお見掛けしたりますが、自分を常に「機嫌のよい状態」に保つことも、社会人としての最低限のマナー。気を付けたいものですね。

問題ある社員への【指導】を【パワハラ】認定されないために気を付けたいこと

さて、前回、「職場のパワハラの乗り越え方」として、パワハラを受ける側の立場で考えてみましたが、読者の皆様の中には、部下に指導する側の立場で「ちょっと強く叱責するとパワハラって言われちゃうし、でも指導はしなきゃいけないし…」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は「 問題ある社員への【指導】を【パワハラ】認定されないために気を付けたいこと 」についてお伝えしていきたいと思います。

厚生労働省が定義する「パワハラ」とは

先週のおさらいになりますが、パワーハラスメントを厚生労働省は以下のとおり定義づけています。

“同じ職場※で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為”
“業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当する。”

※ここでいう「職場」とは、オフィスや出張先だけでなく、社内ぐるみで開催される宴会等も含まれます。また、上司→部下という関係に限ったものではありません。

そして、パワハラには6つの種類があることもお伝えしました。
1.「身体的な攻撃」(暴力行為)
2.「精神的な攻撃」(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言等)
3.「人間関係からの切り離し」(隔離・仲間外れにする・無視等)
4.「過大な要求」(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
5.「過小な要求」(能力/経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる。または仕事を与えないこと)
6.「個の侵害」(必要以上にプライベートに立ち入る行為等)

1.は論外ですが、問題は2や6など。受け手の感じ方によって、「指導のつもりがパワハラと受け取られてしまう」ことになりかねないので、注意が必要です。

強い口調での指導がパワハラだと訴えられるケースが増えている

経営側や上司などが強い口調で指導してしまい、パワハラだと訴えられるケースが増えてきています。訴えられる側は「パワハラではなく、あくまで指導だった」という証拠を残していない一方、パワハラだと訴える側は録音などで証拠を残していることが多いそうです。

パワハラ事件の判例などをみると、勤務態度にかなり問題のある従業員で、企業側は指導に相当困るだろうと思われるようなケースであったとしても、一度でも上司の側が限度を超えた発言をしてしまうと、従業員に対して慰謝料を支払うよう命じた判決が出されています。

パワハラ認定されないために注意すべきことは?

具体的に、どんなことに注意すべきでしょうか。

大勢の前での叱責

ほかの従業員や顧客がいる前で見せしめのように怒鳴りつけるケースです。

以前勤めていた会社で、役員がある社員を部署内で長時間激しく怒鳴りつけたあと、別室にその社員を呼び出し、「普段しっかりしている君を注意することで、社内の空気を引き締めたいと思った」と伝えた事例がありました。

しかし叱責された側は「フォローのつもりで呼び出したんだろうけど、意味不明だった。見せしめのつもりだったのかもしれないけれど、役員への敵意しか芽生えませんでした」とのちに答えています。

また、メールに複数人数CCを入れて、上司が資格取得の勉強がすすんでいない部下にネチネチと説教をした。というケースもありました。

パワハラの証拠をこれだけハッキリ残してしまうなんて…労務知識がないことをみんなにカミングアウトしているようなものなのにすごいなぁと呆れましたが、やられたほうはたまったものではありませんね。

注意・指導をする際は、「別室で、1対1で」「手短に」が原則です。

優位性を利用した発言

上司→部下への暴言だけがパワハラになるわけではありません。
たとえば、PCが苦手な同僚に対し、「こんな簡単なこと、なんで知らずに今まで来られたの?」などと馬鹿にすることもパワハラに該当します。(専門性の優位性によるパワハラ)
派遣社員に対して正社員が「責任なくていいよね」などと言うことも、雇用形態の優位性によるパワハラに該当します。

「なんでこんな簡単なことに時間掛かってるの?やる気あんの?」
という声掛けをきくこともありますが、社員がみんな管理者と同じようなペースでテキパキと仕事をこなせるわけではありません。

管理職は、何らかの秀でた実績や経験があって今のポジションに至っているはず。自分と同じ処理能力を部下に求め過ぎるのもパワハラです。部下をただ叱責するのが管理職の責務ではなく、彼らを指導し能力を引き上げるのが管理職の責務であることを再度自覚しましょう。