さらに、学力試験が主な選考基準となる、一般選抜による大学入学者が21年度以降は、半分を切るようになった。総合型選抜(主に旧来のAO入試)、学校推薦型選抜(旧来の推薦入試)といった選抜方式で入学する学生が増えているのだ。
学力試験を受けない高校生も、受験産業が実施する模擬試験を高校が一括して実施するので、渋々受験する。模擬試験の結果なんか気にしなくても大学入学を果たせる、だからあまり真剣に模擬試験を受けない。
定員割れを恐れる、入試難易度が低い中下位層の大学は少しでも早期に入学者を確保したい。だから募集時期の早い総合型選抜や学校推薦型選抜の選抜要件は緩くなる。できる限り多くの入学者を確保しておけば、一般選抜では合格者を絞り込めるので倍率を出せる。
全入化して一般選抜で倍率が出なくなると「Fランク」に位置づけられる。とは言え、少子化の中で、入学者を定員まで確保できる大学は、前述のように少なくなっている。Fランク大学は増大する。
こうした状況では、学力試験によって作成される大学入試ランキングは崩壊を始める。過保護な保護者は子どもに無理をさせない。この傾向は年々強くなっているようだ。
「勉強しなくても入れる大学でいいじゃないか。就職はできるのだから」
これまで大学進学にシャカリキになっていた中堅以下の高校教育は、空洞化を招き始めている。高校で「学ばない生徒」は当然ながら大学では「学べない学生」になる。学び方を知らないし、学ぶ意欲に欠けるからだ。こうした状況が続けば、いずれ大学教育も一部で空洞化する。
それが「母校がなくなる日」につながるのだ。
こうした状況には、数々の「勘違い」が存在する。
このコラムでは、そうした「勘違い」を指摘したり、教育が抱える課題を取り上げたりして、教育がより良い方向に進むことの一助となるようにしたい。若者の将来は必ずしも明るいわけではないが、その将来を明るくするのは教育だからである。
(文=後藤健夫/教育ジャーナリスト)