◆「本能寺の変」や明智光秀など人や出来事を比較できる、歴史ドラマの楽しさ
このように、歴史ドラマのいいところは、過去作品の記憶が積み重なって、アーカイブされることである。みんなが知ってる「あの人」の「あの出来事」をリフレインして楽しむのが歴史ドラマの楽しさ。
代表的な歴史イベントに、「本能寺の変」がある。どんな織田信長が、どんな本能寺の変が描かれるか、比較して楽しむのだ。『どうする家康』で描かれた「伊賀越え」も歴史好きには重要な出来事で、『真田丸』でおもしろく描かれて以来、期待され、『家康』では1話丸々使って描かれ好評を博した。
期待の「あの人」「あの出来事」は、いつも同じではなく新機軸も求められる。『麒麟がくる』(19年)の明智光秀像がそうだった。それまで信長を裏切った人物というイメージのあった光秀を、真面目で優秀な人物として描き、知的で誠実なイメージのある長谷川博己が演じたことで、ぐっと印象が変わった。そのため、『どうする家康』では酒向芳が、ずる賢く陰険(いんけん)な光秀を演じると、こんなの光秀じゃないと落胆の声がSNSに溢れた。
明智”長谷川“光秀以前は、大概、こんなイメージだったでしょ、と思うし、2作続けて、同じような光秀でも面白くないだろうとも思うが、明智”長谷川“光秀が小さな家康に干し柿をあげる優しさにきゅんとなった視聴者としては、あの干し柿の感動を返して~となってしまうのだろう。一旦アップデートされたものをまた元に戻すことには大河ファンは意外と手厳しいのである。
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