## タイトル『SOMEWHERE NOWHERE』が意味するもの
(撮影=髙橋明宏)
 
> ――素敵な世界観ですね。拝見していると、時間が経つのも忘れてしまうほど、どこだろうと思いを巡らせてしまいそうです。 プライベートで行った撮影旅行や、仕事のロケの合間に撮った写真が多いのですが、海外の写真だけではなく国内で写したものもあります。この中には私の地元の長野で撮った写真もあれば、京都や沖縄で撮ったものもあります。ただ、多分どこで撮ったかぱっと分かる人は少ないのではないかなと思います。写真集の最後のページの下部にはこれまで私が訪れた世界の街を載せているんです。写真集におさめられた写真はこれらの街のどこか。
私自身、写真の中にはこれはどこだろうと自分でもぱっと見た時に思い出せないものもあるのですが、それぞれの写真に残る断片的な風のにおいや音の記憶を繋ぎあわせて、新たな旅の記憶というか記録を作り上げた感じです。
 
> ――『SOMEWHERE NOWHERE』というタイトルにも結びついているのでしょうか。 そうですね。今回のタイトル『SOMEWHERE NOWHERE』に込めている意味は「どこでもないどこか」。本当は「どこでもないどこか」を実際に訳すと“SOMEWHERE NOT ANYWHERE” ですが、「どこかなのか、どこでもないのか、でもどこででもあるのか」と言うような意味を出したかったので、『SOMEWHERE NOWHERE』にしました。
 
いつどこで撮ったものか分からない写真達を私の中ですり替えられた新しい記憶で結びつけているというのもありますが、さまざまな記憶を紡いで自分だけの新しい国を作ったので、タイトルもあるようでない言葉がいいと考えたんです。
そういった背景もあり、この写真集にはひとつひとつの作品のタイトルや場所を表記していないので、今回この写真集を手に取ってくださる方々が「これはどこの場所だろう」と思い巡らせてくださるのをすごく楽しみにしています。作品も古いものから新しいものに順番に並べているわけではなく、本当にバラバラ。不思議な空気に誘われて、架空の町を旅している感覚になっていただけたら嬉しいです。
## 被写体は「ここだ」と思う瞬間だけを狙う!
(撮影=髙橋明宏)
 
> ――作品を撮るうえでのポリシーはありますか。 ポリシーでいえば、先程もお話したとおりスナップを撮るときにはメインではなく少し“ずらす”ことで生み出される構図や視点を意識しています。また、これはスナップに限らずですが、この瞬間だ!と思うタイミングでしかシャッターを切らないようにしています。撮影枚数の目標は特に決めてないんです。だから、撮影枚数が少ない時もあれば、多い時もあります。大事なのは自分だけのここだと思う一瞬を捉えることだと思っています。
作品を撮るときはフィルムで撮影しています。フィルムでしか出せない自分の好きな色合いがあるので、こだわっています。『SOMEWHERE NOWHERE』はすべてフィルムで撮影していますし、デジタルでの加工も一切していないんです。デジタルカメラはデジタルカメラの良さがありますが、フィルムで撮り、暗室で写真を現像し、出来上がる瞬間はとても楽しい。今回作品展をするのですが、プリントはすべて自分で手焼きしています。
 
> ――人物をお撮りになる時はいかがでしょうか。MARCOさんに撮ってもらいたいという声をたくさんお聞きすることがあります。
(撮影=髙橋明宏)

人物を撮る時に気をつけていることは、被写体の気持ちに寄り添う事。無理なポーズや表情は強要しないようにしています。

撮影するときにはどうしたら被写体になる演者さんの一番よい瞬間を収めることができるかを意識。カメラマンさんの中には声をかけて演者の方々のモチベーションをあげてよい瞬間を収める人もいますが、私は静かなほうです。

では、どうやって進めているかといえば、最初に今回のコンセプトや世界観を演者の方々に説明し、「後はリラックスして自由に動いたり表現したりしてほしい。一番いいところを切り取りますからお任せください!」と思うんです。必要以上に声をかけることもなければ、ずっとシャッターを切ってばかりということもないです。そのタイミングではないと思えばシャッターを切ることはありませんが、この瞬間だと思えばいきなりシャッターをたくさん切ることもあります。

仕事としてフォトグラファーMARCOにご依頼いただく方々はMARCOの写真の世界観がよいと思ってお声かけくださるのですから、クライアントの方々が、何を目的としているのか、被写体となる演者にはどうしてほしいのか詳細を打ち合わせでよく確認するようにし、被写体のファンの方々が見たいものがどんなものなのかも考えて、全部を合わせて120%で応えたいと思っています。

 

――そうやって、クライアントさんの意図を確認しながら、演者さんの最高の1枚を紡ぎ出しているのですね。実績と信頼の積み重ねが現在のご活躍につながるのですね!